41『僕達は何をすべきか』
「シオン……シオン……」
家中に溢れかえったエルフ達が呼んでいる。
可愛らしい声と感触。
漂う僕。
「これは何とも賑やかです」
「パーティーでもするです?」
そんな予定はない。
しかし、のんびりマイペースなエルフ達も声を聞くと何だか落ち着く。
「なあエルフ。ここは僕の家なんだ」
「シオンの?」
「うん、でもこんな風に招くつもりではなかったんだ。このままだと動けないだろう? だからさ、またあの砂粒みたいになれるかな?」
「砂粒……、あああれです、さらさらになるやつですね。おーい、みんな! さらさらになるやつやるですよ!」
近くに居たエルフがみんなに伝える。
するとエルフ達はわさわさと蠢き、そして緑に光る砂粒となった。
「おっと!」
エルフの占める体積が一気に減ったことで、僕はリビングの床に転がった。
すると視界にはカノンと、そして母さんが転がっているのも見えた。
「あははー、大変だったね」
「カノンは大丈夫?」
「平気、平気」
「ちょっとシオン! 母さんの心配は?」
「ああ、母さんも大丈夫……だよね?」
「何その言い方。まあ無事ですけど」
母さんは悪魔だ。
人間の僕が無事なんだから母さんも問題ないだろう。
だけど、心配して欲しかったのかな?
「さてと、砂粒になってもらったのはいいけど、これでは砂だらけだ」
「そうね、掃除機で……」
「母さん、それはちょっと」
「冗談よ」
他愛もない家族の会話。
母さんの正体が発覚して以降、以前より気軽に話せている気がする。
以前も別段仲が悪かったわけじゃないけれど、ある意味本性を現した感じかな?
「確かにこのままだと困るね。えっと小瓶小瓶っと。あった! これを近づけてー……」
カノンは小瓶を見つけるとそれを緑の砂粒に近づけた。
どんどん小瓶の中に集まる砂粒。
あっという間に全て吸い込まれ、そして中で緑のキューブとなった。
「よしっと!」
因幡タワーでやったように、またすべてのエルフが凝縮された。
便利なものだ。
「いいわねそれ。ゴミとかも吸い込んでくれないかしら?」
どうやら小瓶に興味があるらしい母さん。
でもそんな機能はないようだった。
「さすがにドクターもそんな機能はつけてないよ」
「それ、ドクターが作ったものなの?」
「うん、ドクターはこういうの作るの得意だからね。そうだ! ドクター? ドクター聞こえる?」
何か思いついたように小瓶に話しかけるカノン。
すると小瓶のキューブが光り、一粒の砂が舞って落ちると、ドクターが出現した。
「お呼びですかカノン様」
「やっぱり呼び出せるんだね」
「ええ、私に関しては他のエルフより個体差が大きいですからね。認識できる呼び方で呼んでもらえればすぐさま出てきます」
「でさ、これからどうしたら良いと思う? 僕達はこの世界に来てしまった。お兄ちゃんは元に戻ったことになるけど、僕は異世界に迷い込んだに等しい。神の力も弱くなってしまってる」
カノンの言う通り。
僕は以前の生活に戻ることも可能だ。
しかしカノンは違う。
このまま一緒に暮らしていいものなのか?
母さんが悪魔な時点でもう神が家族としていても良い気もするけど。
「そうですね。エルフの国、あれは空想の世界。しかしここに来てしまったカノン様はもう空想の存在ではないのです。となればこの世界にとどまるか、エルフの国に帰るのか選択せねば。しかし、今はとどまるしかなく、それに……」
「それに?」
言いよどむドクターにカノンは問う。
「エルフの国と現実世界の道が一時的にでも構築されたということは、そこに新たなつながりが生まれてしまったということです。そして多分、そのつながりはあのタワーだけじゃないのです」
「どういうこと?」
「私が説明するわ」
母さんが口を挟む。
「私はシオン達を助けるため、エルフの国と現実世界の扉を開いた」
「あのイリュージョン小屋、それから因幡タワーもだっけ?」
「確定してるのはその二つね。でもこれはコントロールが難しくてね。恐らくもっと多くの場所で扉が開いているはずなの」
「つまり?」
「エルフの国には、あなた達を裏切ったダークエルフ達もいたのでしょう? 恐らく彼らもこの世界に来ているはずよ!」
「あ~、やっぱりそうです~。我々は追われているのです~」
そういうことか。
ならばこの世界で何事もなかったかのように家族として生活するにはまだ早いわけだ。
この世界に彼らが潜んでいる。
まだニュースにもなっていないし、ダークエルフは少数だからな。
隠れるのは容易なのかもしれない。
「じゃあ、今後の方針は」
「とりあえずダークエルフ達を見つけて、彼らが何をしようとしてるのか突き止めないとね!」
「そういうことだなカノン」
ダークエルフ達を放っておくことは出来ない。
平穏と安全な日常を取り戻すため、僕達は動き出した。




