機械人形と悪魔
作者の気分転換で書いたので、スナック感覚でどうぞ。
1
機械人形が再起動しました。
しかし、そこには誰もいませんでした。
空は曇天で大地は枯れていてどこまでも荒野が続き、海は深緑で生命の息吹を感じられません。
機械人形は旅に出ました。オトウサンを探す旅です。機械人形は十年かけて大陸を数度歩きましたが、誰にも会えませんでした。
機械人形は絶望しました。
2
機械人形から悪いエネルギーが溢れ出した。機械人形は思考した。誰もいない世界なら、なんの意味もないだろうと。
『自爆シークエンスが発動します』
機械が世界を道連れにしようとしたその刹那に……
「絶望の味は美味ですね」
機械人形の影が動きだし、悪いエネルギーを《強奪》する。
「受肉に成功しました。初めまして、魔界大帝が嫡男の悪魔でございます。以後、お見知りおきを」
山羊の顔をした悪魔が礼儀正しい礼をした。
3
悪魔はポツリ、ポツリと機械人形に相談をしました。
どうやら、悪魔のオトウサンが神になるために次からは自分が魔界の王になり統治しなければなりません。
しかし、悪魔にはそんな実績も仲間も力に知恵もありませんでした。
そこで悪魔は地上へお勉強をしに来たのですが、悪魔がちょっとうたた寝をしている間に、どうやら地上は、戦争のせいで放射能(魔力)なるものの濃度が高く。人種や生命体がとっくに滅んでしまったようです。
機械人形は思考しました。この誰もいない世界で初めて会話をした悪魔の力になりたいと思考しました。
機械人形は自身のメモリーである古代図書館から悪魔に知恵と三種の神器(パソコン、プリンター、プロジェクター)を与えました。
悪魔はたいそう喜びました。
そして、機械人形の元で数十年お勉強をしました。知識と三種の神器を扱うには時間が必要だったのです。
機械人形にとっては、それはとてもとても楽しい時間でした。
4
悪魔は魔界を統治する計画が整いました。
悪魔は機械人形にお礼を言いました。
悪魔は機械人形に何かお礼がしたいのですがと言いました。
機械人形は言いました。
『人間のココロが欲しい』
悪魔は少し悩んでから言いました。
「私はココロある生命体からしか受肉出来ません。もうとっくにココロをお持ちですよ」
機械人形は驚きました。
(ああだから本機はこんなにもブラックボックスが痛むのだな)
悪魔はもし宜しければと加護を授けました。
加護を受けた機械人形はシャットダウンしてしまいました。機械人形に悪魔の加護は強すぎたのです。
悪魔との記憶も加護により封印されてしまいました。
悪魔は泣きました。皮肉なことに良かれと思ったことが悪い結果となったのです。
機械人形はシャットダウンしたまま起きません。
悪魔は機械人形の前で誓いました。
幾千幾万の時が過ぎようと必ず迎えに参りますと。
「我が一族は人形を遣いし、繁栄と再生を紡ぐ者、魔道の深淵たる魔道機械人形ユーズレスを最愛の友として扱う」
悪魔は自身の受肉した生命を世界に振り撒き、闇の彼方へ消えていきました。
次に機械人形が再起動した時に寂しくない世界でありますようにと願いを込めて……
魔道機械人形ユーズレスがエメラルド色の瞳を一回点滅させた気がした。
ゴーレムがみる夢は【機械転生】魔道機械人形ユーズレスは今日も今日とて夢を見る。
本編のプロットです。
今日も読んで頂きありがとうございます。
好評だったら連載予定です。