10 『ダークエルフの住処』
「僕を迎えに来ただって? それはどういう意味だ」
「どういうって、そのままの意味ですが? もしや意思の疎通ができていないのですか? 召喚されたと聞いていますから、使用言語に若干の差があるのでしょうか?」
「いや、言葉は分かるよ。ただ迎えに来た意味が分からない」
するとダークエルフはやれやれといった表情で答えた。
「まず、第一に我々にあなたを襲う意思はありません。そこのエルフに対してもね。神が介入した以上手出しは出来ないのです」
「それを聞いて安心した」
エルフ達も安堵したようだった。
「その上でだ。この地を闇雲に歩くあなた達を案内するため来たわけです」
「闇雲に? 僕達は間違いなくエルフの住処へと向かってたはずだが」
「それでたどり着けたのですか?」
「それは……」
「我々の住処は見えない結界で覆われています。正しい順路で進まなくては永遠にループする結界がね」
「だからずっと同じ景色だったのか」
「そういうことです。さあ、無駄話はこれくらいにして参りましょう。ついてきなさい、石動シオン!」
ダークエルフは背を向けると歩き出した。
僕もそれを追いかける。
「シオン……」
するとエルフは僕の背中をつつく。
「どうした?」
「ダークエルフです、本物です。近くで見るの初めてです」
「怖いのか?」
「分からないです。でもついて行っても良いのか迷うです」
「大丈夫だ。完全に仲間というわけじゃないけど、敵でもないからさ」
「シオンがそういうなら、ついて行くです」
エルフ達はダークエルフを警戒しながらも僕と歩き出した。
時折何も無いはずの場所で直角に曲がったり、Uターンしたりしながら歩くと、急に世界が変わった。
木々が生い茂る林。
エルフ達の住処とは大きく異なる環境だった。
「すごいです~。木材いっぱいです~」
エルフ達も周りをきょろきょろして驚いている。
その林を真っすぐ抜けていくと、ダークエルフの住処があった。
「これは、驚いたな!」
エルフの住処が田舎だとするならば、ここは大都会だった。
基本木造建築なのは変わりない。
しかし大きさも構造もまるで違う。
大きなゲート。
そして高層マンションのような木造のビル。
よく見ると土台や柱に金属が使用されている部分もある。
金属加工の技術も持っているのだろう。
住居、倉庫、見張り台、武器庫。
他にも様々な役割を持つ建物がある。
「ここが我々ダークエルフの住処だ。ようこそ石動シオン」
「案内ありがとう、ダークエルフ」
「クノだ」
「え?」
「クノ……私の名前だ」
「ありがとう、クノ」
「ああ、石動シオン」
どうやらダークエルフには名前という概念があるらしい。
個体数が少ないからだろうか。
「さて、来てもらって早速ですまないが、我々の長がお前を呼んでいる。ついてきてくれ」
「分かった」
「ああ、エルフ達は置いておいてくれ。長の家に入りきらないからな。エルフ達よ、恐れることはない。自由にしていてくれ」
こうして僕はエルフと別れ、クノと共にダークエルフの長が待つ家へと向かった。




