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白き死神のGディバイド  作者: 河原 机宏
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嵐の前

 その頃、コロニー〝ベルファスト〟の『シルエット』ファクトリー内で最終調整を行っていた<エンフィールド>であったが、それも先程終了し、後はもうすぐ合流するオービタルトルーパー隊の到着を待つのみとなっていた。


「確か、この艦のオービタルトルーパー隊って『アンデッド小隊』って言ったわよね?」


 <エンフィールド>ブリッジにてオペレーター担当のルーシー・ルーン軍曹が同じオペレーターのメイ・シャンディ伍長に尋ねていた。

 ルーシーは、前髪を左右に分けておりウェーブがかった茶髪は肩まで届いている。明るい表情でブリッジ内を和ませるムードメーカーだ。年齢は20歳で彼氏募集中を公言している。

 メイはロングの赤い髪をした、まだあどけなさの残る少女で、年齢は17歳。同じオペレーターのルーシーとすぐに打ち解けており、2人でよく話をしている。その可憐な外見から、既に艦内に彼女のファンクラブが結成されているらしい。

 

「はい、小隊名はそれで合っています。それがどうかしたんですか?」


 メイが不思議そうにルーシーに返していた。その際小首をかしげる仕草を見せており、そんな姿がより可愛さを引き立てる。

 ルーシーは、メイのそんな仕草を見て「自分にはこんな可愛い動きは出来ないなー」としみじみ思うのであった。


「そいつらってちまたじゃ命令違反の常習犯で有名なのよ……そんなのがうちのオービタルトルーパー隊で本当に大丈夫なのかしら? この艦沈まない?」


 不吉な事を比較的明るい雰囲気で言い放つルーシーに、艦長のアリアは少し苦笑している。


「ルーン軍曹、不適切な発言は慎むように! 皆が不安がるでしょう?」


「それはそうだろうけど、こっちとしても肝心のオービタルトルーパー隊が信頼できない連中なら怖いでしょ? アリアはそう思わないの?」


「……艦長です!」


 アリアに対し、軽口を連発するルーシーではあったが、2人は『シルエット』士官養成所の同期であり、そこから行動を共にしている親友の間柄だ。

 ルーシー自身も、あの頃とは立場が変化したため上官であるアリアに敬語で話そうと心がけてはいるものの、たまにこうしてプライベート時のノリで話してしまうのであった。


「ふぅ……ルーシー、彼らなら大丈夫よ。世間的な噂では色々言われてはいるけれど、今までの戦闘記録を見る限りでは、とても信用に足るチームよ。でなければ、マコーミック副長がスカウトしたりしないわ」


「……それが一番不安なんだってば。この艦に集められたクルーのほとんどは、人間性はまる無視だって言うじゃない? 特にパイロットって変にプライドが高いのが多いでしょ? ほら! 前にもしつこくナンパしてきた連中いたでしょ。ずっと自分達はパイロットだってどや顔してたの覚えてる? あの副長なら、能力重視でそういうバカをスカウトする可能性が高いと思うのよ」


「あー、そう言えば、そういう人達がいたような……いなかったような……」


 腕を組みなが必死に思い出そうとするアリアではあったが、結局ナンパなパイロット達の事は思い出せなかった。

 ルーシー曰く、アリアが異性に言い寄られるのは日常茶飯事であり、あしらってきた連中の事はすぐに忘れてしまうようであった。

 ブリッジにて女性陣がガールズトークを繰り広げる中、操舵手のルドルフ・カート軍曹男性は操舵手用のシートに無表情で座っていた。

 一見、周囲で繰り広げられる会話に対して無関心なようであったが、彼の心中は穏やかではなかった。


(なんて居心地の悪さだ。……副長早く戻ってきてー!!)


 ルドルフが心の中でSOSを出していると、艦内に突然本当の警報音が鳴り響くのであった。

 絶妙なタイミングで鳴ったアラートにビクッとするルドルフの後方のオペレーター用シートには、いつの間にか専属の女性陣が座り状況のチェックを行っていた。

 つい先ほどまでは会社の休憩時間の如く、楽しそうに女子トークをしていたのにこの瞬間には真剣な表情で素早くチェックを行っていく。

 その切り替えの早さにルドルフは非常に感心していた。

 艦内チェックの結果、この警報は艦内システムのエラーによるものではなく、現在<エンフィールド>を収容しているファクトリー側から送られてきたものである事が判明した。


「ルーン軍曹、ファクトリー側との回線を開いて。状況確認をします」


「了解……回線開きました。艦長どうぞ」


 ブリッジ内の正面モニターに、男性が映し出される。その後方では、大勢の職員がひっきりなしに右往左往している様子が見られた。

 その男性――ファクトリーの責任者であるレナルド・ファーセット工場長もまた、深刻そうな表情をしている。

 その状況からアリア達は非常に嫌な予感を感じていたが、それはすぐに現実のものとなるのであった。


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