14 『反逆のダークエルフ』
プリメーラは言った。
神の命令で仕方なくエルフを殺しているのだと。
それがこの国の仕組みなのだと。
しかし、この惨状を目の当たりにしてそれを信じることができるだろうか。
山積みになったエルフの死体。
それを囲うダークエルフ達の表情は松明に照らされている。
そしてみんな、嬉々とした表情だ。
「せっかく大勢のエルフを招いたのです。こんなチャンスを逃す手はありません」
「下等なエルフは全て始末するに限りますわ」
何がダークエルフだ。
何が高知能で聡明だ。
彼らは悪で、エルフよりも命の重さを理解していない。
「何でだ! こんなこと、許されていいはずない! 本当にプリメーラ様はこのような命令を出したのですか?」
クノの叫びに一人のダークエルフが答える。
「ええ、もちろん。エルフは死ぬたびに生まれ、稀にダークエルフとなる。殺せば殺しただけ、我々の勢力は増すのです。そのためなら、エルフの命など何とも思いませんわ」
「お前ら……」
「残念だったわね、イケメンさん。でも安心して。あいつらはまた生まれてくるのですから」
何を言ってやがる。
そうじゃない。
殺められていい命なんて無いのだと、なぜ分からない。
この怒りは彼らに届かないだろうが、だからといって抑えられるものでもなかった。
「誇り高きダークエルフが、何ということだ。それがプリメーラ様意志だというのなら、私はそれに背こう」
「クノ、愚かな。隣のイケメンにそそのかされでもしたのですか?」
ダークエルフ達が笑う。
「いいえ、これは私の意思です」
「ほう、では分かっているのでしょうね。このままでは同族とはいえあなたも死にますよ」
構えられた弓がこちらを狙う。
しかし、怯えることなくクノは言う。
「覚悟はできています。この状況であなた達に勝てないことも。だからこそ、ここは……逃げます!」
緊迫した状況で、僕は頭を悩ませることしかできなかったが。
クノは違った。
僕を背中に背負うと、一目散で走り出した。
「うわぁ! クノ?」
「乱暴な扱い失礼する。しかし、ここは危険だ。石動シオン」
さすが隠密担当。
細い体からは想像できないほどの力で、軽々と僕を運ぶ。
「どこに行くつもりなんだ?」
「とりあえず神の元へ向かう。しっかり掴まっていてくれ」
「分かった」
一体この国はどうなっているんだ?
元はといえば同じ種族であるはずなのに、こんなことになるなんて。
そんなことを思ったが、僕はすぐに考えを改めた。
ああ、そうだ。
僕が元居た世界だってそうだったじゃないか。
世界はいつだって争いで溢れていた。




