17 『非実在なエルフの国』
「ご馳走様でした」
「お粗末様、といいつつ僕も我慢できなくて一緒に食べたけどね」
空になった木製の器。
うんまい亭のとんこつ味ラーメン。
味は間違いなく食べなれたものだった。
相変わらず安定のうまさだ。
体力だけでなく、精神的にもかなり回復した気がする。
「クノは食べなかったね」
「神から食事を受けるなど恐れ多い。それに見慣れぬ食べ物に不安が無いわけでもない。それは本当にうまいのか?」
「ああ、美味しいよ」
「ふぅん」
クノは疑っている様子だった。
まあ、未知の食べ物となるとその反応は自然なのかもしれない。
「さて、本題といこう。ここには遊びに来たってわけではないんだろう?」
そうだ。
一緒に食事をしたりして、しばし和やかな時間を過ごしたが、目的は別にある。
「カノン、君は神なんだよな。だったら教えて欲しい。どうしてこんな国を作ったんだ。どうしてこんなにもダークエルフ達は無駄な殺戮を行うんだ?」
カノンは答える。
「それはね、僕が弱いからなんだ」
「弱い?」
「そっ! 人間であるシオン君は神と聞いて、どんな想像をする? 全知全能、万物の根源? とにかく、完璧な存在を思い浮かべるだろうね」
「ああ」
「でも神ってね、思ったほどみんながみんな万能ってわけでもないんだ。いろんな神がいるし。それと僕はその中でもイレギュラーでね」
イレギュラーな神?
「それでもカノンがここの神だというなら、この世界を創ったのはカノンなんだろ?」
「そこなんだけど、ここは世界というには不安定なところでね。僕が管理してるのは厳密には国というべきかな。ちなみにこの国を作ったのは先代の神でね、僕は仕方なく引き継いだにすぎないんだ」
この世界が不安定?
先代の神?
「ふふ、いまいち分からないって顔してるね」
「その通りだ」
「世界って何だと思う? 人間にとっては、地球とか宇宙とか? でもそれって規模は関係ないと思うんだ。科学の発展に伴っていくらでも変化するよね。要は認識の問題なんだ。そこにあるという確証があれば、それは世界といっていいだろう」
「そうかもしれないな」
そう相槌を打って、僕は考える。
ならばここが不安定な世界である理由とは何だろう。
ここにはエルフ達が住み、文明があり、立派に世界な気もするんだが。
「ここはね、妄想の世界なんだ。非実在の世界。それはもう世界ではないよね」
実在しない妄想の世界?
存在しないのならなぜ僕は認識できている?
この世界の真実を聞いても、僕の頭の中はさらにごちゃごちゃするだけだった。




