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白き死神のGディバイド  作者: 河原 机宏


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白い死神①

「ルプス、迎撃! 急いで!」


「やってる……わよ!」


 アリアとルーシーの必死の掛け合いがブリッジ内に響きわたる。

 ブリッジ後方より発射された短距離対空ミサイル〝ルプス〟により艦に放たれたバズーカの弾丸を迎撃する。再び艦のすぐ近くで爆発が起こり衝撃波がクルー達を襲う。


「くうっ!」


 必至に耐えるアリア。敵の終わらぬ連撃により、<エンフィールド>のターミナスレイヤーは1層のみとなっていた。

 複数の敵機に囲まれている状態であるため、自慢の高出力の兵装も使用できない。

 無理やり使おうとすれば、チャージ中に攻撃を受けてどのみち使用不可になるだろう。

 四面楚歌、八方塞がり、最悪の状態だ。


「敵ミサイル搭載機接近!」


 メイが悲痛な面持ちで叫ぶ。ミサイルランチャーを搭載した機体は1機撃墜し、もう1機も既にミサイルは撃ち尽くしたと思っていた。

 だが、このタイミングで決定打を放とうと温存していたのだ。更に随伴機として、バズーカ装備1機と小破したマシンガン装備1機が同時に接近する。


「ファランクス迎撃! カート軍曹、艦を後方に下げて、距離を少しでも取って! 左舷ターミナスキャノンチャージ!」


「! この状況で!?」


「今、高火力の攻撃が来れば危険よ! 無茶でも一気に墜とす!」


「了解! 左舷ターミナスキャノンチャージ開始、5……3……0! 撃てます!」


「この距離なら! 撃てぇぇぇぇぇ!」

 

 艦の左舷に設置してある砲塔から、高出力のビーム砲がミサイルランチャーを搭載した最後の1機に放たれようとした瞬間であった。

 バズーカによる砲撃が艦の左舷に直撃し、艦全体を揺るがす。それにより照準がずれ、ターミナスキャノンは虚空に放たれるのであった。

 攻撃を免れた<カトラス>は、巨大な目標に照準を定め、ミサイルランチャーのカバーが開かれる。


「耐ショック用意!」


 敵の攻撃に備えてアリアが指示を出す。この距離、このタイミングでは迎撃が間に合わない。

 艦の被害がどの程度になるのかも予想が付かない。自分の無力さに打ちひしがれる思いだ。だが、彼女の視界の片隅では副長のアルバスが何処か満足したかのような笑みを見せていた。


 


 突如、虚空から赤い閃光が走る。それは、<エンフィールド>に攻撃をしようと重厚感のある武装を解放していた敵機に直撃した。

 思いがけない方向からの攻撃に反応する事も出来ず溶解、爆散する。

 付近にいた小破中の<カトラス>も赤い閃光に触れた瞬間に機体が破壊され、おまけにミサイルの誘爆に巻き込まれて消滅した。

 突然の出来事に戦場にいた誰もが驚き、今しがた一体何が起きたのか思考が追いついていなかった。

 その時、<エンフィールド>のレーダーが高速で接近する反応を捉えていた。メイが急いで確認するが、彼女はその反応を二度見してしまう。


「シャンディ伍長、どうしたの?」


「そっそれが、この反応、熱量からしてオービタルトルーパーだと思うんですけど、スピードが異常なんです!」


 メイが血相を変えている。まるで幽霊でも見てしまったかのような表情だ。アリアは彼女の顔を見て、それがただ事ではないことを悟るのであった。


「<カトラス>の3倍……いえ、5倍近くの速度ですぅ!」


「なっ!?」


 ブリッジクルー全員が言葉に詰まる。それはそうだ。そんな速度にパイロットが耐えられるわけがないからだ。

 もし耐えられるとしたら、それは世間一般で言う化け物に相違ない。

 

「モニター入ります」


 そこには、宇宙を翔ける白い機体が映し出されていた。全身純白で美術館に展示されている白い彫刻の像を一瞬連想させる。

 しかし、それは決して美術品でもなければ工芸品でもなかった――戦争に勝つために生み出された兵器がそこにいた。

 白い機体は凄まじいスピードで戦場に舞い降りる。メイの言う<カトラス>の5倍のスピードという話は間違ってはいなかった。

 モニターに表示された後、一瞬で<エンフィールド>の付近に到達したのだ。


「機体映像から検索開始します。……ライブラリ照合……! ありました! <Gディバイド>です!」


 メイがそう言った瞬間、<Gディバイド>は付近にいた<カトラス>に高速で接近していた。

 同時に、腰部に装備している接近用の剣状兵装〝セイバー〟の柄を取り出し左手に持つと、すれ違いざまに高出力のターミナスエナジーによるビーム刃を出力し黄土色の敵機の胴体を切り裂く。

 時代劇に出てくる辻斬りの如く、無駄のない自然な所作であったため、『地球連合軍』のオービタルトルーパー隊は反応が遅れ、体躯を真っ二つにされた友軍機の爆発を目の当たりにして初めて白い機体の敵対行動を認識したのである。


「遅い!!」


 白い機体――<Gディバイド>のコックピットでは、黒いパイロットスーツを纏ったユウが鋭い眼光を敵機に向けていた。

 素早くトリガーを引き、携帯兵器であるブラスターライフルから高出力の圧縮粒子を発射する。

 それは、反応が遅れていたバズーカ装備の<カトラス>のコックピットを1撃で貫通し、機体の上半身と下半身を分断するのであった。


「これで4機……あと2機!」


 機体を180度回頭させ、その背部では今しがた撃墜した機体が爆発する。

 その光によって、宇宙空間に<Gディバイド>の人型のシルエットが浮かび上がり、赤い光を放つデュアルアイが敵を睨んでいた。


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