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会心の笑み

作者: 鈴木フラグ

 花の束を抱えた少女一人

深い闇の中、肩を震わせながら歩いている。季節は、冬なのだろうか。あたりは暗く、少女を除いて道を歩く人はいない。


 枯れかけの花たち

おそらく、花屋からタダ同然で譲り受けたのだろう。そんな背景が浮かび上がってしまうような、精気のなさ。少女と同じくみな俯いて、足元の石畳の道を睨みつける。


 ふと、あることに気付いた。


 この季節は冬ではない

冬を迎える前に、この国から飛び立って南へ行ってしまう鳥の声が聞こえたのだ。

 彼女がワナワナと小刻みに肩を震わせ続けているから、寒いのかと思っていた。


 寒くもないのに、震え続ける肩

 彼女は口元を歪め、嘲るような笑みを浮かべながら、泣いていた。


 救い難い笑い

彼女は悟ってしまったのだろう。「この世」、

それが呵責なき、絶望の砂漠だということを。


 彼女はふらふらとした足取りで、町の中心にある橋へとやってきた。教会の前の橋で、聖人の名前が付いている。 

 彼女はちらと教会を見上げ、そしてあらん限りの力をもって、針のような叫びを町中に轟かせた。意味のある言葉ではない。ただ、彼女の絶望が彼女の小さい体に収まりきれなくなり、噴出してきたものだった。

 困窮による自殺、ありふれた死因である。

このような事態に対し、教養ある、あるいはなくても、大人が言うことは一つだ。

曰く

「人生は長いマラソンのようなものだ。道中何度も続けるには辛過ぎると感じるような難所があるだろう。けれど、それを乗り越えた先、必ず満足と歓喜と解放感に満ちたゴールが待っている。だから、早まっちゃいけない。」


 人生をマラソンに例えるならば、ゴールは「死」なのではないだろうか?

 そして、大海へ注ぐ河の中を漂う彼女の顔は、歓喜と幸福と解放感に満ちた、会心の笑みを浮かべていた……






初登校です。どうぞよろしくお願いします。

ちなみにこれは途中で詰まってしまった小説のプロローグ部分だったりします。


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― 新着の感想 ―
[一言]  鈴木フラグ先生、会心の笑みを読ませていただきました。蝙蝠傘といいます。拙い感想を書かせていただきます。  短いので軽く読み出したのですが、よくよく読むと結構、テーマは重い。何故かこのサイト…
[一言]  単純に短篇としてだったら話は良いと思いました。困窮で受動的な死を選ぶ時代は確かにありましたから。  アンデルセンのマッチ売りの少女も自殺を(受動的な死)取り扱ったようなものだと言われてま…
[一言] ですよね。ゴールが死だったら、まぁこういう事になりますよね。 ポール・ゴーギャンでしたっけ、『我々はどこから来、そしてどこへ行くのか』(うろおぼえ)っていう絵画を通して人生の意味を知りたがっ…
2009/07/04 19:27 退会済み
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