26 『エルフの活躍』
ダークエルフを倒す必要はない。
こうして奴らの放った矢を打ち払い続けていれば、勝敗が決まらずとも終わりは来る。
僕の疲労が学校の体育祭を終えた後と同じくらいに達したころ、それはやってきた。
二十人ほどのダークエルフ達から放たれていた矢の攻撃がピタッと止んだんだ。
奴らは矢による攻撃手段を失い、腰に佩いていた短剣を構えた。
しかし、攻撃してくる様子はない。
当然だろう。
個々の戦闘力は高くとも、数が圧倒的に違う。
さらにこちらには神であるカノンもいるんだから。
僕もエルフ製の短剣を構えつつ問う。
「さあ、どうする? 矢はもう無いぞ、ダークエルフ。この状況が分かっていないわけじゃないんだろ? それとも大量の武器を消費しリスクを負ってでも僕らを襲うのか?」
「くっ、小賢しい真似を。しかし……」
悩むダークエルフに別のダークエルフが言う。
「これ以上の作戦遂行は危険です」
「しかし、プリメーラ様になんと報告する?」
「正直にご報告するしかないでしょう。今危惧すべきは我々が戦力を失うことです」
彼らがどうすべきか、すでに答えは出ている。
しかし、そこに追い打ちをかけるかの如くカノンがにこにこしながら言う。
「随分と追いつめられてるみたいじゃないか。僕は別に構わないよ。君達が引き続き戦闘を行うとしてもね。ただし、容赦はしないけどね」
正直どっちが悪役なんだ。
カノンも人が悪い。
まあ人じゃなくて神だけど。
「仕方あるまい、今回は引かせてもらう。ただ覚えておけ、石動シオン。我々はこのようなちっぽけな世界にずっと閉じこもっているつもりはないからな!」
それだけ言い放つとダークエルフは撤退していった。
それを見てエルフ達が騒がしくなる。
「やったです~。黒いやつらを追い払ったです~!」
「わーい、シオンすごいです~!」
エルフ達が僕を称賛する。
しかし、今回頑張ったのは僕だけじゃない。
僕はエルフの頭を撫でつつ言った。
「君達のおかげだよ、エルフ」
「そうなのです? 我々は可愛いシオンに篭絡してもらっただけです~」
「あはは、面白いこと言うなぁ。ま、エルフらしいけどさ」
ファンタジー小説を読んでいたころの僕が想像していたエルフとは大きく異なるけど、今ではそう思う。
「上出来だよ、お姉ちゃん!」
カノンが僕に抱きついてくる。
「カノン苦しいよ~」
「ごめんごめん、とりあえず神殿の研究室に戻ろうか。今後のこととか考えないとね」
「そうだな」
戦闘を終え、ダークエルフ達を追い払った僕達は神殿へと戻るのだった。
一難は去ったけど、また一難が来ないとも限らないからなぁ。
気は抜けないね。




