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白き死神のGディバイド  作者: 河原 机宏


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記憶喪失のユウ

 その後ユウ達は自分達の部屋に案内されていた。オペレーターのメイ・シャンディ伍長が案内役を引き受け、彼らに自室のキーを渡す。


「へー、1人あたり一部屋なんだー。さすが最新鋭の戦艦ね」


 ルカが感心しながらつぶやく。以前彼らが所属していた巡洋戦艦<スプリング>では、パイロットは2人一部屋とされていたのだ。部屋自体もそれほど広いわけではなかったため、快適には程遠かった。

 だがこの<エンフィールド>は、開発時に戦艦クルー達の意見を取り入れ、艦内にクルーのストレス軽減を目的とした設備が多数備えられており、居住性の向上はその主たるものだ。

 

「広さ的には2人部屋に出来るので、希望であればそうする事もできます。整備班の人達は結構2人部屋にしているらしいですよ」


「なるほどね……ユウ、お前はどうする? 以前みたいに俺と2人部屋にするか?」


「いいや、1人部屋がいい。お前と一緒の部屋だと、自分の部屋に入るのに毎回緊張するんだよ。どっかの誰かが3人目を連れ込んでいる可能性があるからな」


「うっ……それは……まぁ、そんな事もあったっけか……」


 ケインの誘いを一蹴するユウ。ケインの女性関係に振りまわされた彼の恨みは相当根深いようである。

 そんな彼らの会話を聞いたメイは内容を理解すると赤面してしまい、ルカがユウを軽く肘で小突くのであった。


「あっ、伍長すまない。いつもの癖で……」


「えっ? ああ、いいえ。皆さん仲がいいんですね」


「そりゃあ、いくつもの修羅場を潜り抜けてきた仲だからな。そうだろ、お前ら?」


 マリクが少し得意そうな表情でユウ達に問いかけると、彼らの反応は冷ややかであり、隊長を残して全員部屋に入ってしまった。


「ちょっと塩対応すぎないか!?」


 メイは落ち込むマリクを見て、戦闘時は仲間でありながら恐怖心を抱いていた『アンデッド小隊』に対し、少し親近感を持てるようになっていた。

 



 自室の確認後『アンデッド小隊』の4名は格納庫に戻り、メンテナンスを終えた機体のチェックを行っていた。


「…………チェック終了。各部問題なし……か。まさか本当にこんな短時間で作業が終わるなんて驚いたな。この艦に集められたクルーは能力重視だと聞いていたけど、本当みたいだ」


 <Gディバイド>のコックピット内で1人つぶやくユウ。整備班の仕事の早さに驚くばかりであった。

 この白い機体は試作機であり、量産機である<セルフィー>よりもメンテナンスが難しいのだ。<スプリング>の整備班も腕は良かったが、この機体に関してはかなり苦戦していたのである。

 それこそ、モルジブ戦役時に配備された直後は大変であった事を思い出す。


「あれからもう10ヶ月が経つのか……早いもんだな。俺の今の記憶は2年分しかないけど、そのほとんどは戦いばかりだ。……記憶を無くす前の俺は一体何をしていたんだろう?」


 いつもそこで考えるのを止めてしまう。今の自分の名前でさえも、所持していた備品に刻印されていた名前が「ユウ・アルマ」であったから、それを採用しただけだ。

 自分に関する記載データの全ては憶測によるものばかりであり確証たるものは1つもない。本当の名前も故郷も家族がいるのかどうかも分からないのだ。

 記憶を無くした自分に残っていたのは、身体に染みついたオービタルトルーパーの操縦技術と人を殺める方法だけだ。

 そう考えれば、記憶を無くす前もろくな事をしていたのではないだろうという結論に至るのだ。故に考えるのを止める。どのみちまっとうな人生ではなかったのだろうと予想がつくから。

 ふと気が付くと、モニター越しに格納庫の一区画がやたら賑わっている様子が目に入って来る。ユウがそこに意識を集中すると、パイロットの思考とリンクしたコックピットのシステムが反応しモニターのズーム機能が働く。

 

(なんだ? 誰か来ているみたいだけど……あれは……)


 そこには、戦闘時にモニターで何度か会話し、ブリッジで着任挨拶をした<エンフィールド>の艦長、アリア・ルミナス少佐の姿があった。整備班班長のカズヤと会話をしているようである。

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