16 『エルフの国の神様』
「やあ、目が覚めたかい? お腹空いているだろう?」
眠ってしまっていた僕は、気づくと石造りの神殿の中にいた。
そして僕そっくりな人物が僕を覗き込む。
「あ、僕だ」
ふと出てきた言葉に、目の前の人物が苦笑する。
「ふふ、まだ寝ぼけてるのかな?」
「石動シオン。ここは神の住居、神殿だ」
ああ、いつの間にか着いていたのか。
「すまないクノ。寝てしまってたようだな」
起き上がろうとする僕。
しかし、それは僕のそっくりさん。
すなわち神によって止められた。
「おっと、無理に動くんじゃないよ。君は眠ってたんじゃなくて、気絶してたんだから」
気絶?
「知らなかったんだ、石動シオン。人間は空腹で弱るなんて」
「この世界に来てから何も口にしていなかったのだろう?」
「ああ」
「この国のエルフ達は食事をほとんど必要としないからな」
そういえば、色々ありすぎて食事のことなんて忘れてたな。
そりゃ気絶してもおかしくない。
「ちょうど湯を沸かしていたんだ。何か作ろう」
そう言うと神は僕の頭をそっと床に下ろして立ち上がった。
そこでやっと気づく。
膝枕されてたんだな。
自分そっくりな人に膝枕されるというのはなんとも不思議な感覚だ。
「石動シオン、私が代わりに膝枕をしようか?」
「ええ! クノが? その申し出は嬉しいけど、その……はずかしいし、この床冷たくて気持ちいいからこのままでいいよ」
「そうか」
クノはちょっと残念そうだった。
「さてと~、湯を沸かしたのは良いけど、豪華な食事とはいきそうにないなぁ」
「そんな気を使わなくてもいいよ、神様」
「ふふ、神様だって。カノンでいいよ。僕はカノン、そう呼んで?」
「分かったよ、カノン」
「よろしい。シオン君、ラーメンは好き?」
「好きだけど」
「良かった。じゃあ、とんこつラーメンにしよう。インスタントだけどね」
そう言って、カノンはそのパッケージを見せてきた。
この世界にインスタントラーメン?
今まで見てきた文明の発達ぶりからは想像つかないが。
しかも、よく見るとそのパッケージは見たことあるものだった。
「うんまい亭のとんこつ味!?」
「知ってるの? これ美味しいよね~」
知ってるも何も、これは僕の元居た世界の製品なんだけど。
「時々通販で買ってるんだけど、飽きないんだよね」
通販。
神は異世界の品物を取り寄せできるということなのか。
ぎゅるるる……。
しかし、そんな疑問は食欲によってかき消される。
香しいスープの匂いが神殿を満たす。
「ふふ、よほどお腹空いてるんだね。もう少し待ってね、茹で加減が重要なんだ」
そう言ってカノンは鼻歌を歌いながら鍋を見つめていた。




