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第二十九話 下界のもの






「リート様! 見てください!」


 大きな箱を抱えたアリーテが、うきうきとリートの部屋へやってきた。


「何?」

「皇太子からですよ! きっと婚約式のドレスですよ! 開けてみてください!」


 促されて箱を開けると、薄いオレンジ色ののドレスと小物、靴が現れる。

 いよいよ三日後に迫った婚約式のために、リートに贈られたきらびやかなドレスを見て、アリーテは歓声を上げた。


「素敵ですねぇ! リート様に似合いますよ!」


 リートはドレスの布地を撫でて、ほうっと息を吐いた。指先に、するすると滑らかな感触が触れる。上等な布地の手触りだ。


 この数日間、リートは何度もジェラルドの魂を抜こうとして――一度として成功していなかった。

 どうしても、手が止まってしまうのだ。何故なのか、リート自身にもわからない。


「正式な婚約者になれば、魂を抜く機会も増えますね! 天界に戻れる日もすぐですよ、きっと!」

「……そうね」


 リートは誤魔化すように笑った。


「そうだ! バーダルベルト様が、明日は出来れば皇太子を家に連れてきてほしいそうですよ」

「え?」


 妙な要求に、リートは眉をひそめた。


「何故?」

「さあ? リート様の父親役として、婚約式の前に挨拶とかするんじゃないですか?」


 そう言われれば、不自然なことではないように思える。


「わかった。誘ってみる」


 リートは頷いた。


 アリーテが部屋を出ていくと、リートは机の上に置いてあったハンカチを手に取った。ジェラルドから贈られたものだ。


(……全部うまくいって、天界に戻る時が来たら、これだけは持っていってもいいかな?)


 天界に下界のものを持ち込むだなんて、神聖な天宮を汚すことになるだろうか。でも、ハンカチの一枚くらいなら、許可を得られるかもしれない。


 それとも、たかがハンカチ一枚くらい、捨てていけと呆れられるだろうか。


(アモルテス様にお願いすれば、大丈夫なはず、きっと)


 リートは寝台に寝転がり、ハンカチを胸に押しつけて、ぎゅっと目をつぶった。





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