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令和忍者異界ルスケ伝  作者: 風雅フクロウ
六章、流助暗殺編
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準備万端の巻

あらかたアレンの疑問は解消されたが、最後の一つだけ疑問が残っており、それを流助にぶつけた。


「そういえば、結局謀反を起こした彼らは操られていたのでしょうか?」


誉も全ての謀反人を消滅させたわけではなく、生き延びたものも小数いた。

その様子をアレンも見ていたが、操られている形跡はなく、状況から考えても、信じ難いことではあるのだが、彼らは本当に御剣勇仁を殺そうとしていたのだ。


(彼らは流助様の力を見誤ったのか?確かに魔術の使い手としては流助様はそこまでではない。

彼らが誤認したのもありえない話ではないが………)


以前の流助の話だと、バックには中つ区がついているという話だった。

中つ区は帝国と友好的な関係を築こうとしており、いわばエド国の裏切り者だった。

最も自分たちもエド国に対して謀反を起こそうとしているわけだが、それはいわば内部改革であって、

中つ区のようにエド国を帝国に売ろうとしているわけではない。

アレンに疑問に流助も答えた。


「俺にも分からない。ただ何らかの力の干渉があったことは確かだ」

「中つ区に扇動されたとか?」

「どうだろうな。中つ区がすでに動き出していると思うか?」

「状況を考えると、まだまだ我々は脅威とは思われてないと思います。

ここまで思い切った動きをするのは考えづらいところではあります。

いくら中つ区がエド国を帝国に売ろうとしても、正面切って日出ずる区と戦争する気があるとは思いづらいですな」

「俺もそう思う。単純な扇動の類ではなくもっと上位の力が働いている」

「神々のような力でしょうか?」

「そうだ。どちらにしても中つ区を調べる必要はある」

「確かに。ただ手が足りません」

「その通りだ。そこでこいつが役に立つ」

「こいつ?当てがあるのですか?」

「適任がいる。………そろそろ出てきたらどうだ?」


流助が声を向けると、草むらからいかにも豪傑風の男が出てきた。

背中には二刀の大刀を背負っており、両腰にも二本ずつ帯刀していて、ホルスターに拳銃が装備されている。何故か首からそろばんをぶら下げているのだけは謎だったが。

全身武器人間といった形で好戦的な格好だが、その男の異様さはそんな豪傑風にもかかわらず、

下卑た笑みを浮かべており、媚びたようにちょこちょこともみ手をしながら流助らのほうに近づいてくるところだった。

そのアンバランスさにアレンもちょっと驚いたが、よく見たら見覚えのある顔だったので冷静になった。


「坂本さんか。あなたがなぜここにいるのです?見張りはどうしました?」

「へへっ。旦那。あっしがここにいるってことは見張りがどうなったかなんて分かりそうなもので」


彼は先ほどまで共に御剣勇仁を賊から守るために戦った志士の坂本虎次郎さかもととらじろうだった。

坂本のふてぶてしい発言を聞いたアレンは一気に警戒して手を振りかざした。


「止まりなさい」


言われて、坂本はぴたりと止まった。相変わらず顔はにやついたままだった。

にやついた顔のまま坂本は言った。


「旦那らはこんなところであっしに構っていていいので?」

「どういう意味です?」

「つまり、殿の恩命を我らが頂戴するということですな」

「何?」


アレンが魔力を込めようとするが流助が制した。


「待て。殿ならば黒子衆が守っている」

「黒子衆?なんですかそれは?」

「殿を最後まで守り抜いた忠義の臣達だ。飛新左衛門とびしんざえもんを筆頭とした親衛隊だ。先ほど決めた」

「何を言っているのですか?」

「誉が政敵を一掃してくれたのだ。反対者はいない。ここで有能な者を抜擢していく」

「今そんなことを言っている場合ですか?」

「すでに事は終えている」


二人がのんきに話をしているのを見た坂本はその間じりじりと間合いを詰めていて、一気に流助めがけて抜刀し突きを繰り出した。


「きええーーい!」


流助は突きを指ではじき、坂本を蹴り落した。


「ふぐう………」


坂本は体ごと地面にめり込んで上半身だけになった。が手を挙げて合図をした。


「や、やれ!」


ところが何も起きない。坂本は唖然とした。

そんな坂本に流助は言った。


「狙撃手なら既に葬っている。坂本。中つ区に行き同志を集めてきてくれないか?

そして、何か動きがないか探ってくれ」


それを聞いて驚いたのはアレンだった。


「流助様。まさか適任とはこの男のことですか?」

「坂本は志士として独自の人脈があるし、志士らに一目置かれている。

工作員として適任だ」

「それはそうですが………」


アレンはそれを聞いてもまだ納得いってない風だった。それはそうだ。一緒に勇仁を守ったと思ったのも束の間、瞬時に裏切りその首を狙うような輩なのだ。正気の沙汰ではない。


「どうだ?坂本」

「へへっ。旦那。あっしをタダで使おうったってそうはいきませんぜ。

全く、旦那にはしてやられたもんでさ。御剣藩を乗っ取ろうと思いやしたがどうやら旦那にはお見通しだったようで」


といって坂本は自分の頭をたたいておべっかを言った。ところが流助は何の興味も感情も動かさずに言った。


「条件は何だ?」


その様子に余計なおべっかは無駄だと悟った坂本は正直に駆け引きなしで言った。


「あっしらに商売の独占をさせてほしいんで」


その言葉にアレンは焦った。


「馬鹿を言わないでください。折角我らが自由な市場を苦労して作ったというのにあなたなどにやれるものではありません」

「そりゃそうでしょうが。それも結局は豪商たちを力で抑えてのことですがな。豪商たちがいつまでも大人しくしているとは思えませんな。それに、競争に勝てない商家が藩を追い出されている。

みすみす他藩に有用な技術を逃してしまってはありやせんか?」

「それは分かっています」


と言いながらアレンはさすがは情報通の志士の代表格だけあると内心舌を巻いていた。

どうかんがえても一介の冒険者であるアレンよりも政治通である。出なければいきなり裏切って藩を乗っ取ろうなどとも考えないのだろうが。

アレンは思わず流助の顔を見た。流助も頷いた。


「あらかた人材は集まった。後は封鎖し人材を逃さないことだ。商人は十分儲けさせただろう。

そろそろ我らが儲ける番だ。しかし坂本。既にスチュワート家に独占権を渡す手はずになっている」

「旦那。それは………」

「聞け。坂本は政府お抱えの商家となってもらおう。有用で芽が開きそうな技術を集め育ててもらう。

どうだ?できるか?」

「へへっ。そんなのはあっしらの得意技でして」

「ならば、全ての用意は整ったということだ。アレン。後は任せる」


その言葉を聞いてアレンは何のことかを察した。


「分かりました。しかし、どうしてもですか?」

「どうしてもだ」

「………後はお任せください」

「ありがとう」


そういって、流助は自分の屋敷に足を向け歩き始めた。


(ハイネル。準備はできたぞ。いつでもくるがいい)


勝つにせよ負けるにせよ恐らく何かがつかめる。流助にはそんな予感がしていた。

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