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壊れて行く  作者: 楓 海
2/2

後編

 お付き合い戴けたら嬉しいです。<(_ _*)>

 その夜、涌皇(ゆがみ)と共にアパートへ行った。

 

 部屋が酷く荒れている。


歩梦良(ほむら)! 」


 振り返ると涌皇(ゆがみ)が缶ビールを放ってよこした。


 散らばったゴミやら服やらを気にする事も無く踏みつけ、ソファに座るオレの傍に来ると涌皇(ゆがみ)は腰を下ろした。


 オレは言った。


「最近のお前の行動には目に余る物がある」


 涌皇(ゆがみ)はあっけらかんと答える。


「何が? 」


 オレは飲み掛けのビールを溢しそうになる。


「自覚無いのか? 」


「だから、何が? 」


 開き直ってる風でも無い。


「今日の事も憶えて無いのか?

 ライヴをお釈迦にしたんだ、事務所はカンカンだ

 今日の損害だけでも幾らだと思う」


 涌皇(ゆがみ)は天井を見上げ言った。


「そんなのおれがいい曲書いてヒットさせればいいんじゃないの? 」


 ぎらぎらした目をオレに向けて、涌皇(ゆがみ)は興奮ぎみに言う。


歩梦良(ほむら)聞いて!

 想像を越えた凄い曲が次々浮かぶんだ!

 おれ達はもっともっと上昇できる! 」


 オレはそう言って顔を輝かせる涌皇(ゆがみ)に何を言うべきか解らなくなった。


 涌皇(ゆがみ)の奇行は酷くなって行くばかりだった。


 同じフレーズをギターで1日中弾いてみたり、訳の解らない言葉を紙に乱雑に書き殴ったり。


 お前は何処へ行こうとしている?


 お前は怖く無いのか?


 オレは怖い、とても..............。



 新曲ができたと涌皇(ゆがみ)から連絡が入り、オレ達はスタジオに集まった。


 少し遅れて、涌皇(ゆがみ)は酔っているらしくふら付いた足取りで現れた。


 酔っているんじゃ無い、クスリでらりっているのだと直ぐに解った。


 ギターを持って構えるが、涌皇(ゆがみ)は手が震えて演奏できる状態では無かった。


 涌皇(ゆがみ)の頭の中で聴こえている音楽は、壊れた媒体では届かない。


 もう涌皇(ゆがみ)は終わった。


 ここに居る誰もがそれを確信した。


 だからこそオレ達は必死になって涌皇(ゆがみ)を説得する必要が在った。


 オレ達は涌皇(ゆがみ)の自滅を誰1人望んでなどいない。


「クスリを止めろ!

 解らないのか?

