40 『エルフとともに流されて』
カノンは帰ってきた。
エルフ達の思いが通じたのだろう。
「なるほど、そんなことがあったんだね。やっぱりエルフの国から出ちゃうと不便だね」
「ここではただの女の子だしな」
「おや? 女の子扱いしてくれるのかい?」
「ただ事実を述べただけだよ」
「そうかい、でもありがとね、お兄ちゃん」
カノンにお礼を言われて悪い気はしなかった。
「そういえばエルフ達はどこかな?」
「ああ、エルフならここに」
僕は小瓶を開けて中から緑色のキューブを取り出した。
「ああ、お兄ちゃんそれはっ!」
「え?」
軽率だった。
小瓶からキューブを出せばどうなるか予想ができたはずだった。
そう、キューブは砂粒となってこぼれ、そしてそこから無数のエルフ達がポコポコと現れ始めた。
「ああ、ちょっと! 入りきらないって!」
「お兄ちゃん、これはもう流れに任せるしかないよ」
エルフはどんどん出現する。
これはもうエルフの濁流だ。
部屋に入りきらないエルフが扉を押し開けて家中に流れていく。
流される、流される。
「あ~、流されるです~」
「これが人生という荒波です~?」
「エルフですけど~」
流されていく僕とカノン、そしてエルフ。
エルフ達は何だか楽しそうだな。
こっちは全然楽しくないけど。
「こういうときにドクターがいてくれたらな」
「お呼びですかシオン様」
「あ~、ドクター!」
いいタイミングでドクターに出会った。
ともに流されているけどね。
「こ、これってどうしたら良いの?」
「小瓶があれば収納できるです」
「小瓶かぁ」
もちろん無い。
この流れの中無くしてしまった。
「無しで何とかならないか?」
「では……」
「では?」
「心を無にしてひたすら流されるです」
「はい?」
「いつかは止まるです。みんな出てくれば~」
「それを待てと」
「待つです」
それしかないらしい。
僕達は流され続けた。
多分母さんも流されてるんだろうな。
エルフの流れが止まるまで、十分ほどかかった。
「止まったのは良いけれど、これは」
家に詰め込まれたエルフ達。
僕は彼らの上に乗せられていた。
「天井が近い」
僕は背中の柔らかい感触を感じつつ、どうしたものかと考え、目を閉じた。




