12 『エルフを殺す理由』
なぜエルフを殺すのか。
その問いにプリメーラが答える。
「あの境界を越えてきたのじゃ。その疑問が出てくるのは当然じゃな」
「エルフはともかく、あなた方ダークエルフは知能も高く聡明なはずです。エルフ達が弱いとはいえ、その行動は疑問視せざるを得ない」
「ではまず、本質的なところから説明しよう。君はエルフを生命体としてどう見る」
僕はプリメーラの質問の意味がよく分からなかった。
エルフに対する見方がどうあれ、生命を奪う行為が肯定されることなど無いのだから。
「単純にエルフという種族と認識しています。能力は全盛期より著しく下がっているようですが」
「そう、能力は低い。しかし情報共有の能力を発現させた。それゆえに生命体でありながらも、感情というものが機械的な信号のようになっている」
「それは見ていて思います」
「彼らはね、いわばプログラムなんだよ」
「プログラム?」
「そう。彼らだけじゃない、彼らから一定の割合で生まれてくる我々ダークエルフも例外ではない」
そういえばそうだった。
ダークエルフも元はエルフから生じた希少種だ。
「生命としての性質を持ちながらも、その実はプログラムに近いと」
「この国は神が作った。神によって生み出されたプログラムと解釈しても差し支えなかろう?」
「それだとあなた方ダークエルフも、所詮は神の手駒。それでもいいと考えているのですか?」
「良いもなにも、そういうふうになっている以上、我々は我々の役割を演じる他ないのじゃ」
それは何だか悲しい気がした。
ということはエルフを殺すことも、神による命令の一つということなのだろうか。
「では君の質問に戻ろう。神のプログラムというのも完璧ではないのじゃ。我々のような高位の存在を生み出すこともあれば、バグを生み出すこともある。我々が射抜いているのはね、そのバグなんだ」
「殺されたエルフがバグ?」
「正常なエルフなら、我々の住処に近づこうとはしない。しかし一定数近づいてくるものがいるのじゃ」
「だから殺すと?」
「不満そうじゃな。エルフと仲が良さそうじゃし、仕方あるまい。処理されたバグは肉体を残し精神情報のみが浄化され再び新たなエルフへと生まれ変わる。意味もなく殺されているわけではないのじゃが」
生まれ変わる?
だからエルフは勝手に増えるのか。
「しかし、聞けば聞くほどこの国は神に管理され過ぎているように思いますね」
「事実そうなっておる。しかし、君が来たということは変革の時なのかもしれんな」
「僕にその力があると?」
「確証はない。しかし、神が君を呼んだのは事実。何か意味があるのじゃろう」
そうだ、召喚儀式ももとはといえば神の仕業だ。
なぜこんな国を作ったのか。
なぜ僕を呼んだのか。
すべては神だけが知っている。
「ありがとうございます、プリメーラ。少しですが、この国のことを知ることができた」
「それは良かったのじゃ」
「最後に一ついいですか」
「なんじゃ?」
「プリメーラはプログラムやバグという言葉を使ったけど、この国にそれは存在しないはず。その言葉は神から教えてもらったものですね」
「いかにも。コンピュータの話は実に興味深いものじゃった」
つまりそれは、ダークエルフが神と直接話ができることを意味している。
居場所も知っているはずなんだ。
「お願いします、プリメーラ。僕を神の元まで連れて行ってくれませんか?」
するとプリメーラは笑顔で即答した。
「もとよりそのつもりじゃ!」
さあ、神に会いに行くぞ。




