拝復 応援されたい作者様、応援したい読者様。これもなろうの現実です。
このエッセイは『拝啓 エタりそうな作者様、エタが嫌いな読者様。これがなろうの現実です。』 https://ncode.syosetu.com/n4624eq/への返信となっております。
応援されたい作者様、応援したい読者様
拝復
花吹雪舞う季節になりました。至る所でお花見が開かれており、にぎやかな雰囲気を感じております。そちらではどのような感じでしょうか。
さて、先日はお手紙ありがとうございます。エタについてとてもわかりやすく説明していただきまして、とても参考になりました。ありがとうございます。
作者様へのエールはとても素晴らしいことだと存じております。しかしながら、読者様におきましては応援しても悲しい結末になることも知っておいて欲しいと感じました。
本日はその事実をお伝えするため筆を執った次第です。
同封した画像の1つ目をご覧ください。
これは2018年3月30日時点での小説家になろうに投稿された小説の全体の状況を示しています。ノクターンノベルズやムーンライトノベルズ、ミッドナイトノベルズといいたR18サイトに投稿された作品も含んでいます。黒い部分は削除又は検索除外の小説の割合を示しています。
小説家になろうで小説管理に使用されているNコードは数値を変換して作られています。その数値は投稿した順番に割り振られており、Nコードを見れば、今までに投稿された小説のうち何番目に投稿された作品かが分かる仕様になっております。NコードはR18サイトと共通の連番で管理されています。
その性質を利用し、なろうデベロッパー様が提供しておられる『なろう小説API』と『なろう18禁小説API』を用いて削除又は検索除外の小説がどの程度あるか調査しました。削除作品と検索除外作品はAPIでは取得できないことを利用して作成しています。取得できなかったNコードの数と取得できたNコードを分類すると最初のグラフとなります。
この画像を見て分かる通り、削除、検索除外作品がとても多いことが分かります。投稿された小説の約半分は削除作品か検索除外作品です。
ではこの削除又は、検索除外はどのような割合なのでしょうか。
小説家になろうでは、検索除外の作品は検索できませんが、URLを直打ちすれば読むことができます。そのためWebAPIで取得できなかったNコードをURLに打ち込むことで、その小説が削除されたのか、検索除外なのか区別することができます。
しかし、すべてを調査するには約60万アクセスする必要があり、労力がかかりすぎます。またサーバーへの負荷も大きくなります。
そのためこの割合は、統計的手法を用いて推定を行いました。取得できなかったNコードの母集団約60万に対して標本数を約3000として推定を行います。母集団に対して無作為抽出を行うことで、この程度のサンプル数があれば95%信頼区間で標準誤差が最大でも2%に収まります。よって今回はWebAPIで取得できなかったNコードをランダムに約3000個抽出し、削除割合調査を行いました。
同封した2枚目の画像をご覧ください。
これは取得できなかったNコードの削除、検索除外の割合を表しています。この割合の標準誤差は1.0%(95%信頼区間)です。標準誤差はもとの母集団の割合とのずれがどの程度あるのかを示しており、今回の場合、95%の確率で母平均割合との差は1%以内であると考えられます。これを見ておわかりの通り、ほとんどが削除された作品であることが分かります。
同封した3枚目の画像をご覧ください。
先ほどの結果を考慮したグラフがこちらになります。
小説家になろうにおいて削除や検索除外というのは日常的に行われています。約半数の作品が削除されています。読者様が付けた感想や評価、ブックマーク、レビューごとです。
小説家になろうに投稿される作品の半数程度は削除される。これも小説家になろうの現実なのです。
ではなぜ、作品は削除されるのでしょうか。
削除原因についても調査を行いました。小説家になろうでは削除された作品のNコードを表示しようとするとエラーメッセージが表示され、削除された原因が分かる場合があります。古い作品は対応してませんが、最近の作品であればその原因は特定できます。
こちらも同様に、削除作品について約2500サンプルをランダムに抽出し、調査しました。それぞれの割合の標準誤差は最大でも約1.7%(95%信頼区間)です。
同封した画像の4枚目をご覧ください。
削除の原因は大きくわけて3つあります。それぞれ『作者自身によって削除されるもの』、『利用規約等により運営が削除するもの』、『退会により削除されるもの』です。
1つ目の『作者自身によって削除されるもの』。例として、人気がでない、エタった、黒歴史、規約違反になりそう、書き直す、などの理由から削除しています。
また、小説家になろうでは以下の理由に該当されない場合は、システム負荷削減のため削除は推奨されておりません。参考URL:https://syosetu.com/man/noveldelete/
・出版社主催のコンテストに小説を投稿する場合
・自費出版あるいは各出版社などで有料で小説を販売する場合(同人誌含)
・法律上問題のある場合(著作権侵害/名誉棄損など)
小説家になろうでは、作品の削除は推奨されておらず、削除する前に警告画面が表示されます。しかし、削除する人はそれも気にせず削除しています。
削除理由の約75%がこの作者自身によるものです。
2つ目の『利用規約により運営が削除するもの』、これは主に利用規約に違反した作品が削除されます。性的な描写、歌詞、誹謗中傷、許されていない二次創作など、ガイドラインに示されているにも関わらずその基準を犯した事による削除です。
