35 『石動家の母は何者か』
目の前にいるのは間違いなく僕の母、石動麗子だ。
しかし、なぜ母さんがイリュージョニストなんかやっているのだろうか。
そもそも本当にこの人は母さんなのか?
疑念を取り払うべく、僕は本人に問う。
「本当に母さんなのか? それにここは元の世界で間違いないのかな? だったらどうやって母さんは……」
「落ち着きなさいシオン。戻ってきたばかりで困惑しているのは分かるけど、ここは元の世界で、私はあなたの母よ」
「それを証明する根拠は?」
「ないわ」
「ない?」
先ほど断言したにもかかわらず、その根拠はないという。
どういうことだ?
「勘違いしないでね、確信はあるわ。でも証明するのは難しいの。もしかしたらそっくりな世界が複数あることだって考えられるわけだからね」
そういえば母さんとこんなにじっくり話をする機会はあまりなかったな。
意外とそういう空想的な話が好きなのかな。
ただ自称母さんの口ぶりから考えると、異世界の存在を当たり前のように認識しているようにも思える。
いずれにせよ僕が求めている答えは、もっと単純なものだ。
なぜ僕の母親だと断言できるのか。
ただそれだけだ。
僕の根拠を求めるなどという問い方も悪かったのかもしれないな。
「そういうことか。確かにそれを言い出したら、自分の存在を証明することすら難しくなるからな。僕の質問が悪かった。じゃあ、確信している理由だけでも教えてよ」
「いいわよ。簡潔に言うと、エルフの国に飛ばされたシオンをこっちの世界に戻すために、二つの世界を繋げたのよ。直結しているわけだから、他の世界に迷い込む隙は無いはずよ」
なるほど、確かに。
ならば目の前の人物は母さんなのだろう。
そして、戻ってこれたのはそういう理由だったのか。
……って、さらっと言ったけどそんなこと可能なのか?
となるとますます母さんという存在が怪しくなってくる。
「あの~お母さん!」
僕と同様に疑問に思ったらしいカノン。
「何かしらカノン」
「一つ質問。二つの世界の接続、それが可能であるのなら、やっぱりお母さんは並みの人間ではないね。エルフの世界についても知ってるみたいだし、その様子だとお父さんの正体も知っているね?」
すると母さんは、それは周知の事実であるかの如く、淡々と答えた。
「ええ、もちろん。だって私、悪魔だもの」
『「え~~!!」』
僕とカノンは同時に驚き、ステレオ音声のように声をあげた。
驚くのも無理ないだろう?
だって、父親が神で母親が悪魔だぞ。
妹も神だし。
僕の家族は一体どうなってるんだ?




