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6.令嬢、早すぎる

「王都からロスチャイルド伯爵領まで、たった数時間で移動する事は可能か?」

 国王が慌てて宮廷魔術師達に訊ねると、彼等は国王の顔を見た後、円陣を組んで議論を始めた。


「レベル999だと、数百キロの距離の縮地が可能ではないか?」

「いや、縮地はあくまでも移動の時間を縮めるだけで、間に障害物があって移動できない場所には行けないぞ。林や山を突っ切るのは無理だ」

「だったら、ロスチャイルド伯爵領まで街道で縮地を繰り返せば」

「それよりも、伝説の飛翔魔法だろう?たぶん」

「それは、おとぎ話だろ?それよりも、自分自身を他の場所に召喚する瞬間移動魔法の方がまだ可能性がある」

「それこそ荒唐無稽だ。遠く離れた見えない場所を、どうやって召喚ポイントとして指定できるんだ?」

「先の破壊魔法使用時には、見えない場所にいる我々も含めて、全員に防御結界を張っていたではないか」


 彼等の声が段々と大きくなり、白熱して来たため、国王は慌てて彼等を止めた。

「ああ、分かった。レベル999となると、いくつもの可能性があるが、確証は無いと言う事だな」


「父上、一刻の猶予もありません!彼女がロスチャイルド伯爵領の屋敷を後にする前に、退学と国外追放が取り消されたとロスチャイルド伯爵にお伝え下さい。緊急事態ですので、伯爵の屋敷に入り込んでいる者に身分を明かさせてでも、緊急に伝えるべきです」

 リチャードの真剣な瞳に、国王は困った顔をする。

「リチャード。伯爵の屋敷にいる者は、王家とは何の繋がりも無い事になっている。だから、その繋がりを示す物は一切持っていないのだよ」

「そ、そんな……」

 リチャードがギリッと歯ぎしりをする。

「だが、大丈夫だ。少々乱暴だが、竜騎士達に行かせよう。急いで王命を撤回する旨を(したた)めるので、誰か紙とペンを」

「国王様!」

 数名の文官が文具を取りに踵を返そうとした所で、近衛隊長が口を挟んだ。


「残念ながら、先の破壊魔法でドラゴン達も全滅しました」

「ドラゴンまでもか!?」

 ドラゴン騎士団が騎乗するグリーンドラゴンは、何代にも渡って人間に飼育され、人に馴れたドラゴンだ。それが全滅したとなれば、事実上のドラゴン騎士団の解体を意味する。


「何てことだ……」

 国王は両手で顔を覆って項垂れた。

 そんな国王に、第一王妃は心配そうな顔を向け、彼の背中を優しくさすった。


「国王様」

 その時、先程の側近が再びやって来た」

「まだ何かあるのか……」

 国王は項垂れたまま、暫らく側近の言葉に耳を傾けていたが、やがてガバッと顔を上げると、立ち上がって叫ぶ。

「いくら何でも早すぎるだろうがぁぁぁぁ!!何でもう国外に向けて旅立っているんだ!?追放が言い渡されたのは数時間前だろ!?」


 フィリス嬢の時間の流れに、王族達が翻弄されていた。

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