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震えるエルフと復讐を  作者: 焼魚あまね
エルフの国編
8/41

08 『エルフと二人のイケメン』

 きっと僕はこれから死ぬ。


 矢で射抜かれるというのは痛いだろうか。

 真にこの世界の住人ではない僕が死んだらどうなるんだろうか。

 元の世界でも死んだことになるんだろうか。


 考えても意味はない。

 答えはすぐにわかるんだから。


 僕は目をつむったまま、痛みを、死を待った。

 しかし救世主というものはいるんだな。

 その者は言ったんだ。


「そんな簡単に命を消費してしまうのかい? そんなの僕が許さないよ」


 僕がその存在に気付き目を開けると、目の前に人がいた。

 黒いマントに、半袖短パンの軍服のようなものを着用している。

 その人はあろうことかジャンプして僕の前にやってくると、飛んできた矢を素手で掴んで通過していった。


 あり得ない光景だった。

 僕は救われたんだ。


 その人は着地すると、姿勢を低くして右足で地面を踏みしめ止まった。


「よっと! 君は詰めが甘いなぁ。そもそもあんな方法でうまくいくと思ったのかい? 君は命の大切さを理解しているはずだ。軽率な行動はやめてくれたまえよ」


 僕に背を向けたまま彼はそう言った。


「ごめん、君の言う通りだ。ともかく、助けてくれてありがとう。えっと、君は……」


 恩人の正体を確かめるため問いかける僕に、エルフが話しかけてきた。


「シオン……」

「どうした?」


 エルフ達はみんな震えていた。

 しかも結構激しくだ。


「シオン……、神です。神様来ちゃったです~!」

「え? 神様?」


 すると目の前の恩人は僕の方を振り返る。


「イケメンが死ぬのをこの国の神が見逃すと思うかい? そんなわけないよねぇ。だから助けたんだ。だって僕は神なんだから」


 僕を助けたのはまさかの神だった。

 しかし、驚いたのはそれだけではない。


 振り向いたその男の子は、僕と同い年くらいの子だった。

 同じ身長だった。

 僕は左目が少し隠れるような髪型をしているが、彼は右目が少し隠れるような髪型をしていた。

 僕と向かい合う彼は、まるで鏡のように、僕と瓜二つだったんだ。


「なんで、僕と同じ姿なんだ?」

「不思議に思うかい? それについてはいずれ分かる時が来るさ。今は一つだけ教えてあげよう。この国におけるイケメンというのはね、神である僕の容姿に近いことを指してるんだ」


「つまり、エルフ達が僕のことをイケメンだと認識しているのは、僕が君に似ているからなのか」

「そーいうこと! とにかく生存おめでとう。僕の住処に来たならば、その時こそゆっくり話そう。その前にまずはダークエルフと話してみるといい。僕の介入を知った彼らが君を襲うことはないだろうからね。それではまた会う時まで、ばいばい!」


 楽しそうに助言をした神は、僕に手を振る。

 そしてパッと消えてしまった。


「なあエルフ。君達は僕が神そっくりだって知ってたんだね」

「そうです~」

「それでも僕に協力してくれてたんだね」


「シオンは良い人間です。一緒にいて楽しいです」

「楽しい?」

「はっきりとは分かんないです。でもきっと楽しいという感情なんだと思うです」

「そっか」


 ここにはまだまだ不思議なことがありそうだ。

 目的だった神との邂逅は予想外のものだったし。


 でも、エルフ達とならこの先も頑張れる気がした。


「みんな生きてるか?」

「何匹か死にましたです」


「うん。……じゃあそいつらは優しく運んでくれよ。それではみんな、ダークエルフの住処へ向かって出発だ」

『「はいです~!」』


 安全地帯となった広い平原を、僕らは歩き出すのだった。

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