キャンプ中に落石で洞窟に閉じ込められましたが、ケツにダイナマイトを挿していたお陰で助かりそうです。でも洞窟が狭いので自分達も吹き飛びそうです。
笑いながら書いたので、多分面白いと思います。
束の間の休日を活かし、俺は会社の後輩と山へキャンプへ来ていた。
「アニキ! 携帯も電波届かないし、俗世から解放された気分がして最高ッス!!」
後輩がハンモックに揺られながら嬉々とした声を上げている。どうやらとても楽しそうだ。
「アニキ! 俺ちょっと散歩してくるよ!」
「ああ、俺は豚汁を作るから、あまり遅くなるなよ?」
「オッケー!」
後輩が人里離れた山の中へと向かい、直ぐにその姿は木々に隠れ見えなくなっていった。
「アニキ! あっちに洞窟があるよ!?」
消えた後輩が直ぐに戻ってきたかと思うと、何やら大発見をした子どものように、俺の手を引き山の方へと向かいだした。俺は豚汁を作る手を止め、仕方なく後輩と共にその洞窟へと向かった。
「おお、確かに洞窟だな……」
それは表面にツルが生い茂り、少し分かりにくい場所にあった。
「アニキ、入ってみようよ!」
「おいおい、危険かもしれないぞ?」
無茶を言う後輩を宥めようとした瞬間、俺は頭上から小石が落ちてきたのが見えた。
「──危ない!!」
──ガバッ!!
俺は咄嗟に後輩に覆い被さるように、洞窟の中へと回避した。
──ガラガラガラ!!
入口が、轟音と共にあっと言う間に暗くなり、日光が完全に遮られた。
「アニキ!?」
「大丈夫か!?」
「ああ、アニキが庇ってくれたから」
「……どうやら閉じ込められたようだな」
入口は落石で完全に塞がれ、そして元々脆かった入口は落石の拍子で崩れてしまい、手で掘り起こすのはとても難しそうだった。
「ゴメンよアニキ……俺のせいで…………」
「気にするな。先ずは助かる道を探そう」
洞窟内は湿った空気が圧を成しており、何やら小動物が死んだ時に発するカビの臭気が至る所に立ち込めていた。何より明かりが無く、洞窟内は闇一色に包まれていた。
「クッ……暗くて何も分からないな。せめて明かりが欲しいぜ」
「アニキ! 俺、懐中電灯持ってるよ!」
パッと一筋の明かりが灯り、埃と砂に塗れた陰気臭い洞窟内が照らされた。
「おっ、やるじゃないか」
「へへ、こんなこともあろうかと、ケツに入れておいたんだ」
「頼もしい後輩を持って、俺は幸せだぜ」
懐中電灯の明かりを頼りに洞窟の奥を照らすが、少しも進まない所で行き止まりになっていた。
「……どうやら、もう使われてない洞窟のようだな。誰も入れないように途中で塞がれちまってるぜ」
明らかに人為的な埋め立てが施された箇所。その壁は厚く、手で掘るのは無謀であろうと直ぐに推測出来た。
「やはり今塞がれた入口を地道に掘るしかないな」
「アニキ! こんなこともあろうかと、俺、ケツにダイナマイトを入れておいたんだ!!」
後輩が何処からともなくダイナマイトを取り出した。
「オッ! 全く、準備が良い後輩を持って、俺は幸せだぜぇ?」
「へへ。さ、アニキ! ダイナマイトに火を付けてよ!」
「……おいおい、俺は豚汁の途中で来たから何も持ってないぜ?」
「──え?」
「お前こそケツに懐中電灯やダイナマイトが入ってるくらいだから、当然ライターくらい入れておいたんだろ?」
「アニキ、俺タバコも吸わないから流石にライターは入れてないッスよ」
「そうか、なら仕方ない」
「俺、いつ妊娠しても良いように、タバコと酒は止めてるッス」
「お前女だったのか!?」
「いや、男ッス……」
「……だよなぁ」
岩壁にもたれ、脱出の手段を思考するも、昼時を過ぎている為か、空腹で思考回路が上手く回らない。
「アニキ、腹減ったッス……」
「……仕方ねぇ、ココで飯にするか」
「え? あるんですか!?」
「こんなこともあろうかと、ケツにパンやビールを入れておいたんだぜ?」
「流石アニキ!!」
何処からともなく出したメロンパンやジャムパンを二人で分け合い、とりあえず腹を満たす。
「流石にビールは冷えてねぇけどな」
「アニキ! 俺に良い考えがあるッス!」
「ん? なんだ?」
「よく、冷たい物を一気に食うと腹壊すッスよね?」
「お、おう」
「逆に腹を壊せば腹が冷えないッスか!?」
後輩が人差し指を立て、褒めてくれと言わんばかりの笑顔で提案をしてきた。
「その発想は無かったな。やってみるか」
「分かったッス! いくッスよ!!」
──ボフッ!