 お前は正気を失ってる! 」


 アンプに座っていた涌皇(ゆがみ)は持っていたギターを横に立て掛けるとのろのろと立ち上がった。


「アイツが来るんだ........」


 涌皇(ゆがみ)はそう言い残してスタジオを出て行った。


 このまま放って置いたら取り返しのつかない事になる。


 漠然とした恐怖が全身に広がる。


 オレは条件反射のように涌皇(ゆがみ)を追い駆けていた。


 信号待ちの涌皇(ゆがみ)に追い付いて、腕を掴んだ。


 涌皇(ゆがみ)は酷く驚いて振り返る。


 顔には恐怖が張り付いていた。


 涌皇(ゆがみ)は反射的にオレの手を振りほどいて、赤信号を無視して道路に飛び出し危うく轢かれそうになる。


 急ブレーキ音と共に車は止まり、涌皇(ゆがみ)は怯えたような表情を浮かべ運転手を一瞥して、右折待ちの車間を縫い雑踏の中に消えて行った。


 オレは追い駆ける事もできずその場に立ち尽くした。



 オレ達は涌皇(ゆがみ)の才能に甘え過ぎていた。


 涌皇(ゆがみ)にどれほどのプレッシャーを1人背負わせていただろう。


 だがメンバーの誰1人、涌皇(ゆがみ)の優れた曲に敵う曲を書ける者は居ない。


 それでも涌皇(ゆがみ)を守る為に諦めてはいけなかったんだ。


 壊れて行く涌皇(ゆがみ)を傍で感じていながらオレは何一つ涌皇(ゆがみ)の苦しみに目を向ける事が無かった。


 涌皇(ゆがみ)に逃げる手立てすら許さず追い詰めていた。


 雑誌のインタビューをを終えて、オレはその足で涌皇(ゆがみ)のアパートへと向かっていた。


 スマホが着信を知らせる。


 涌皇(ゆがみ)からだった。


 出ると暫く無音で、何度呼び掛けても答えが無い。


 切ろうとした瞬間、涌皇(ゆがみ)の声が


「母さんに逢いたい............」


 そう言って切れた。


 オレは嫌な予感がして走り出した。


 勢い良くドアを開くと暗闇が室内に閉じ込められている。


 奥へと突き進むと次第に目が慣れて来る。


 ソファの背凭れに濃い人影が貼り付いている。


涌皇(ゆがみ)? 」


 慌てて照明を点けた。


 涌皇(ゆがみ)が両腕を広げソファの背凭れに頭を預けていた。


 手にはスマホが握られている。


 オレはそろそろと近付いて行った。


 恐ろしい想像が脳を支配して行く。

 

 目を見開いた涌皇(ゆがみ)の顔が魂を手放した者特有の不気味さてこちらの視覚を圧倒した。


 オレは涌皇(ゆがみ)の鼻の傍に耳を近付ける。


 生きている手応えはオレの期待を裏切った。


 ソファの上には注射器とクスリの残骸が散らばっている。


涌皇(ゆがみ)!! 」


 オレは涌皇(ゆがみ)の肩を掴んで揺する。


 涌皇(ゆがみ)の頭がぐらりと垂れた。


 そこからの記憶が途切れ、気付くとオレはソファに座り、膝に涌皇(ゆがみ)の頭を載せて髪を撫でていた。


 眠るように目を閉じる涌皇(ゆがみ)


 空虚が胸から全身へと広がって行く。


 何もかも遅過ぎた.............。

 

 何もかも..............。


 涌皇(ゆがみ)が着ているカジシャツのポケットから白いライターが零れ堕ちた。



 死因は純度の高い薬物の過剰摂取。


 彼は27歳だった。


 27CLUB..............。


 ロバート・ジョンソン、ブライアン・ジョーンズ、ジミ・ヘンドリクス、ジャニス・ジョプリン、ジム・モリソン、カート・コバーン.................。


 彼らは凝縮した音楽的才能とカリスマ性で人々を虜にした。


 ソロモン王に捕らえられた27番目の悪魔、音楽と言葉を司るロノウェの契約者たち。


 彼らは皆、27歳でこの世を去った。


 涌皇(ゆがみ)は命と引き換えに天才的カリスマの称号を手に入れた.............。




                   fin











 最後までお付き合い戴き有り難うございます。<(_ _*)>


 27CLUBにしては、涌皇たちの成功は規模が小さいのですが、海さんインディーズ大好きなもので、わがままを突き通しました。笑

 後編をいつアップしたものかと悩んでいましたが、温かい物は温かい内にと直ぐ投稿することにしました。

 読んで下さり本当に有り難うございました❗ヽ( ̄▽ ̄)ノ

 お身体大事に、また機会がありましたら宜しくお願いいたします。m(_ _)m

 

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― 新着の感想 ―
投了お疲れさまでした(^▽^)/ 27CLUBって言うモノがあるんですね!でも会員には、なりたくない(;^_^A ブライアン・ジョーンズさんって、私でも知っている有名な人でしたので亡くなられていたとは…
4千文字程とは思えない、心奥の深い底にある場所まで、物語が沁みてゆく、そんなぎゅーっとした読後感です。 あぁ~なんでしょう、この気持ち。 すみません、このような独自表現でしか自分の感じた思いを伝える事…
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