38 『因幡タワーで回収作戦?』
財政困難とは言えずとも、それほど裕福でもないこの因幡市で、それなりに目立つ建物である因幡タワー。
電波塔としての役割と共に、ささやかながらも観光スポットとしての役割も担っている。
有名な建築家が設計したらしく、銀色の柱をベースとした構造はなかなかに近代的でありかっこいい。
塔の頂点にいる可愛いメタルなうさちゃんは、ちょっと浮いた印象だが、それでも市の象徴であることもあり市民からは愛されている。
そんな因幡タワーは、石動家から割と近い位置にあり、徒歩十五分ほどで到着する。
そんな道のりを、僕は全力で走り到着した。
「はぁ、はぁ……。母さんに言われて来たものの、実際目の当たりにするとすごい光景だな」
銀の柱をよじ登る緑の物体。
この世界にはいるはずのない種族。
エルフだ。
母さんの話によると、この世界とエルフの国を接続するのは結構無茶な方法らしく、接続の際に複数の接続部が生じてしまったらしい。
因幡タワーもその一つで、今回は電波以外のものを受信してしまったようだ。
なぜ彼らはよじ登るのか。
理由は不明だが、カノンを助けるためにも回収しなくてはならない。
「一匹ずつ捕まえるのか。ドクターの話だと千八十匹いるとか言ってたな。分散せずにまとまっているだけマシと思うか」
最適な方法が思いつかないので、とりあえず物理的に拾うことにする。
観光スポットなだけあって、内部は観覧できるようになっており、上の展望台にも立ち入ることができる。
一階は案内所併設のお土産売り場なのだが、ここもエルフ達で埋め尽くされていた。
「あ、イケメンさんです? イケメンさんですね!」
一匹のエルフが僕に気付くと、連鎖的に他のエルフ達も集まってきた。
「イケメンさん、イケメンさん、ここはどこです?」
僕をイケメンさんと呼ぶこのエルフは、まだ僕に出会っていない、かつ僕がシオンであると情報共有していないエルフなのだろう。
「やあ、エルフ。ここは僕達の世界だ。そして僕はシオンだよ」
「ここは……シオンの世界。シオン……情報リンクしました。シオン、そうですシオンです! それで神様どこです?」
どうやら情報の取得が完了したらしい。
「その神様がピンチなんだ。エルフ達の信仰心が必要で」
「我々も神様探して高いところに登ってたところです。ドクターが上にいるので会ってくるといいのです」
「ドクターもいるのか! 良かった、知恵を貸してもらおう」
僕は急いで上へと向かう。
本来なら展望台直通のエレベーターが使えるのだが、そこも常時エルフ達が占領しているようで、僕は諦めて階段をのぼることにした。
まあ、階段もエルフの行列になっていたが、僕がのぼることを知ると、連鎖的にスペースを開けてくれた。
因幡タワー展望台。
そこには肩車されてスコープを覗くドクターの姿があった。
「ドクター!」
「おや、これはシオン様。ご無事でしたか」
「僕はね。でもカノンが」
「力を失いつつあるのですね」
「うん、それに存在そのものもだ!」
「それで今カノン様は」
「見えないけど、多分家にいる。ここは僕達の世界だから」
さすがドクター、概ね事情は把握しているようだ。
「なるほど、我々を回収しに来たのですね」
「うん。でもこの数を回収するにはどうすればいいか」
僕が困っていると、ドクターはどこからか透明な小瓶を取り出し言った。
「あ~我々、我々聞こえますか~? 皆さん手を繋いで一列に並んでくださいです」
ドクターの指示に従い、エルフ達が一斉に手を繋ぎだす。
「ドクター一体何を?」
「シオン様、時間がありません。いいですか、緑の末端にこの小瓶を置きて、皆集まりし後にそれを抱え、神の地にてそれをかざす。さすれば神の復権は……」
「ドクター? 何を言って……」
何のことだかさっぱりだった。
ただ、説明を聞く間はなく、ドクターを先頭に手を繋いだエルフ達は、緑色の光る砂粒となってしまった。




