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11.レオポルド国王、フィリスの反撃を受ける

「おい、貴様!まさか男は女とは戦えないと言うつもりか?この女は、この俺を侮辱したんだぞ!さっさと殺せ!」

 土下座をしている将軍に、レオポルド王は唾を飛ばして怒鳴りつけたが、将軍は動かずにプルプル震えているだけだった。


「お許し下さい。彼女と私ではレベル差があり過ぎます!私のレベルは86です!」

 悲鳴に近い懇願だった。

 だが、将軍の言葉はレオポルド王には正しく伝わらなかった。


「確かに、レベル1086だったらレベル差が大きすぎて瞬殺だろう。だが、俺が命じたのは捕縛ではなく処刑だ。構わん、さっさと()れ!」

「違います!1086では無く、ただの86です!」

 その言葉に、レオポルド王は首を傾げた。

 将軍は、レオポルド王の父の代からその役職にいる。そしてレオポルド王は、父が生きていた時は将軍の武勇伝を何度も聞かされていたのだ。


「お前、そんなに弱かったのか?」

 彼は失望した。子供の頃から武勇伝を聞かされ、憧れすら抱いていた男が、目の前の女より遥かにレベルが低いと言う事実に。

「はぁ。父の大風呂敷を鵜呑みにした俺が浅はかだった。もういい。お前の将軍の役職を解く。とっとと隠居でもしろ」

「国王様!彼を将軍の任から外すのはお考え下さい!」

「そうです。この国の損失となります!」

 将軍の部下達が顔色を変えて止めようとするが、国王に睨まれた途端、全員が青くなって口を閉じた。


「誰でも良い。この男の代わりに、俺に不敬を働いたこの女を成敗しろ!」

 手を上げる者などいるはずがなかった。

 レベル86と言えば、この国だけでなく、近隣諸国ですらその領域に達した者はいないのだから。フィリスを除いて。

 そんな、この国最強の男ですら敵わないバケモノ並みのレベルの女性に挑みたいと思う者などいなかった。


「誰もいないのか!?まさか、お前らもこの女よりレベルが低いとか言うんじゃないだろうな!?」

 レオポルド王が謁見の間を見渡すと、全員が顔面蒼白で、彼と目線を合わせようとしなかった。


「くそっ!くそっ!くそっ!こんな無能の集まりだったのか!?今度、新しい募集を掛けて、もっとレベルの高い者達を雇わないといけないな。全く、父の勧めるままにお前らを側に置いたのが間違えだった!」

 喚き散らしているレオポルド王。

 そんな彼にフィリスは深いため息をついた。


「国王様。用件はこれだけでしょうか。でしたら、これにて失礼させて頂きたいと思います。あ、それと、(わたくし)を殺そうとしない事をお勧めしますわ。そんな事をされると、さすがに私も反撃せざるを得ません。そうなると、この王都が消滅するかもしれなくてよ」

 フィリスは優しく微笑むと、優美なカーテシーをして、踵を返した。

 そしてずっと片膝を床に付けて微動だにしていなかった彼女の祖父アルフォンソも、一度深く頭を下げると立ち上がってフィリスの後ろに付いて謁見の間を後にした。


 そんな彼女達を、怒りで顔を真っ赤にして睨みつけていたレオポルド王だったが、後ろを振り返って叫んだ。

「闇の死神達!あの女を暗殺しろ!手段は問わない。多少大事になっても、俺がもみ消してやる!」

「御意」

 どこからともなく返事が聞こえて来た。


 闇の死神。それはこの国の暗部組織であり、レオポルド王ですら彼等の姿を目にした事が無い。

 そして彼等は常にレオポルド王の近くに潜んでいた。

 彼等の仕事は主に暗殺や誘拐だ。

 レオポルド王が命令すれば、国内に滞在している他国の使節団だろうが、そのターゲットとなる。


『あら。他国の女性に結婚を強要し、それに従わなければ暗殺ですの?この国は前々からそんな事を繰り返していましたの?』

 突然、後ろから声が聞こえた。

 レオポルド王が驚いて振り返ると、そこにはフィリスが立っていた。


 次の瞬間、彼女の足元に複数の投げナイフが刺さった。

『闇の死神さん達、無駄ですわ。ここにいる私は幻影魔法で作り出された映像です』

 そう。フィリス達は王城の廊下を歩いていて、今まさに王城から出ようとしていた。


『仕方がありませんね。気乗りはしませんが、ずっと暗殺者に付け狙われては気が休まりませんので、事前に通告しました通り、反撃させて頂きますわ』

 その瞬間、王城の石壁や内装がボロボロと崩れ、砂と化していった。


 そしてその現象は王城に留まらなかった。

 王都中のあらゆる建物や道具が砂のように崩れて行く。

 無事なのは、人々が身に着けている衣服だけであり、兵士達の武器や防具は砂となりつつあった。


 こうして。この日。この瞬間。スピニーヤ王国の王都は砂漠へと姿を変えた。

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