表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/23

アダマンタイトのツルハシ

 ほどなくして、飛行船は緊急着陸した。


 まだ海を渡る前だったので、結局のところ皆、陸路でサルーテに帰ることとなった。


「新大陸には行けず残念でしたね。ま、幸い怪我人も出なくてよかったですが」


 イズミはそんな呑気なことを言っている。


「でも、こっから神樹まで引き返すのって、かなりの路銀が要りますよ? ゴア商会は補償してくれるんでしょうか?」


 俺はそう指摘せずにはいられなかった。


「まぁ、ゴア商会の皆さんも大変でしょうから、そこは訊かないでおきましょう」


 イズミはそんなことを言った。お人好しもいいところだ。


 とはいえ、暗殺者の魂は生贄に捧げられてしまったので、死亡者一名という結果になったわけだ。処女飛行でこんな事件が起きるなんて、ゴア商会にとってもいい迷惑だろう。


                    ◇


 なんとかサルーテに着くと、街の人々に歓待された。


「さすがはイズミ様! ドラゴンをも落としてしまわれるとは!」


「乗客を全員救ったそうですね、さすがです!」


 道行く皆がイズミを褒め称える。なんだか全部イズミの手柄になっている気がするが、実際大活躍したのでまぁいいとしよう。


「イズミ・レッドフォードどの。ちょっとお話よろしいですかな?」


 突然、黒のローブを羽織った大男が立ちふさがった。


「錬金術師ギルドのアルクスどのですね! お久しぶりです」


 どうやらイズミの知り合いだったようだ。


 錬金術師ギルドの中に案内されると、ひときわ豪華な内装の応接室に通された。


「今回の飛行船を墜落から救って頂き、誠にありがとうございます。一言では足りず、なんと感謝したらよいか分かりません」


「いえ、お気になさらず」


 とは言いつつもイズミは満足げだ。ルクレツィアの功績も褒めてやってくれ。


「あの飛行船には我々も技術提供していましてね。それが墜ちたとなれば威信にかかわるところでした。そこで、感謝の印として、このツルハシをお贈りしたいのです」


 ツルハシ? 鉱山労働者でもないのに?


「ありがとうございます。このツルハシ、アダマンタイト製ですね? 神樹についてよくご存知でいらっしゃる。ツルハシでも使わなければ、神樹の樹皮は削れませんからね」


 そうだったのか。


「アダマンタイト製と見抜かれるとは、さすがのご慧眼。6000年は劣化しませんので、どうぞ使ってやってください」


 それって、耐用年数6000年ってことか? もはや減価償却の必要がない備品だ。土地みたいなものか。


 と、俺はツルハシの会計処理について一瞬考えてしまっていた。


 いかんな。


 異世界に来たからには、そんな小難しいことは考えたくないものだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