20 『ダークエルフはイケメンBL好き』
僕とおでこをくっつけたカノンは言う。
「忘れたの? 僕達のお父さんはこの国で死んだ。そしたらお兄ちゃんの世界ではどうなった?」
そうだった。
この国で死んだ父さんは、僕の元居た世界でも死んだんだ。
「ごめん、勘違いしてた」
「それともう一つ。自分の命を捨てるようなこと言わないでよ。お兄ちゃんはこの国のエルフが死んでいくことに疑問を持ったからここに来たんでしょ? 見失ったらだめだよ。それにお兄ちゃんが死んじゃうのは、僕嫌だよ?」
「ごめん」
「そんなお兄ちゃんには、お仕置きしちゃうぞ!」
お仕置き?
嫌な予感がしたが、回避する余裕はなかった。
カノンは更に顔を近づけると、そのまま……。
ちゅっ!
「……!?」
「えへへ、チューしちゃうぞ!」
しちゃうぞ! じゃないよ。
してから言うなよ!
え? 何?
なんでそうなるの?
頭がぐるぐるする。
「ふふ、お兄ちゃん顔まっか~」
「か、かかか、カノン! 何するんだよ!」
「ごめんよ、お兄ちゃん。つい愛情がとどめなく溢れちゃったから」
「なんだよその理由。僕はそんな趣味無いんだからな」
まったく、困った弟だ。
僕は必死に否定したが、カノンの唇は思いのほか柔らかかったことにドキドキもした自分に少し困惑した。
僕から一歩距離をとり、にこにこしながら僕の顔を覗き込むカノン。
本当に僕そっくりだ。
でもよく見るとまつ毛長いし、肌もすべすべだし、髪も僕よりサラサラだ。
って、何を考えているんだ。
カノンはただの弟だ。
そうこうしていると、ずっと黙っていたクノが口を開いた。
気づくとクノはすぐ横にいたんだ。
「これは良いものだ。オス同士での接吻……悪くない」
ええ~。
このダークエルフ、何かに目覚めちゃったよ。
「クノ?」
「我々の国には女であるダークエルフと、性別不明のエルフしか居なかったからな。なるほど、人間だとこういうのもあるのか。興味深いな、石動シオン」
「言っとくけど、人間の世界でもイレギュラーだからね?」
「むしろそれがいい」
クノ……。
硬派で真面目なイメージだったのに、意外と変態予備軍だったのかな。
とんでもない性癖に気付かせてしまった。
すべてはカノンがいけないんだからな。
「えっと、変な方向に話が移っちゃったけどそういうこと。お兄ちゃんがここで死ぬと、元の世界に戻れないし、元の世界でも死んじゃうんだ」
「カノン、それを知ったうえで何でここに僕を召喚したんだ?」
「いい質問だね」
カノンは天を指さして答える。
「神格を完全に取り戻して、世界を救うんだ! そして偉い神様をやっつける!」
「はい?」
このブラザー、また変なこと言い出したぞ。




