第6話 Six Feet Under⑬
「なんで……なんで警察機構の副総監がこんなところにいるのよ!」
「は? 副総監って……嘘だろロビンさん」
ライアンが驚きに目を見開いている姿に、ようやくフィーもその言葉の意味を理解する。そして、ライアンと二人揃って指名手配されていることを瞬時に思い出す。
「隠していてすまない。私はずっとある人を探していてね。まさか、その人物を追いかけていたら、こんなところで再び会えるとは思わなかったよ。カーライルくん、イニくん、ソムニウムくん」
そう言ってロビンは優しく微笑むが、フィーからすれば気が気ではない。
「あっ、えっあっ……イ、イニどうしよう……」
「わ、私に言わないでよ! ライ!」
「ハハハッそんなに怖がらなくていい。私は別に君達を追ってここに来たわけではないからね。それに、この現状を見れば、少なくとも殺人犯が君達ではないことぐらいすぐに分かるさ」
ロビンはそう静かに告げると、レクターへと視線を向ける。そこに、かつてフィー達に向けてくれていた優しさは少しもなかった。しかし、レクターはそのことに気が付いていないようで、何故か安堵の様子を浮かべているようにフィーには見えた。これは、どう言う状況なんだろう。
「ふふっ、ちょうどいいわロビンソン副総監。私は――」
「何の話をしている?」
「はい? 何って……」
「私は犯罪者と話すつもりはない。指名手配犯、ノートリアス・レクター」
「貴様ッ……!」
「悪いが三人とも。ここからは大人の話だ。君達は早く裏口から逃げなさい。少し離れた先に、馬車乗り場がある。そこからなら見つからずにここを出られるだろう」
「ロビンさん! 俺は――」
「カーライルくん。私は警察機構の人間だ。そして君達の立場はなんだ? これが最後の忠告だ。命が惜しいならそこの荷物を持ってさっさと出ていきなさい。さもなければ、私は君達を逮捕しなければならなくなる」
ライアンはまだ何か言おうとするも、ロビンの言葉の意味に、悔しそうに唇を噛んだ。
「イニ、フィー出るぞ」
「で、でも!」
「フィー!」
「――ッ」
今にも泣き出してしまいそうな顔に、フィーもそれ以上何も言葉を返すことができなくなる。そうだ、悔しいのはライアンだって一緒だ。
ライアンの視線の先には幸せがもう訪れることのない三人がいる。フィーもチラリとその三人を見て、弔うことができない悔しさに苛まれる。
三人の未来はまだまだこれからだったのに。どんなことがあっても、きっと三人なら笑って過ごす未来があったはずなのに。そう考えると遣る瀬無くて堪らなくなる。
どうか安らかに眠って。恩を返すことは愚か、弔うことすらできない自分達をどうか恨んで。
ライアンの手に引かれ、フィー達は診療所を後にした。




