11 『ダークエルフの長』
なぜか僕達は走っていた。
それもかなりの全速力で。
「あの……クノ。何でそんなに急ぐのかな?」
「長が待っておられるのだ。急いで当然だろう」
確かにそうだ。
僕は客人ってわけでもないんだしな。
ただ、速すぎる。
「そのおかっぱ銀髪似合ってるね」
「そ、そうか。みんな長髪が多いんだが、私は隠密だからな。動きやすい短髪にしているんだ」
「そうなんだ」
やっぱり隠密部隊だった。
「このクノという名も、元は伝説の隠密部隊、ニンジャという組織からとったものらしい」
「え、忍者?」
ということはクノってくノ一のクノなのか。
なんというか、世界観が崩壊していくな。
「石動シオン、もうすぐ着くぞ」
クノの言葉を聞き、前を見る僕。
そこには横長の、日本家屋のような建物があった。
たどり着くと中へと案内され、長い廊下を歩き、大きな戸の前に立つ。
「プリメーラ様、石動シオンを連れてまいりました」
「おお、クノか。ご苦労だった。よいぞ、こちらへこいこい!」
少女のような声で呼ばれると、クノと僕は中へと入った。
中は広いお座敷のようだった。
畳ではなかったが、和を感じる内装で、ファンタジー世界らしさは少々薄い。
そして部屋の最奥に長は座っていた。
「君が石動シオンだね。聞いていた通り、神にそっくりだ」
他のダークエルフと同じように銀髪で、身長はエルフよりは高く、クノよりはかなり低い。
そんな少女のようなダークエルフの長は、とても長い髪をしていた。
自分の身長よりも長いのではないだろうか。
ただ、それはとてもきれいな髪だった。
「初めましてプリメーラ様。あなたがダークエルフの長なんですね」
「そうだぞ、シオン。あと私のことはプリメーラと呼んで良いぞ」
「プリメーラ様、そのようなことを……」
クノが反論する。
「どうしたクノ、いいではないか。クノが反論するなんて珍しいのう。そういえば今回は麻酔を使わなかったんだな」
「麻酔?」
「そうじゃ。クノはここへ部外者を連れてくるときは、麻酔で眠らせて引っ張ってくるのじゃ。それをしなかったということは、よほどシオンを気に入って……」
「プ、プリメーラ様。私は……ただ、神と関わりのある者を丁重に扱ったまでのことです! 他意はありません」
「では、そういうことにしておくかな」
プリメーラは面白そうにそう答えた。
「それでは改めて。私がダークエルフの長、プリメーラである。このような身なりをしているが、エルフの寿命を知っていれば察しはつくであろう?」
「ええ、おおよそ」
きっと僕の今までの人生なんて、赤子以下に思えるほど長い年月を生きてきたのだろう。
「だからといって恐れることはないぞ。我々はしばし友好関係を結ぶ。君に対しても、エルフに対してもね」
「しばしですか」
「そうじゃ。状況は変わるかもしれんからな。さて、シオン。ここに来たのは聞きたいことがあるからなのだろう? もう少しちこう寄れ、そして座るが良いぞ」
僕はプリメーラの目の前まで行き、指示通り床に座った。
「聞きたいことはたくさんあります。この世界のこと、国のこと、エルフのこと。でもまずは、これについて聞かせてください」
僕はそう切り出した。
「何かね、シオン」
きっと厄介な答えが返ってくるのだろうと思うが、聞かずにはいられなかった。
「なぜダークエルフは、エルフを殺すのですか?」




