正夢
昼飯は素麺に決め鍋に水を入れようと蛇口に手を伸ばした時、少しでも風を入れようと開け放たれた窓の外から女性の悲鳴が聞こえて来た。
「ぎゃぁぁー痛いー! 助けてー!」
鍋を放り出しベランダから悲鳴が聞こえる方を見る。
隣の女子高の裏門付近で白いジャージ姿の男に馬乗りされている女子高生がいた。
俺はTシャツにトランクス姿のまま玄関脇に置いてある木刀を手にして外に走り出る。
女子高の裏門から中に入り女子高生に馬乗りになり首に顔を埋めている、羨ましいじゃなくて怪しからん事をしている男の背を木刀で小突き声をかける。
「おい! 何をやっているんだ!」
男が顔を上げる。
女の子の首の肉を咥えその肉を引き千切りながらだったが。
引き千切った肉を咀嚼しながら男は俺を見た。
男の顔は青白く口元からジャージの胸の辺りまで血で真っ赤に染まっている。
男は立ち上がり腕を前に付きだし掴み掛かっ来た。
俺は木刀で男の頭を力一杯殴り付けるが痛がりもせずノロノロと近寄って来る。
殴っても効果がないので殴るのを止め男の瞬きをしない目に木刀の先端を付き入れねじ回す、すると男はその場に崩れ落ちた。
木刀を目から引き抜き身体を2~3度突っついて動かなくなったのを確認してから女子高生に目を移す。
彼女の顔や腕は真っ青になっていて、肉を引き千切られた首の傷口から血と得体の知れない無色透明なゼリー状の物を滴らせ立ち上がろうとしていた。
その時校舎の中から悲鳴が響く。
「キャァァァァー」
俺は立ち上がろうとしている女の子をその場に残し、教職員用の出入り口から校舎の中に入り悲鳴が聞こえた上階を目指す。
1階と2階の間の踊り場を過ぎ2階に駆け上がる俺の目に、青白い顔の女子高生2人に掴み掛かられんばかりの女の子が映る。
青白い顔の女子高生2人の目を俺に向けるため大声を上げた。
「ゴラァァー!」
大声に3人の目は俺に向けられる。
俺の姿を見た途端、襲い掛かられそうだった女の子は悲鳴を上げ廊下の向こうに走り去った。
下着姿のデブの中年男が階段の下から突然大声を上げ現れたら逃げ出しても仕方がないよ、傷つくけど。
でもね。
襲い掛かっていた青白い顔の女子高生2人も一緒に逃げ出す事は無いんじゃないの?
青白い顔て制服のあちら此方を血で汚した女子高生2人は、俺を怯えた顔で見ながら教室に入って行く。
溜め息を突きつつ階段の最上段に足を掛けた俺はそこで足を滑らせ仰向けに階段から転がり落ちる。
ドサッ!
「痛えー」
背中の痛みで目を開けるとそこは俺の部屋でベッドから転がり落ちていた。
「何だ? 夢かよ」
頭を振り目覚めの一服をしようと煙草に手を伸ばした時、開け放たれた窓の外から悲鳴が聞こえた。
「ギャァァー痛いー! 助けてー!」