キャンピングカー
昔ロト7で10億円ゲット。
その金でチョット広めの土地を購入。
人と係わりを持ちたく無い私は土地の周りを3メートル程の塀で囲み、大型トラックを改造したキャンピングカーを土地の真ん中に置く。
家の代わりにキャンピングカーを置いたのは、以前読んだキャンピングカーで過ごす楽しさを描いた小説に感化されていたから。
ただ私は子供の頃からインドア派で、何処に出掛けるより家で本を読んでいた方が良いと思っている出不精、その上大型トラックの免許どころか乗用車の免許すら持っていない。
だからキャンピングカーて何処かに出掛けるのでは無く、この場所でキャンピングを疑似体験しているだけ。
キャンピングカーの周りに畑を作り自由気ままな生活を始める。
お陰であの厄災の日も畑で野菜の収穫を行っていた。
トマトにキュウリにナスなどを収穫して水で満たした桶に入れ、一息つきテレビを点けたらゾンビに齧られている人の顔が映る。
そして私は外で何が起きているか知った。
とは言ってもそのあと私が行ったのは、門が固く閉まっている事を確認し門の格子に鎖を巻きつけただけ。
あとはそれまでと同じく、畑の手入れを行いながら本を読んでいた、先程までは。
門に巻いていた鎖がガンガン叩かれて切断され、門から数人の男女が入って来たと思ったら、その中の1人に腹を刺され別な奴に肩を鉄パイプで殴られた。
刺した奴が声を掛けて来る。
「オイ! 爺、この車は俺達が貰ってやるよ。
爺はそこで畑の肥やしにでもなってろ」
倒れた私の目に門から次々とゾンビが入り込んで来るのが映った。
私の腹を刺した刃物はゾンビ退治に使われていたようで、私は刺された事でゾンビ菌に感染したのだろう、門から続々と入って来るゾンビの群れは私に群がる事無くキャンピングカーを包囲する。
馬鹿な奴等だ、免許が無い私に動く車は必要ない。
そのキャンピングカーのエンジンは取り払われエンジンルームにあるのは、エアコンを動かしたりバッテリーに充電したりするための発電機が置かれているだけ。
キャンピングカーの中から悲痛な声が聞こえる。
「何だよ、この車、エンジンが掛からないぞ!」
「早く出して! ゾンビに包囲されるわよ」
食い物もキャンピングカーの中には殆ど残って無い。
私は痛む腹を押さえながら門に歩み寄り大きく開かれている門を閉め、鎖を巻き直す。
此れで中に入り込んだゾンビは外に出て行く事が出来ないから、キャンピングカーの中の奴等は餓死するかゾンビに食われるかを選択する羽目になるんだ。
ハハハハハ、笑ったところで私の意識は無くなった。