29 『エルフの国の神の性別』
原始的ながらも、この国では相当立派なシャワールームで僕はシャワーを浴び始める。
「ううぅ」
やっぱりちょっと冷たい。
ドクターなら温水にする機械も作れんじゃないかな。
今度提案してみよう。
しかし、シャワーは良いものだ。
身体の汚れだけではなく、心も綺麗になった気がする。
そういえば浴槽も奥にあるんだよな。
そっちも気になるところだ。
ひと通り綺麗になったところで、僕はバルブを閉めた。
そこである問題に気が付く。
タオルが無いのだ。
僕は仕切りの布を少し開けて、カノンに問いかけた。
「カノン、タオルはどこに……」
しかし、タイミングが悪かった。
どうやらカノンは浴槽に浸かるため着替えていたようだ。
そこには全裸のカノンがいた。
「あ、あの……カノンさん?」
「あ……あああ、あ~!」
口をぽかんと開けてよく分からない声を発すると、カノンは一目散に浴槽へと向かい、そして飛び込んだ。
僕は床に落ちているタオルを腰に巻くと、ゆっくりと浴槽に近づいた。
カノンは頭まで浴槽に浸かり、沈んでいた。
「カノン?」
「…………」
静かな浴槽。
しかししばらく待っていると、ぶくぶくと音がし始める。
「ぷはぁ~!」
耐えきれなくなったのか、カノンが湯船から顔だけ出した。
顔を真っ赤にしたカノンが言う。
「お兄ちゃん、見たでしょ!」
「見たって、何を」
「僕の裸!」
「いや、あの状況で見てない方がおかしいというか」
「やっぱり~! お兄ちゃんのエッチ」
「それはその……否定はしないけど」
確かに僕はカノンの裸を見てしまった。
それは問題だろう。
エッチと言われても仕方ない。
しかし、僕は今さっき生まれた疑問の方が気になっていた。
頬を膨らませて睨むカノンに、僕は意を決して言った。
「カノンって、もしかして女の子?」
「そ~ですけど~!」
ぶっきらぼうに答えるカノン。
「えっと、でも自分のこと僕って言ってるし、兄弟だって言うからてっきり」
「女の子が僕って言ったらダメ? それに僕、自分が弟だなんて一言も言ってないよ?」
「じゃあ、妹」
「そうだよ。お兄ちゃんは妹の裸を見た変態なんだよ!」
「ぐはぁ」
僕は大ダメージをくらった。
妹だと認識した直後に変態認定とはなかなかきついな。
「ん? だったらファーストキスも……」
「!?」
「カノン?」
顔を更に真っ赤にしてカノンが叫ぶ。
「ああ、それは……忘れて。ええい! 忘れろぉ~!」
そしてまた潜ってしまった。
「ごめん、カノン。着替えてタオル持ってくるから。待ってて」
僕は気まずい空間から逃げるように急いで身体を拭き、着替えて浴室を後にした。
さて、タオルはどこだろうか。
ドクターに聞けばわかるかな。




