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白き死神のGディバイド  作者: 河原 机宏
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集う者達

 フロンティア・エイジ220年11月、『地球連合軍』と『シルエット』の艦隊が木星圏エリア(フィーア)所属コロニー〝モルジブ〟をめぐって初の大規模戦闘を行ってから10ヶ月が経過していた。

 エリア2(ツヴァイ)宙域、工業コロニー〝ベルファスト〟。

 このスペースコロニーは一般的にトーラス型と言われ、外観はドーナツのような形状をしている。

 そのドーナツのリング部分は絶えず一定の速度で回転し人工の重力を発生させ、リング部分の内部に生活圏が形成されていた。

 リングの中央部には無重力に近い環境である〝港〟があり、宇宙船のドッキングベイが設けられ外部とのやり取りを行っている。

 港とリングの間には複数の連絡通路が設けられ、ここを人々や物資が通ってそれぞれの区域を移動していた。 

 木星圏のスペースコロニーの多くは、このトーラス型の形状を採用していた。


 ベルファストには、リング内部の1区画に『シルエット』の工場が設置されており、オービタルトルーパーや戦艦の生産・開発が行われている。

 この工場にて最新鋭の機動戦艦<エンフィールド>の開発が極秘に進められ、先日竣工(しゅんこう)検査が終了し、出港の時を待っていた。

 そのため、現在この艦には続々とクルーが乗り込み、その手続きや担当部署の確認等で艦内はしっちゃかめっちゃかな状況であった。

 それに加えて、必要物資の搬入も行われており、ちょっとしたお祭り状態である。

 だが、そんな慌ただしい状況も次第に緩和されていき、出港に向けての準備は順調に進んでいった。

 この艦に採用されたクルーは、当艦の副艦長アルバス・マコーミック大佐によって選抜された者達だ。

 人員が少ない『シルエット』において、出来得る限り優秀な実力を認められ集められた者達であった。

 それ故、慣れない環境においても各々の得意分野を発揮し、すぐに順応してしまったのである。

 これだけ聞いてみれば、彼らはエリート集団のように思えてくるが実はそうではない。

 能力を重視した結果、個人の人間性等はあまり考えられてはおらず、組織内で少々問題を起こした者もいれば、素行不良の者もいたりと軍人として適正レベルが怪しい者が多数在籍していた。

 能力的に優秀で性格的にも問題ない人材を他の部隊が手放すはずがないのだ。

 その結果、人としての内面には妥協せざるを得なかったのである。まさに機動戦艦<エンフィールド>のクルー達はソフトな愚連隊と言える状況であった。

そのためクルー達は、自分達のようなつまはじき者を集めた副長は相当頭のおかしい人間だと思っていた。

 同時に、そんな人物が抜擢した艦長は、どれだけ壊れた人物なのであろうかと早々に心配する者は後を絶たなかったのである。


 <エンフィールド>の頭脳とも言えるブリッジでは、ブリッジ担当のクルー達が各々の業務への習熟作業に集中していた。

 戦闘時には、ここが中心となり指示を出していくのだ。そのため、ブリッジクルー達のプレッシャーは相当なもののはずであった――が、それはまともな性格の人間の話であり、彼らにはあまり当てはまらない言葉であった。

 能力的には一流の彼らは、早々に自身の業務内容を把握すると、そこからさらに踏み込んで自分で出来そうなことを模索していたのだ――それも趣味感覚で。

 それは他のクルーにも当てはまることであった。特にオービタルトルーパーの整備スタッフはその傾向が顕著で、全員がロボットオタクで機械いじりを趣味としている者ばかりである。

 最新鋭の機体を好きなようにいじる事が出来るというマコーミック副長の言葉に踊らされて笑顔で集まってきたのだ。

 実際、その言葉は事実であり、格納庫のオービタルトルーパー用のパーツは珍しい物ばかりで、彼らのテンションはうなぎのぼりであった。

 話はブリッジに戻る。ブリッジ要員は艦の頭脳を司る部分を担当するため、立場上自身の艦の性能面を把握する事になる。

 結果、彼らはこの艦がことごとく規格外の代物である事を悟るのであった。

 まず武装がおかしかった。迎撃用の武装が豊富なのは分かる。主砲も最新鋭の艦に標準搭載されている物なので分かる。

 だが、そのようなメイン武装とは別に、特殊な武装としてヴェルブラストという見た事も聞いたこともない物が搭載されていた。

 その武装の内容を見てみると、一撃で敵艦隊に大打撃を与えられるようなスペックが表示されていたのだ。

 そして、そのような規格外の攻撃力を実現できる動力炉がこの艦には搭載されている。

 トライターミナスリアクター――戦艦用の大出力のターミナスリアクターを3基も搭載しているのだ。そこからして規格外だ。他の最新鋭の戦艦でも2基搭載が主流なのである。 

 これだけで、単純に他の艦に比べて1.5倍の出力を有している事が分かるのだ。

 最新鋭の戦艦とは聞いていたが、自分達が乗り込んだ艦があまりにも高スペックである事から今後どういう作戦に組み込まれるのか段々と不安になる一同であった。

 そのような中、ブリッジの中心に位置する席――艦長席に1人の若い女性が座っていた。

 まだ10代後半から20代前半だろうか、その女性は美しいプラチナブロンドのロングヘアーをたなびかせ、白磁の肌に加えて均整の取れたルックスをしていた。

 切れ長でありながら大きな目は美しさと知性を感じさせる。そんじゃそこらの女優も真っ青の美人である。

 さらに『シルエット』所属クルーの制服の上からでも分かる程の抜群のプロポーションを誇っていた。

 彼女を見たブリッジクルー達は、艦長専属の美人秘書かと最初は思っていたが、そんな事ではなく彼女自身がこの機動戦艦<エンフィールド>の艦長アリア・ルミナス少佐その人であった。


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