「っほぉ──!!」
腹を殴られもんどり打つ俺。後輩のボディブローがマジで痛い。
「どうッスか!? ビール冷えたッスか!?」
「だ、ダメだ……これはダメだ……!!」
涙目で作戦中止を訴えた。後輩は残念そうに拳を収め、仕方なく俺は生温いビールを口にした。その間に、後輩は何やら洞窟に居た虫を捕まえ、まじまじと観察していた。
「よく虫なんか触れるな……」
「意外と可愛いんスよ? アニキもどうッスか?」
「いや、止めておくよ。俺には虫を愛する気持ちは微塵も無い」
物珍しそうに、後輩は虫眼鏡でカサカサと蠢く虫を観察している。俺は虫が苦手だからなるべくあっちでやって欲しいぜ…………。
「……そう言えば、いつの間に虫眼鏡なんか持ってたんだ?」
「何言ってんだいアニキ、勿論ケツからだよ!」
「…………便利なケツだな」
俺はその時、閃いた。この難況を脱出する最高にクールなアイデアを──!!
「その虫眼鏡を貸してくれ!」
「いいッスよ」
俺は後輩から虫眼鏡を借り、崩落の隙間に挿したダイナマイトの導火線に近付けた。
「懐中電灯も貸してくれ」
「はいッス」
虫眼鏡を傾け、懐中電灯の明かりを一点に集中させる。
「も、もしかして……アニキ!?」
「ああ。上手く行けば──」
──ジッ
導火線から僅かな煙が立ち上がった。
「フー! フー!」
俺は懸命に息を吹き、導火線に芽生える灯火に命を吹き込んだ!!
──ジジッ!
「やったぞ!」
「流石アニキ!!」
導火線に火が着き、俺達はダイナマイトから離れ洞窟の奥へと走った。が、それでもダイナマイトまで5mも無い。
「アニキ……これ俺達も巻き込まれて死んじまうんじゃ…………」
「ああ、俺も今そう考えてたところだ」
導火線は短くなり、間もなくダイナマイトに火が着く。どうやら俺の考えはちょいとばかし、足りなかったようだった。
「急いで消すぞ!!」
「アニキ! どうしよう!?」
「小便だ! ダイナマイトを消すには小便と相場が決まっている!!」
「アニキ!! 急に言われても出ねぇよ!!」
「なにぃ!? お前伝説の小便小僧先輩を見習え!! 小便小僧先輩は自らの命を顧みず果敢にダイナマイトの火を消した勇敢たる勇者なんだぞ!!」
「アニキこそ、さっきビール飲んだから出るんじゃないッスか!?」
「出ない(笑)」
「ビールもう一本無いんスか!?」
「全部飲んじった」
「使えねーアニキだな!!!!」
「おーい、本音が漏れてるぞぉ……」
狼狽える後輩を余所に、俺は短くなる導火線を見つめ、静かに考えを巡らせた。
「小便……水……液体…………そうだ──!!」
「──!?」
俺は後輩の肩を掴んだ。
「なんスか!?」
「お前さっき『いつ妊娠しても良いように、タバコと酒は止めてる』って言ってたよな!?」
「そ、そうッス……」
「お前を女と見込んでお願いがある!!」
「え? えっ?」
「母乳を出して火を消してくれ!!」
「ええーっ!?」
「それしか無い!! それしか無いんだ!!」
「わ、分かったッス!! やってみるッス!!」
後輩が厚い胸板に力を込め、母乳を出そうと気合に満ちたポーズを取った。そして──
「無理っス」
「いや! こんなこともあろうかと、ケツに万力を入れておいたんだ! これで搾れば出るだろうよ!!」
何処からともなく取り出した万力をセットし、再び後輩の乳を搾ろうとする。
「いだだだだだ!! アニキ千切れるっスー!!」
「死ぬよりはマシだ!! 耐えろ!! 母乳を出せ!! 噴射しろーーーー!!!!」
ギリギリと後輩の乳を搾ろうとするが、やはり出ない。
「俺の理論は間違って無い筈だ! ──そうか!!」
「──!?」
俺は何処からともなく万力をもう一つ取り出した。
「ア、アニキ!?」
「左右均等にやらないとダメなんだ!!」
「アニキ絶対違うと思うッス!! 死ぬっス!!」
「俺の理論は間違って無い!!!!」
万力をセットし、もう片方の乳もめいいっぱい搾る。
「うぎゃあ!! アニキ死ぬぅぅ!!!!」
……そして、後輩の叫び声で我に戻った。
「……導火線、消えてないか?」
万力をセットしてなんやかんやしている間に、どうやら導火線の火が消えていたようだ。
「あ、ホントッス」
「どれどれ……」
虫眼鏡でじっくりと導火線を観察する。万が一使えなくなっていたら勿体ないからな。
「アニキ照らすッスよ」
「お、サンキュー」
後輩が懐中電灯を手に持ち、導火線を照らした。実に気が利く後輩だ。
──ジジッ!
「しまった!! また光を一点に集めてしまったぞ!!」
「──!?」
「早く母乳を出せー!!」
後輩の乳を搾り取ろうと、万力を締め付けた!!
「んほぉぉぉぉ!!!!」
狭い洞窟内に、後輩の無情なる叫び声が響き渡った。
面白かったら評価ボタンや感想やレビューなんか頂けると、泣いて喜びます。そしてケツダイナマイトシリーズが増えます。
(*´д`*)