22 『エルフの復活』
目の前に現れたエルフは、よく知る大きさのエルフだった。
しかし、ドクターというだけあって眼鏡に白衣というそれっぽい格好をしていた。
「ドクターエルフ?」
「そうさ、ドクター。博士なんだ!」
「それは分かるんだけど、どうしてカノンの所にいるんだ?」
「彼はあのエルフの塔の設計者の子孫なんだ。エルフの研究が得意でね、役に立つと思ってそばに置いているんだ」
エルフは個性が薄い生き物という印象だったが、どうやら稀に特徴的な存在もいるようだ。
「それでこのドクターはどんな研究をしているんだ?」
「いい質問だね。そこがエルフを救う手段に繋がるんだ。ね、ドクター?」
カノンの問いかけにドクターが答える。
「私はエルフの生命について研究してるです。そしてその生命を操作する方法を生み出したのです」
「生命を操作?」
それこそ神の領域のような気がするが、神を補佐するドクターともなればおかしくもないのかな?
「イケメンさんはエルフが死んだらどうなるかご存知です?」
「そのイケメンさんっての止めてもらえるかな。僕はシオン、そう呼んでくれ」
「分かりましたです」
「それで死んでしまったエルフについてだけど、精神情報が抜けて新たなエルフとして生まれ変わるんだっけ? エルフ達は勝手に増えるって言ってたけど」
「確かにエルフは死んでもなお情報を共有し生まれ変わります。でもそれは自然にそうなっているわけではないです」
自然ではないということは人為的にエルフは生まれ変わっているということか。
「もしかしてドクターが何かしているの?」
「はいです。カノン様の力も借りて復活させてるです」
「まるで命のリサイクルだな」
つい口を出た言葉にカノンが反応する。
「まったくもってその通りだよお兄ちゃん! さあ、百聞は一見に如かず。研究室で実際に見てもらうとしよう」
カノンは意気揚々と僕とクノを地下の研究室へと案内した。
「へぇ。この国にこんなところがあったんだね」
いかにも研究室といった空間が広がっている。
謎の液体が入ったフラスコや金属機器。
そして中央には部屋の二割程度を占めるほどの多いな円柱水槽があった。
中は緑色の溶液で満たされている。
「ここでエルフをねぇ」
「では稼働させるです」
ドクターはそう言って水槽横のレバーを倒した。
ガシャリと音を立てて稼働する機械。
水槽が微妙に振動し始める。
「この水槽の中にあるのが死んだエルフの魂情報です。言わば疑似的な冥界です~」
振動はさらに激しくなる。
そして水槽に繋がっているパイプから丸い緑の物体が排出された。
それはまるでフェルト生地のような質感をしている。
「これは?」
「これがエルフの魂情報を微弱な振動を加えて固めたものだよ。ほら、もうすぐ……」
その塊はぐにょぐにょと蠢くと、見知った姿を形成し、そして生命体となった。
「ここどこです?」
きょろきょろとする緑の生命体。
まさしくエルフだった。
その後も彼らは続々と排出されベルトコンベアで適当に流れていく。
「どう、お兄ちゃん。これが魂のリサイクル。エルフの生命が循環する理由だよ」
この状況が倫理的にセーフなのかとか、何のためにそんなことをしているのかなんていうのは些細なことだった。
今はただ、再び彼らに会えたことに嬉しいと思った。
僕は一人のエルフを捕まえて尋ねる。
「なあエルフ。僕のことを覚えてるか?」
エルフは僕を見上げて言った。
「イケメンさんです? ん? う~ん、シオンです?」
「ああそうだ、シオンだよ」
覚えていてくれた。
再会して初めて気づいた。
僕は思っていた以上にエルフに愛着を持ってたんだなと。




