第6話 Six Feet Under⑧
「それじゃあ診察行ってくるわね、三人とも」
「おう。それまでは俺らは留守番してるから」
「悪いけど頼むよ。あっ、僕らがいない間に居なくなるのはなしだからな」
「わーってるって。ほら、さっさと行けって」
仲睦まじげに診療所へ向かう三人を見送り、隣で大きな欠伸を浮かべて手を振るフィーを見る。
「なんだよ、眠れなかったのか?」
「んーそう言う訳じゃないんだけど……。ふぁあ……三人が戻ってくるまでもうちょっと寝ようかなあ」
「いいけど寝坊したら置いてくからね? それでもいいなら寝てもいいわよ」
「うぐっ……起きてます」
彼女の腕の中に収まっているイニの脅しに、顔を引っ張ったりしてみるも、フィーの顔はまだ眠そうなままだ。
「まあ、寝ててもいいんじゃねぇか。どうせやることねぇんだし」
「んーじゃあお言葉に甘えてちょっと横になろうかな」
「あいよ」
ライアンの返事にフィーはこくりと頷くも、その場を離れようとしない。何かあったのだろうか。
「どうかしたか?」
「んー……どうかしたって訳じゃないんだけどさあ。昨日のこと、アルフレードに話したのかなと思って」
「どうかしらね。あの様子ならまだ話してない気もするけど」
「やっぱりそうだよね」
もう背中の見えなくなった三人を眺めながら、フィーはポツリと呟く。
「だとしても私達が気にすることじゃないわよ。あれは二人の問題。何かあれば相談に乗ってもいいけど、解決するのはあの子達よ。それを間違っちゃダメ」
「イニの言う通りだな。俺達は俺達ができることをやろうぜ」
「分かってるけどぉ……」
フィーはまだ納得がいっていないようだったが、それでも何かを無理矢理納得させるかのようにこくりと頷いた。
「でも、二人がそう言うなら、信じてみようかな」
「んだそれ」
思ってもみなかった言葉に、小さく吹き出してしまう。そんなライアンの様子に、フィーは不満そうに口を尖らせる。
「ちょっと、何で笑うのよ」
「予想外だっただけだよ。んじゃフィーに習って俺らも休もうぜ。どうせここからはあんま休めねぇだろうし」
「うわーそれ言われると着いてくって言ったのちょっと後悔かも」
「ん? ならフィーは残ってもいいんだ――痛ってぇ! 何しやがる!?」
フッと小馬鹿にするように言ったライアンの頭を、フィーが勢いよく叩いた。
「ライアンが酷いこと言うからでしょ! 自業自得!」
「だからって叩くことねぇだろうが!」
「しーらない! 馬鹿ッ! くるくる頭!」
「……てんめぇ人が気にしてることを」
「はいはいうるさいわよー喧嘩しないの。あんた達まだ朝って分かってる?」
「「でも!」」
「でもじゃないの。迷惑って言葉の意味を二人とも一回ちゃんと調べた方がいいわね」
イニの言葉に、ライアンとフィーはうぐっと言葉に詰まる。
「はい素直でよろしい。相変わらず仲よしさんだこと」
「「仲よくない!」」
「はいはい仲いいわね。それはそうとあんた達さっきの言葉聞いてた?」
そんな会話が朝方のスラムの街に響く。ここは本当に過ごしやすい場所だと、ライアンは留守を任された家までの道のりで考えていた。




