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震えるエルフと復讐を  作者: 焼魚あまね
エルフの国編
3/41

03 『エルフの歴史』

「イケメンさん、イケメンさん!」

「はいはい」


 イケメンと呼ばれることに慣れたわけではないが、いちいち反論するのをやめた僕。

 そんな僕は、元の世界に帰る方法が分からないため、ここにとどまっている。


 他に選択肢がないのだから仕方がない。

 僕のために彼らが組み立てた木造の建物は、思いのほか居心地が良かった。

 そして僕はエルフ達と取引をした。

 元は彼らから持ちかけた話だ。


「イケメンさんは我々エルフが知らない考えを知っているのです。だから我々に教えて欲しいのです」


 彼らはそう言ったのだ。

 だから僕はこう返したんだ。


「僕を殺さないのであれば、暇つぶし程度に何か教えてもいいだろう。その代わりこの世界のことを教えてくれ」


 こうして、エルフの国での生活が始まった。



「なるほど、人間は個体を識別する名前があるのですね」

「そうだ。そして僕の名前は石動いするぎシオンだ」

「イスルギシオン。ではイスとお呼びしますね」


「やめろ。せめてシオンと呼んでくれ」

「シオン……分かったです」

「他のエルフにもそう呼ぶように伝えてくれ」

「それはなんとなく大丈夫です」


 説明役を買って出たエルフの話によると、彼らはなんとなく情報を共有しているらしい。

 個体差はゼロではないが、ほぼ同じのためそれを識別する手段を持たない。


 命の尊さを理解していないのはこのせいなのだろう。

 とにかく総じて適当である。


「エルフって、もっとこう聡明なイメージなんだけどな。実際はこんなもんなのかな?」


 そんな僕の質問にエルフが答える。


「我々もかつては知能の高い種族でした。エルフしかいないこの世界で、エルフだけの文明を繁栄させてきたのです」

「ところがどっこいです」


 急に近くにいた別のエルフが続けて話し出す。

 なるほど、情報を共有しているとこういうこともできるのか。

 少し感心しつつ僕は話の続きを聞く。


「エルフは調子に乗りすぎました。その権力を示すため、天まで届くエルフの塔を建築し始めたのです」

「エルフの塔」


 何やら聞いたことがあるような話である。

 となればその塔の結末も見えてくるというもの。


「はいです。ですがその塔が雲を突き抜けるほどの高さになったとき……」

「神の怒りに触れたと」

「いえ。そんなところで積み木遊びなんかしてたら邪魔になるですよ~っと、神に警告されたそうです」


 僕の知っている話よりゆるいな。


「それで神は適当な人間を鷲掴みにすると、塔目がけてぶん投げたのです」


 ああ、結局破壊衝動につながりはするのか。


「現時点でここに塔が見当たらないことを考えると、それによって塔は破壊されたんだね」

「はい、それはもう粉々だったとか。そしてその際に散らばった人間の血液が国中に充満し、エルフを弱体化させたのです」


 エルフ以外の種族がいない世界において、それだけ人間の血液は有害だったのだろう。


「我々はその血液に耐性を持つエルフの子孫なのです」

「我々若干人間かもです」


 弱体化はしたが生き残った結果が今のこの状況なわけだ。


「そんな大変な歴史があったんだね。となると復讐の標的は神になるんじゃないのかな? なんで僕なの?」


 自分が標的になっている理由なんて普通なら聞けないが、掟で守られていると知っていれば恐怖心はない。

 しかし、エルフの口から出た言葉は僕を再び混乱させた。


「だって神がぶん投げた人間は、シオンのお父さんですから」

「シオンは赤い雨の子孫です~、ぶるぶる」


 いつかのように僕を囲み、騒ぎ震えるエルフ達。

 だが一番震えているのは僕自身だった。


「父さんは事故で死んだはずなのに、どうして!」


 また新たな謎が浮上する。

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