15 『イケメンはダークエルフと逃げる』
ダークエルフ達は追ってこなかったのか。
それともクノが上手くまいたのか。
それはただ背負われているだけの僕には分からない。
クノの軽快な走りは背中越しに心地良い振動を僕に与え、緊急時でありながらもなぜか安心する。
「クノ、重くない?」
「問題ない。私は今までもっと重いものを運んだことがあるからな」
「さすがだね。ありがとう」
「なぜ礼を言う? 我々ダークエルフは、エルフに対しあんなことを……」
クノは怒りと悲しみを込めた声で話す。
「クノのせいじゃないよ」
「いや、私も無関係ではない。いままでエルフを殺したことが無いわけでもないのだ。ただ、今回のように無抵抗なエルフを殺めることはなかっただけのこと」
今回の件はイレギュラーなのだろう。
しかし、そもそも殺めるという行為自体が、僕からしたら等しく悪だ。
それをせざるを得ないこの国のシステムは、根本的に何かおかしい気がした。
「それにしても、どうしてクノは仲間外れにされたんだろう?」
「確証はないが、恐らく石動シオン。お前に近づきすぎたからだろう」
「僕に?」
「お前はエルフと仲がいいからな。反逆行為とみなされたのだろう」
「でもそれは友好関係を結んで……」
いや?
違うのか?
神の手前、そのように振る舞っていただけか。
本当は敵対したままだったんだ。
「石動シオン。私は分からなくなってきた。異なるものを排除すれば、安定と平和が訪れると思っていた。我々がしてきたことは正しいのだと。しかし、生み出されるのは復讐の輪廻だ」
「そうだな、クノ。だからこそ、疑うべきはこの世界を……この国を作った神だ。神に聞けば何かわかるだろう」
「ああ、そうだな」
神。
この国を掟で縛り支配するもの。
超常的な身体能力を持ち、なぜか僕とそっくりな存在。
問いただしたいことは山ほどある。
もしかしたら、元の世界に帰る方法も分かるかもしれないしな。
僕は神との対面を心待ちにしつつ、クノの肩に頭を預けた。
「石動シオン? なんだ、寝てしまったか」
クノに呼ばれた気がしたが、急に眠くなる。
色々あって疲れたからな。
僕の意識は途切れ途切れになり、そして眠りについた。




