表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/20

5話



【初心者シャーマンのスレ】


64:名無しのシャーマン

昨日はあれからスレ主からレスなかったがどうなったんだろうな?


64:名無しのシャーマン

目的のシャーマンが見つからなかったとか?


65:名無しのシャーマン

それはない

あいつがいるのは確認済みだったからな


66:名無しのシャーマン

ワロタwwww


67:名無しのシャーマン

確信犯かよぉ!


68:名無しのシャーマン

>>65 知り合いなんか?

うまくいってそう?


69:名無しのシャーマン

>>68 まあ顔見知り程度やね

わからんけどシャーマンの中ではまだまとも


70:名無しのシャーマン

そりゃやべーやつってわかってて紹介していたらどんな鬼畜って話だよ


71:名無しのシャーマン

そもそもゲーム内で露骨な悪意をもってプレイヤーを罠にはめようとしたら脳波キャッチされてお縄やんけ

ヘーキヘーキ!


72:名無しのシャーマン

その後イッチと71を見た者はいなかった……


73:名無しのシャーマン

28箇所の刺し傷だぞ!


74:名無しのシャーマン

残念ながら前任者は破壊されました




◇◇



 SOTWにログインし、祭壇で祈りを捧げる。桃櫛神様の姿は見えないが、俺の祈りを見ているのだろうか。少し新鮮な気分だった。


 今日はログアウトしてからリアルで色々調べてきた。


 昨日は意識が高じて神仏の住まう場所としての社を考えていたが、いきなりそんな立派な建物をどん、と構えるのは無理だ。俺が作ったところで、できるのは良くて高床式倉庫だろう。


 なので先ずは平安貴族など高貴な身分の人が御簾みすで顔を他者から隠して座す和室のようなものをイメージした。


 そしてそれは祭壇より高くしたい。神棚を部屋の上につけるのと同じ理論だな。だから今日はこの拠点から離れて山エリアを探索しに行くことに決めた。


 山エリアにいるゴーレムからは石材がとれる。均一な大きさの石ブロックというアイテムになるため、とても便利だ。


 山エリアがあるのは拠点からコボルトがいるエリアとは反対方向だ。どちらも初期マップなため、さほど難易度は変わらない。職業による向き不向きで推奨レベルが上下するくらいだろう。


 なお、街に近いぶん、シャーマンにはやや不向きとなる。


 道中のスライムなどを無視していくと、なにやら記憶に新しい顔を見つけた。ソード君だ。隣にいるのが昨日言っていた友人だろう。女の子だった。


 若干の気まずさはあるが、身を隠すのも変な話だ。何もない風に装って声をかける。


「ソード君じゃないか」

「あ、森の民さん。乙です」

「こ、こんにちは……」

「こんにちは」


 控えめに挨拶をしてきた少女は、いかにもオンラインゲーム慣れしていない風体だ。


「こいつはともえです」

「初めまして巴です。よろしくお願いします……」


 ほら、とソード君に促されておどおどと自己紹介してきた。巴というらしい。大和撫子というには少し幼いが、キャラメイキングは日本人寄りだ。


「初めまして、俺は森の民だ。変な名前で呼びにくいだろうし、好きに呼んでくれ」

「は、はい」


 消え入りそうな声だったが、大丈夫なのだろうか。


「俺達はレベリングしてたんですよ。生産職は素材をとってもスライムと同じくらいの効率で経験値が入るし、面白いですね」


 そう言って笑うソード君はまだシャーマンだった。


「生産職はレベルが上がりやすいが、必要技能は多いからな。まぁ、ソード君が護衛したりモンスター素材をとったりできるうちは大丈夫だ」

「生産職を連れていけないレベルのエリアまでいくと厳しいってことですよね?」

「ああ。まあ、そのレベルになったらまたその時に考えたらいいさ」

「了解です!」


 生産職とシャーマンのコンビとなると、中堅のエリアでも厳しいだろう。順調なのは二ヶ月ほどだろうか。とはいえ、彼らの今の楽しみを奪ってまでどうこう指図するのは嫌だった。


「そうだ。良かったら俺と山に行かないか?」

「え? 役に立つかわかりませんよ?」

「スライムを倒していてもソード君のレベルは上がらないし、巴君にしても同じ素材ばかりで飽きてしまうだろう?」

「巴はどうだ?」

「森の民さんがいいなら……」

「じゃあ決まりだな」


 初心者二人を連れ立って、3人でパーティーを結成する。


「山エリアの入り口はゴブリンがでてくる。単体だとコボルトよりは弱いが、大体二人組だ。まぁ4体までなら俺とソード君でなんとかなるから巴君は安心してくれ」

「……」

「俺はゴブリンを2体同時に受け持てるか自信ないですね……」

「4体の群れと出くわすことなんてほとんどないし、引き気味に戦えば大丈夫だ。相手が盾を持っているわけでもないからな」


 ソード君は「そっスか……」と自信がないようだった。巴君も無言だ。経験がないから無理もないだろう。


「さて、山エリアは足元が悪く、特に川の近くはまだ危ない。先ずは山道に沿って進んでくれ」


 鳥の囀りや川のせせらぎが心地良いが、順路を外れると色々なモンスターの生息地に踏み入ることになるエリアでもある。


 そういう意味では隅々まで探索したいプレイヤー殺しなマップでもあるだろう。横に直進とかしていたら普通に死ぬ。


 進んで直ぐにゴブリンが一体いた。


「じゃあ先ずは俺がやろう。ソード君は巴君の護衛をしていてくれ」

「わかりました」


 巡回する精鋭コボルトからドロップした直剣を抜き、祈りながら走る。


「精霊よ。彼の者の足を掬い給え」


 精霊の悪戯いたずらというスキルだ。


 ゴブリンは急に体勢を崩し、「ギッ?!」と驚き尻もちをついた。


 その無防備なゴブリンに剣を突き立てる。


 これがシャーマンの剣士寄りの戦い方だ。ソード君に参考になれば万々歳だな。


 剣を鞘に収めて振り返ると、ソード君はヤル気に満ちていた。


「次は俺にやらせてください!」

「ああ。一体ならそうしよう」


 昨日のことで心配していたが、楽しんでいるようでほっとした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