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14.ルイン七世、賭けに勝つ

「そうですか、上手く行きましたか」

『ああ、お前からの情報を宰相の側近達に伝えたところ、面白いようにあの愚弟は食いついて来た。はっはっは。お陰であいつを玉座から引きずり落とす事ができた』

 通信用魔法陣からはアルフォンソの愉快そうな笑いが聞こえてくる。


『お前からの情報は、とても有益だった。よって、金貨二百枚をいつものルートで送ってやる。これからも、良い情報があれば教えてくれ。高額で買い取るぞ』

「へへへっ、有難うごぜえやす。今後とも宜しくお願いしやす」

 そう言って、諜報部隊のまとめ役は魔法陣を停止させた。


「うむ、ご苦労だった。お前の功績は計り知れない。後でお前に、国宝の隠密マントを送ろう」

 ルイン七世の言葉に、まとめ役は目を見開いた。

「そ、そんな、国王様。いくら何でも国宝は大げさです」

 恐れ多いと断ろうとするまとめ役の肩を、ルイン七世はポンポンと叩き、満足そうに頷いた。

「お前は、この国の危機を救ったのだ。そのような功績を上げた者に十分な褒美を渡されければ、他の者が褒美を受け取れなくなるでは無いか。良いから受け取ってくれ。そして、有難う」

「勿体なきお言葉」

 片膝を着いて頭を垂れるまとめ役を残し、国王は部屋を後にした。


 そして、国王は執務室に戻ると、人払いを命じた。

 ぞろぞろと部屋を出て行く側近達。

 そして最後の一人が部屋を出て、扉が閉められると、国王は目の前で両の拳を握りしめた。

「やった、やったぞ。賭けに勝った」

 喜びに打ち震えるルイン七世。


 そう、彼は賭けに勝ったのだ。

 この世界でのレベルは、生まれ持っての才能によるところが大きい。

 だが、それだけではレベルは上がらない。

 日々の訓練と戦闘経験が必要だ。


 フィリス嬢がレベル999と言う前代未聞の数字を出したのは、彼女がそれだけの努力をしたと言う事だ。

 それ故に彼は、フィリスが王妃の座に収まり飼い殺しにされるのには激しく反発するだろうと予測した。


 彼女の努力の原動力や目的は分からないが、少なくとも戦いから遠い所に彼女の目的は無いだろう。

 拍付けの為だけに血反吐を吐く努力をしてレベルを上げたりはしないはずだ。

 だから、弟を引きずり落とそうとしているアルフォンソをけしかけ、下品で頭が悪いと言う噂のレオポルド王とフィリス嬢を会わせたのだ。


 それは賭けだった。

 フィリス嬢がレオポルド王を言いくるめて、王妃になるのを条件に、騎士団長の地位を得る可能性もあった。

 ルイン七世は、フィリス嬢がどれほど話術に長けているのか、そしてどれだけ騎士団長の座を欲しているのかなど、さっぱり分からないのだから。


 だが結果として、レオポルド王はフィリス嬢を怒らせて、国外追放を言い渡したとの事だった。

 フィリス嬢がスピニーヤ王国に取り込まれなかった。つまり、当面の危機は回避されたのだった。


 ルイン七世は大事にしまってあった高級ワインの蓋を開け、ワイングラスに注ぐと香りを堪能しながらゆっくりと喉に流し込んだ。


「ふふっ……ふふふっ……わあぁはっはっはぁぁぁぁ」

 そして笑いながら暫らく踊り続けた。



 一方その頃、スピニーヤ王国では……

「そうだ。おい、お前たち。急いで各方面の国境に秘密通信で連絡を入れて、フィリス嬢が来たら国外追放が取り消された事を伝えて丁重に保護するように伝えろ」

 アルフォンソとて、王都を砂に変える程のレベルの持ち主を、みすみす他国に渡す気は無かった。


「あの馬鹿な弟は、彼女の事を自分の性欲を満たす道具としか見ていなかったようだが、俺は違う。彼女には第一騎士団に入って貰う事にしよう。そして、手始めにファルターニア王国に侵攻だ」

 自分の国王就任を内外に認めさせる為、どのように功績をあげようかと、夢を膨らませるアルフォンソ。


 だが、彼は知らない……


 フィリス嬢が既にスピニーヤ王国を後にしていたと言う事を……

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