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23.魔族、異次元進化する

「ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥン」

 魔族の言葉に反応して、元ヒュドラからとても可愛らしい鳴き声が聞こえて来た。

「その声は……まさかヒーちゃんなのか!?」

 目を見開く魔族に、元ヒュドラは大きな目玉をその魔族に優しくすり寄らせて再びヒュゥゥンと可愛く鳴いた。

「やっぱりヒーちゃんか?何故そんな姿に」

 魔族は元ヒュドラの目玉を優しく撫でる。

 だが、そうしている内にも彼の怒気がどんどん強まっていく。

「誰がヒーちゃんをこんな姿にした」

 地の底から響くような冷たい声。

 その怨嗟のような声に、『竜の天敵』のメンバーは心臓を氷の手で鷲掴みされたように感じ、血の気が引いた顔で膝をガクガクと震わせていた。


「あら、貴方はそのナメクジの飼い主さんですの?」

 そんな中、フィリスだけはそんな威圧を気にも留めず、にこやかに笑いかけていた。

「ナメクジだと?ヒーちゃんがナメクジに見えるだと!?」

 視線だけで射殺せそうな勢いで睨みつけて来る魔族。

 だがフィリスは元ヒュドラを見ながら言った。

「どう見てもナメクジですけど……」

「貴様が何かしたんだろ!?誤魔化すな!いったい何をしたんだ!?」

 詰め寄り怒声を浴びせる魔族に、フィリスは目を瞬いて暫らく考え込んでいたが、やがて「あっ」と小さく呟いて頭を下げた。

「申し訳ありません。そうでしたわ。私、この魔物が脅威的な再生能力を持っていると聞いたので試しに少し強い魔法を使ったんですわ。でも残念ながら再生しませんでした。ですので蘇生魔法で生き返らせました。その時、ついでに耐久力と再生力を大幅に上げる改造を施しましたの」

 少し大きくなったから驚いたのね、と的外れな事を言いながら、すまなそうに苦笑いを浮かべる。


「それでこんな姿に変えたと言うのか!?ふざけるな!!」

 フィリスは可愛らしく目をパチクリとさせてから再び元ヒュドラを見る。

「一回り大きくなりましたが、姿かたちは変えていませんわ」

「元からこの姿だったと言うのか?」

 魔族はフィリスを睨む。しかし彼女は不思議そうに首を傾けるだけだったので、次にその視線を『竜の天敵』向ける。

 その視線に震えあがり、否定の意味を込めてプルプルと首を横に振る『竜の天敵』面々。


「やはり貴様が何かやったんだな!?」

 彼の怒気と魔力がますます膨れ上がる。

「上等だ!貴様を八つ裂きにしてやる。自分の行いをあの世で後悔するんだな!いいか?俺の再生能力はヒュドラ以上――」

「えいっ!」

 魔族の言葉が終わる前に、彼の頭部が縦に二つに分かれた。いつの間にかフィリスの手に握られていた彼女の身長程の長さがある大剣によって。


「……あれ?伝説のヒュドラって、切りつけても一瞬で元に戻るんじゃありませんの?ヒュドラ以上と言うのは大袈裟に言っただけだったんですの?」

 魔族は再生し始めていたが、その速度はゆっくりだった。

「いやいやいや。そんな一瞬で再生なんかしないって。後、せめてセリフが終わるのを待ってあげようよ」

 アランのツッコミに、フィリスは困った顔をして「それでは張り合いがありませんわね」と呟いた後「そうだわ♪」と顔を明るくする。

 その笑顔を見てアランはとても嫌な予感がした。


(ホーリー)ヒール」

 再び放たれる暖かく神々しい光。

 途端、魔族の身体が一回り大きくなり、漏れ出て来る魔力のオーラが五倍以上に膨れ上がった。そして――


「……あっ」

「「「「……あ……」」」」

 フィリスと『竜の天敵』の面々が唖然とした声を上げた。


「痛ててっ……おい、貴様!せめて相手が言い終わるのを待ちやがれ!……って、お前、俺の身体に何かしたのか?何か体内の魔力が物凄い容量になってるんだが。後、お前たちさっきより小さくなってないか?」

 戸惑いつつも睨みつけて来る魔族に、フィリスはツイと視線を逸らす。そのコメカミには一筋の汗。


「え、えーと、ですね。その、聖ヒールを使ってですね……貴方の再生力を三〇倍、魔力を五〇倍に引き上げたんですの」

「ほう、貴様はわざわざ俺を強化したって事か。その余裕が身を亡ぼすぞ。言っとくが、強化してもらって例に貴様を許すなんて思ったら大間違えだからな」

 不敵に笑う魔族。

 だが、フィリスは相変わらず視線を逸らしたままだった。

「え、えーと……元々何で怒っていたのかは分かりませんが、貴方を強化した事で許してもらえるとは思っていませんわ。それよりも……その……ごめんなさい」

 フィリスはすまなそうにチラリと魔族を見ると、先程彼の頭を切りつけて、そのままにしていた大剣を引き抜いた。


「ふん。不意打ちでこの俺を殺せるとでも思ったの……か……」

 視界を遮っていた大剣が取り除かれた事で、魔族はその違和感に気が付いた。


「な……な……な……」

 わなわなと震える魔族。

 その頭は二つに増えていた。


「何じゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 フィリスが大剣を退けずに大聖堂級(カテドラル)ヒールを使ったため、大剣によって切り離されていた左右の頭部がそれぞれ別に再生してしまったのだった。

フィリス>で、でもこれで左右2つの頭で魔法の同時詠唱ができますわね。ホホ……ホホホホ

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