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19.令嬢、ヒュドラと遭遇するもナメクジと思い込む

「何であんな魔物がここにいるんだよ!」

「知るか!とにかく走れ、死にたくなかったら」

「嫌ぁぁぁぁ!!死にたくなぁぁぁい!!」

「ごめんなさい、ごめんなさい。全て私の不運のせいなんですぅぅぅ!!」

 一組のパーティーが草原をひたすら走っていた。

 そして彼等の後ろにはヒュドラがゆっくりと追いかけて来ている。

 その皮膚はぬめっとしていて、毒々しい薄い紫色をしていた。

 身体に比べて脚が短いため進行速度が低く、彼等より若干遅いくらいなのだが、その四つの頭から繰り出される水、雷、氷、炎属性の魔法はとても強力で、一発でも当たれば彼等を瞬殺するのも容易かった。

 そして厄介なのがヒュドラのパッシブスキルだ。

 そのスキルは「一〇メートル以内に近付いた者は毒状態となる」だ。

 解毒ポーションで毒状態は解除できるが、絶えず状態異常攻撃を受けるため、ヒュドラ討伐には騎士団によって大人数で当たり、数グループで攻撃・離脱・解毒・回復を繰り返す必要がある。

 それも、ヒュドラの再生能力を上回る速度でだ。


 彼等『竜の天敵』はたったの四名であり、Bランクになりたてのパーティーなので、ヒュドラに敵うはずもなかった。

 そもそも、彼等はパーティー名こそ立派だが、ドラゴン・キラーの称号は持っていない。あくまでも彼等が目指す先として、そのパーティー名にしたのだ。

 そして、彼等が受注したクエストは、このエリアの異変調査だったため、解毒ポーションなどは数本程度しか持ってきていなかった。


「ヤバイ!溜だ!」

 パーティーリーダー、アランの叫びに全員が足を止めずに後ろを振り返ると、ヒュドラの頭の一つが首が口を開け、口内に魔力を溜めていた。

「くそっ!皆、俺の後ろに!」

 盾職のポールが足を止めて振り返り、盾を構える。

「炎のブレスよ。ローズ、冷気の壁をお願い」

 弓職のマリーが目を凝らし、炎攻撃の微弱な特徴を捉えると魔術師のローズに伝える。

「ごめんなさい、ごめんなさい。私の拙い魔法ではヒュドラのブレスなんて防げませぇぇん」

 涙目でそう訴えながらも、ローズは高速詠唱を始める。


 その時――


「あら?随分大きなナメクジですわね」

 後ろから聞こえた、その場に似つかわしく無い優雅さを感じさせる声に、全員が思わず振り返った。


「ああっ!ごめんなさい、ごめんなさい」

 ローズも思わず呪文の詠唱を中断して振り返ってしまったが、その致命的な失敗に気付くと慌ててヒュドラに顔を向けて再度詠唱を始める。だが、詠唱しながらも彼女はそれが間に合わない事が分かっていた。

(ごめんなさい、ごめんなさい。私が不運なばかりに)

 心の中で仲間に謝りながら、詠唱を続けるローズ。

 だが、やはり後数秒で詠唱が完了すると言うタイミングでヒュドラからブレスが吐かれた。


 死んだ。


 全員がそう思った。

 だが、ブレスは彼等の手前七メートルの所で二つに別れ、後方に流れて行った。


「な、何が起きているんだ?」

 アランの呟きに答えられる者はいなかった。自分達の後ろに佇んでいる者以外は。


「ブレスを風魔法で叩き切ったのですわ」

 その者は、貴族のものと思われる高価な衣装を身に付け、絹のような美しい金髪を背中の中ほどまで伸ばした青い目の美少女だった。

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