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36 『兄妹と共におやすみを』

 僕の母親、石動麗子は悪魔らしい。

 そんなことを急に言われても大変困るわけだが、ここまでの一連の流れから否定はできない。


「驚いたようね」

「当然だろう。もう何が何だか」

「嘘みたいだけど事実なのよ」

「じゃあ、この厄介な状況にも関わってるんだね。母さんは一体何を知って……」


 僕が説明を求めようとすると、隣から可愛らしいくしゃみが聞こえる。


「へくちっ!」


 くしゃみの主はカノンだった。

 そういえば家の中とはいえ、バスタオルに身を包んだだけの姿だったな。

 悪寒を感じたのだろう。


「あれれ、おかしいな~。僕は神だから風邪なんてひかないはずなんだけど」

「悪い兆候ね、カノン。今日はもう遅いし、話は明日にしましょう」


 母さんがそう言うので、僕とカノンは眠ることにした。

 聞きたいことは山ほどあるが、とりあえずは元の世界に帰ってこれたのだ。

 今はまず、睡魔に身を任せて眠りたい。



「で、どうしてカノンがここにいるんだ?」

「だめかな?」

「ここは僕の部屋なんだが」

「そのようだね」


 パジャマ姿に着替えたカノンが部屋をきょろきょろ見渡して言った。

 しかも着ているパジャマは僕のものだ。

 サイズはぴったりの様だが、何だか複雑な気持ちである。


「父さんの部屋が空いてるだろう? 廊下を出て一番奥の部屋、寝具もそろってるし」

「でもここがいいな」


「何故」

「何故って、双子がいつも一緒にいるのは常識でしょ? 今まで離れ離れだったわけだし」

「どこの常識だよ。この歳で、しかも兄妹でっていうのはどうかと思うぞ」


 そうだ、妹と一緒の部屋で寝るとか恥ずかしすぎる。

 そんな僕の様子を見て、カノンはある提案をしてきた。


「じゃあ、同じベッドで寝るのは勘弁してあげる。ね?」


 何が『ね?』だ。

 まさか、同じベッドで寝るつもりだったのかこいつは。

 やっぱり、何だ。

 神というのは、人間の遠く及ばない考えをするものなのか?


「予備の布団なら押し入れに入ってるけどさ。う~ん、仕方ない。僕が布団で寝るか……って」


 カノンは僕の配慮をまったく気にせず、押入れを開けて中の布団を確認していた。


「うん、良い布団だね」


 布団をぽふぽふと触るカノン。

 そしてカノンは押し入れの二段目によじ登ると中に納まって振り返る。


「それじゃ、おやすみなさい、お兄ちゃん!」


 笑顔でおやすみを告げると、カノンは押し入れの戸を閉めた。

 静まり返る室内。


「はぁ?」


 悲しいかな、あれが僕の妹なのだろう。

 見た目はそっくりだが、中身は結構アレだ。


 普通押し入れの中で寝るか?

 もしかして人間の世界に慣れてなくて、あんな行動をとったのか?

 それにしては堂々とした行動だったし。

 まあ、押し入れで寝てみたいという欲求は分からなくもないし、ちょっと面白そうではあるけどさ。


「変なやつ」


 僕はそうつぶやくと部屋の照明を消し、ベッドに潜る。

 そういえばエルフの国に召喚されてからどれくらいの時が経っているのか確認するの忘れたな。

 まあ、明日確認すればいいか。


 とにかく今は眠い。

 僕は目を瞑り、脱力すると夢の世界へと落ちていった。

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