対処としては、利用規約や、ガイドラインは読みましょうと言うしかありません。特に性的描写はR18サイトが用意されているにも関わらず描写する人がおります。人気がでるからといって安易に描写するのはいかがなものかと思います。そうした描写が必須ならば始めからR18サイトに投稿するべきでしょう。後で消されると分かっていながらも書く人は、作品を、読者を、単なる人気取りの数値としてしか見ていないのでしょうか。
削除理由の約10%がこれに相当します。
そして最後、3つ目の『退会により削除されるもの』、こちらは作者が退会することで発生します。作者が退会しても作品は残るサイトもありますが、小説家になろうでは退会に伴い、その作者が投稿した作品、ブックマーク、評価が消えます。なお、書いたレビューと感想は残ります。
これは削除理由の約15%が該当します。
ここまで削除について説明してきましたが、作者様の一部には読者様の事をあまり考えない方もおられます。読者様の応援があるにも関わらず、人気がないから、エタったから、削除されます。そういった作者様への応援や期待はほとんどの場合、エタったり削除されて裏切られます。
応援しても、あまり良い結果にならないのも、応援する人が少ない理由なのかもしれません。
しかしそれでもなお、作者様を応援したという人に、見せたいものがあります。
同封した画像の5枚目をご覧ください。
これは2018年3月31日時点での、小説家になろうの登録ユーザーの公開ブックマーク、作品評価、レビュー状況を示しています。
ブックマークと評価者は先ほどと同様に統計的推定により求めています。全ユーザーのなかからランダムに約3000人抽出しそのマイページから1作品でもブックマークを公開している、1作品でも評価している割合を求めました。またレビュー者はユーザー検索機能により全数調査を行っております。
これを見ると、ブックマークを1つでも公開している人は約半分です。また評価した人の割合は約20%程度です。レビューした人は全体の1%以下なのです。
ことレビューに関しましては、今までに投稿されたレビューのうち半分程度を、1000人(レビュー書いた人の約9%、ユーザー全体の約0.08%)が書いています。
評価をつける読者様、レビューを書く読者様はとても貴重な存在なのです。もし、あなたが応援してくださるのならばそれだけで多くの読者様の中でも特別な存在になれるでしょう。
応援したい読者様。応援しても報われないことは多々あります。
あなたが書いた感想に返信が来るかも分かりません。応援も見ていない場合もあるでしょう。レビューをしても作品が削除されることもあります。誤字報告をしても直さない方もいるでしょう。また、感想やポイント、レビューを付けた連載作品に対して最後まで読まなければいけない義務感も出て来るかもしれません。
途中で読まなくなってもブックマークを外すと気まずい、そんな思いも生まれるかもしれません。一度応援したら最後まで読まなければいけない、そんな気持ちもあるかもしれません。
ですが、もしも、読書することに義務感や苦しみを感じているのであれば、すぐにやめるべきです。読書は本来、楽しんでやるべきなのです。その場合その作品を読むのはやめて、別の作品を読むべきです。もっと気楽に応援していただければと思います。
ずっと応援する義務はないのです。面白くなかったら読むのをやめてもいいのです。その場合、ブックマークを外すのもいいかもしれません。
しかし、またその作品を応援したくなったなら、私からこの言葉を送ります。
「また応援してくれてありがとう」
応援されたい作者様。残念ながら小説家になろうでは評価をつける人やレビューを書く人は少数派です。いまレビュー欄に載っている作品や評価が多くついている作品は一部のユーザーがつけているだけです。大半の作品にはレビューはつきません。もしかすると、それは今までの作者様の行いのせいかもしれません。信頼が失われているのかもしれません。
読者様が応援しない理由も事情もあるのです。
作品を削除、検索除外にするなとは言いません。応援されたいのであれば、更新を定期的にして、作品を完結させ、実績を作ってみてはいかがでしょうか。そうするだけでその読者様は安心できます。あぁ、この人は大丈夫なんだな、って。
応援して無言で作品を削除されると、読者はとても落ち込みます。書いた感想が悪かったのだろうか、ポイントを入れるべきではなかったのか。削除されて応援した結果がすべて消えてしまうのは、それは応援したくなる気持ちも分かりますよね。
もしかしたら、そのせいで今後、感想を書いたり、ポイント評価したり、レビューを書いたりしなくなるかもしれません。
裏切られるかもしれないことを知っていながらも、けなげに応援する読者様は素晴らしい。
そうは思えませんか?
もしあなたが応援されたい、感想を書かれたい、レビューをされたいのであれば、定期的に更新してください、エタらせないでください、完結させてください、安易に削除しないでください。実績を作って、読者様を安心させてあげてください。私は他の作者とは違うのだと証明してください。応援しがいのある作者様になってください。
それだけで、応援する人が増えるのです。
さて、いかがだったでしょうか。応援されたい作者様、応援したい読者様。これも小説家になろうの現実です。これからの執筆、読書に少しでも役立てましたら幸いです。小説家になろうでご活躍され、素晴らしい作者、読者に成長されますことを心からお祈りいたしております。
新年度が始まり環境の変化も大きい中、とてもお忙しいとは存じますが、読者様も作者様も体調を崩されませんようお気をつけください。
平成30年4月4日
エタも削除も嫌いな読者より
追伸 この手紙への返信(感想)は必要ありません。もし、あなたが感想、レビューを書きたいと思ったのでしたら、その代わりに貴方が応援する作品に書いてあげてください。それだけで、貴方と、その作品は特別になるのです。