25 『ダークエルフVSエルフとイケメン』
偽装神格マジカルシオンに変身した僕。
その呼称すら恥ずかしいが、今はそうも言ってられない。
とにかく現状の把握。
まず目の前にはエルフの大群が押し寄せていている。
戦闘を放棄した?
僕が変身したのが理由だろうが、戦闘を止めてまで僕に群がるのはなぜなんだろうか。
「ねえカノン」
「何、お姉ちゃん」
お姉ちゃん。
お兄ちゃんと呼ばれることすらないと思っていたのに、まさかお姉ちゃんと呼ばれる日が来るとは。
「なんでエルフ達は群がってくるんだ」
「攻撃に必要だからね」
「エルフが?」
「そう。とりあえず変身は終わったからマジカルなステッキをしまおうか。腰の後ろについてるリボンに近づけたら格納できるよ」
僕は言われた通りにしてみる。
するとマジカルなステッキはパッと消えてしまった。
「すごいな、まるで魔法みたいだ」
「魔女っ娘だしね。そしたら両手が自由になるよね」
「そうだな」
「あとはエルフ達を掴んで戦うだけだよ」
カノンはそう言った。
「そんな物理的な戦い方をするのか?」
「百聞は一見に如かず! やってみたらわかるさ!」
それもそうだ。
この世界に来てからというもの、すんなり理解できたものなんて数少ない。
僕は群がるエルフ達の中から一人掴んでみた。
するとギュイーンという音と共にエルフは柔らかい緑色のボールのようになったかと思うと、短剣に変化した。
「触れたエルフを武器にする。それがその偽装神格の能力です。エルフは全部で千八十匹。使い放題です~」
ドクターエルフが解説する。
「これで戦えというのか」
「出来る? お姉ちゃん」
「上手くできる保証はないよ。でも、やるっきゃないだろ?」
「そう来なくっちゃ!」
僕は大勢のエルフと共にダークエルフ達の元へと突っ込んでいった。
エルフを武器として扱うことはそんなに難しいことではなかった。
ただ何度かダークエルフの放った矢をはじき返すと、ふにゃふにゃになって元のエルフに戻ってしまう。
「疲れたです~」
そしてその場で横になってしまう。
耐久性が無いのなら数で勝負ということだ。
「そりゃ! えいっ! とりゃ~!」
僕はひたすら矢を打ち返し、次々にエルフを消費していく。
死んでいるわけではないから僕も気が少し楽だ。
「石動シオン……ちゃん?」
「ちゃんは余計だよクノ」
「そうか。ところで矢を打ち返しているだけじゃ勝てないと思うのだが」
クノの言う通りだ。
しかし、僕にダークエルフ達を切りつけるなんてことはできない。
だからこうして耐えてるんだ。
「うん、分かってるよ。でも僕に考えがあるんだ。ほら、数では勝ってるからね」
「お前がそう言うなら構わないが。私は引き続き場を攪乱させればいいんだな」
「うん、お願い!」
「承知した」
そう言うとクノはまた戦場を物凄い速さで駆け抜けていった。
さて、もう少し頑張るとしよう。
僕はダークエルフ達の住処を見て、それから矢を射る姿を見て確信していた。
彼らの矢は魔法によって生み出される物ではなく有限だと。
「だから倒す必要なんてないんだ!」




