21 『ドクターエルフ』
「ごめん、言っている意味が分からない」
「言葉通りの意味なんだけどなぁ」
カノンは言った。
この世界を救い、偉い神をやっつける。
偉い神というのは、僕達を離れ離れにし、父さんに制裁を加えた神のことだろうか。
「それって復讐するってこと?」
「近いけど違うかも。純粋に奪われたものを取り返したいだけ。そんでもってこの国をもっと面白くしたいんだ」
「それは大層な目的だな」
心にもないことを言ってみる。
「本当にそう思ってる?」
見透かされてるか。
「正直、具体的に何をするのか分からないから何とも言えないな」
「だと思った。えっとね、この一連の流れってちょっと謎なんだよね。制裁を加えること自体は仕方ないけど、存在を消滅……つまりお父さんを殺してしまう必要ってあったのかなって。絶対偉い神が悪だくみしてると思うんだ」
「その根拠は?」
「ダークエルフの連中。この国って本来お父さんの楽しい妄想だから、あんな殺戮する必要は無いんだよね。なのに彼らは殺戮を行う」
「それはカノンが命令してるんだろ? バグ処理とか言って」
「ううん。ここの管理を引き継いでからそんな命令したことないよ」
「そんなバカな。我々ダークエルフは神から命令を受けているぞ」
「直接確認した?」
「いや、長であるプリメーラ様経由だが」
だとすると、別の存在が命令を出している可能性が高いな。
「偉い神様がダークエルフを裏で操作し、エルフを殺そうとしている?」
「たぶんね。神格が低い僕にはそれを察知するほどの力は無いけど。僕の管理外で何かが狂い始めてるんだ。だからお兄ちゃんを呼んだんだ。この世界を実在する人間に認識させ、非実在性を下げる。そうすればきっと僕の神格も上がるからね」
妄想世界の神より、実在世界の神か。
巻き込まれた以上僕も協力するしかない。
無関係どころか家族に関わることだし。
「分かった、僕も協力するよ。それで手始めに何をする?」
「ありがとう。そうだね、まずは暴走しているダークエルフを倒す。そのためにはエルフ達の力が必要だ」
兵がいなければ戦えない。
しかし、エルフ達はみんな殺されてしまった。
自然に復活するとか聞いてるけど、どうなんだろう。
「エルフ達は大部分やられたけど、大丈夫なのか?」
「それならドクターが何とかしてくれるよ」
「ドクター?」
この国に博士がいるのか?
するとカノンが走り出す。
神殿の奥にある下り階段の手すりにつかまって下を覗くと、叫んだ。
「ドクター! 起きてる~?」
しばらくして返答があった。
「カノン様。ちょっと待ってくださいです~」
博士のイメージとは程遠い可愛らしい声が聞こえた。
「この声、聞いたことがあるぞ」
カチャカチャとした物音と、小さい足音がした後、ドクターは現れた。
「お呼びですか、カノン様。あっ! こっちのイケメンさんもいらしてたのですか」
そこにいたのは紛れもなく小さいエルフだった。
「初めましてです。私がドクターエルフです」
僕は少し安心した。
生きてるじゃないか。
ん? こいつ、眼鏡をかけている!
しかも白衣だ!




