04 『エルフと一緒にピクニック』
「なんで父さんが神にぶん投げられるんだ?」
僕の父さんは僕が物心つく前に、事故で死んだと母さんから聞かされていた。
「さ~? 理由は分かりませんが、それがシオンのお父さんであることは間違いないです」
エルフはそう言った。
「なんでそう言い切れるんだ?」
「だって我々にはシオンのお父さんの血が混じっているのです。それを触媒にして召喚儀式を行ったのです。出てきたのがシオンだから、神がぶん投げた人間はシオンのお父さんだと思うのです」
「そうなのか」
分からない。
なぜ僕の父さんが選ばれた。
ランダムなのか、それとも理由があるのか。
そもそもその召喚儀式というのも信用できない。
文明が滅んで再構築中のこの世界で、なんでそんな儀式ができるんだ?
「なあエルフ」
「なんですシオン?」
「なんで召喚儀式の方法を知ってるんだ? エルフはそういうの得意なのか?」
するとエルフは少し震えつつ答えた。
「神に教えてもらったです」
「はい?」
「だから、神さまです」
こいつらの言うことは毎度突拍子もないな。
「どういうことなんだ」
「我々は神に挑もうとしたです。でも神は強いです。我々何にもできないです」
「むしろやられちゃうです」
「そしたら神が提案してきたです。復讐の的を、この国を滅ぼした人間に向けてみたらって」
「それでその人間の子孫を召喚する方法を教えてもらったです」
エルフ達はそう言うのだった。
まったく。困った神もいたものだ。
「でも掟に従うなら、僕を殺せないんだろ? どうすんの?」
「はて~、困ったです。どうしましょう?」
「ちなみにその掟を作っているのも神です~」
「何だって!?」
というとこはつまり、あれだ。
神が僕の容姿を知っていて、さらにそれをエルフ達にイケメンだと認識させるよう仕込んでいたのだとすれば、エルフ達が復讐する手段は初めから封印されていたということになる。
「なあエルフ、君達騙されてるよ」
「え~」
エルフ達はわなわなと震えだし、近くにいるエルフ達とごそごそ相談し始めた。
しかし、聞こえてくるのは悲観する声ばかりだった。
「あ~、ストップストップ。今のは無しだ。単なる仮説にすぎないから」
「震えるの止めていいですか?」
「そんなの聞かなくてもいいよ。というか何で震えるの?」
「我々はあんまり感情とかないです。なのでなんかそれっぽいものを感じ取ると震える仕組みになってるです」
「しすてむ、しすてむです~」
「何とも困ったシステムだね。ところでエルフ、僕は神に会いたい。いるんだろ?」
僕の近くにいるエルフが再度震えながら返答する。
「いるです。でも本当に会いに行くですか? 少々危険ですが」
「かまわないよ。僕は会って話さなくちゃいけない」
この復讐の根源を知るためにも、この世界のことを知るためにも、それが一番手っ取り早いだろうから。
「それではみなさん、シオンさんを神の所へ連れていくですよ。久しぶりのピクニックです~」
「わ~、ピクニック~」
「積極的歩行~!」
気づけば僕の後ろに緑色の大部隊が整列していた。
よく見ると各々色んな荷物を抱えているようだ。
「なあ、もしかして全員でいくのか?」
「ダメですか? シオンさん死んじゃうと我々困るです。だからみんなで守るです~」
「まあ、いいんだけどさ」
案内役のエルフの指す方向へ、僕は歩き出す。
こうして、僕とエルフの群体のピクニックが始まった。