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伝町部と愉快な先輩達  作者: アリカンヌ
くわいと愉快な先輩達
8/10

7話「くわい」



あの後私は笹昌先輩を起こして帰った。


だけど、どうしてもあの冊子に写っていた写真が忘れられなくて、家に帰っても自分の部屋でずっと、冊子を眺めていた。


「笑顔だ…」


皆笑顔で写っている写真に私まで自然と笑顔になる。

しかもこの新聞を読むと深田町に行きたくなるのだ

「私もネギ食べたいぃい」


ぐぅと自然になる腹の音を聞かぬフリするものやはりお腹は空く。


「うーん…この冊子…凄いいい出来だし学校だけで配布するのは勿体ない気がするんだけどなぁ」


内容はその町の歴史と現在、有名な場所や食べ物、そこに住まう人々の事やインタビュー記事など、写真も貼ってあって凄くきちんと出来ている。


更に、町おこしの為に行った事も事細かく記載してあり、結果と写真も載っている


楽しそうな町の人々は今にもありがとうと言いそうな顔をしている。


「伝町部かー!」

大きく伸びて考える。

少し個性的だけど、ちょっと興味はあるかも…


それよりお腹空いたからなにか食べよう。


リビングに降りるが誰もいない。

今日は入学式で昼前に帰ったから誰かいる事なんて有り得ないんだけどね。


「何か食べたいな…うえ、くわい?お母さんくわいなんて買ったんだ」


冷蔵庫を開ければくわいが入っていた。

くわいなんて中々食べないのだが…

今の冷蔵庫にはくわいくらいしかない。


お母さん、今日はきっと買い物して帰ってくるな


「くわい茹でて食べるか。苦手何だよな、くわい」


とは言いつつ茹でて食べるのだから空腹とは素晴らしい。

確かくわいとは冬野菜だったはずだけど、売ってるんだ。


鍋を出して水を沸騰させる、くわいをいれて終わり、しばらく茹でた後に塩でも振って食べれば何とかなるかな。


「あちっ」


指が鍋に当たった、火傷してないかな

カップ麺くらいあればいいのに…


数分してくわいを取り出し、皿に乗せ、塩を振る

ソファに座ってテレビをつけてくわいを黙々と食す私は孤独だった。


「くわいって…他に食べ方無いのかな。」


ふと疑問に思ったことを口に出してみる。

私は塩を振って食べることしかわからないので何だか味に飽きてきた。



「…あれ、でもこのくわい美味しいな。くわい独特のクセとか香りが強くない」


いつも食べてるくわい、中学の時にも給食に出て来たくわいとは味が違って、本当に美味しい


「こんなくわいもあるんだ」

次々と口に運んで行く手が止まらない

あっという間に皿にはくわいが無くなっていて私はハッとする


「私こんなにくわい美味しいと思ったの初めて!」


丁度テレビではパスタの作り方が流れていた。



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