5話「部室と先輩」
先生は少し涙目になっていたが、大丈夫だろう。
必死に泣くのをこらえている
「大丈夫ですか?」
「大丈夫!泣かないし!!」
大丈夫だそうだ。
先生は私を案内して2階まで来た
1年生のクラスは1階、3年は3階、2年が4階になっている
職員室隣の校舎に続く廊下の突き当たりにあって、この校舎にはない。
「2階は部屋が沢山あるんですね…」
2階には部室が沢山あった。
放送室やパソコン室を除けば5つの部屋がある
その中でも目立つ伝町部
漫画同好会と理科研究部の間に挟まれて何とも言えない感じが醸し出されている
「ここが伝町部!2階は文化部の部室の階になってたりするの!」
そういう先生は誇らしげで、私も納得した。
そして、伝町部の扉を開ければそこには…
「あ、あれ…?おっかしいなぁ…」
誰もいなかった
本当はいたのだろう、首を傾げ部室内をちょこちょこ探す先生は可愛い
部室はよく見ればとても整頓されていて綺麗だ
というか使われているのかここは
「ま、とりあえずそこ座っといて」
先生は近くの椅子を指さしたので私は遠慮なくそこに座る
…少し不安なことを考えたが、もし、部員が私1人だとして、凄く寂しくないか…?
心配だ
「あぁ、丸山さん今変な事考えたでしょ!部員一人だったらどうしよーって!大丈夫大丈夫、少なくとも2人は入れるから!」
うーんとっても心配!
親指を立てて大丈夫と言う先生には不安しかないが、1人じゃないというのが確定であれば問題は無い。
「あはは…」
先生も部室をウロウロしていたが部員がいないのを確認できると私の向かい側に座った。
「そういえば、先生は体育の教師って言ってましたけど、運動部とかいいんですか?」
ふと、今日そんな事言ってたなーって思って聞いてみたが、伝町部なんて良くわからない部活の顧問でいいのか
「あー、うん、それねー…いや、私も運動部かなーって思ったんだけどねぇ…何でだろ」
先生も分からないのか苦笑いをするばかりだ。
「私走る事しか出来ないからかな…でも陸上部に居ても邪魔って言われたんだよなぁ」
何とも言えない
それにしても部室は何だか広々としている
他の部室もこんな感じなのかな?
…よく見たら布団が置いてあるし、誰だ、誰かここで寝ているのか。
部室を見渡しているとガチャッとドアの開く音がして、誰かが入ってきた。
私は誰だろうとその人を見ると目が合った
「えっ」
「えっ」
いや、えっじゃないから。
つい私もえっと言われてえっと返したけど。
入ってきたのはどうやら3年生のようだ
少し長い髪の毛にチャラさを匂わせる。
だるい感じが隠しきれていない。個性的だ…
「おー、涼じゃん」
先生は入ってきた男の人を涼と呼んだ。
「うっす。…え、新入生?」
涼先輩は鞄を椅子の横に置いてそのまま椅子に座った。
テーブルに突っ伏して先生に私は新入生か聞くと先生は笑顔でそうだよ!と答える
私は緊張で固まったままだ
3年生という事はこの部の部長なのか…
「よーこそでんちょーぶへ。俺は笹昌涼って言うんだー…よろ〜」
「あ、えと…まだこの部に入るかは決めてないんですけど…丸山菜摘です!よろしくお願いします!」
「ちなみに俺は部長じゃ無いんで…寝ます」
は!?
衝撃発言だったその言葉に目を丸くしていると
笹昌先輩は部室にあった布団にもぞもぞと入り始めた
あ、それ笹昌先輩専用布団だったんだ!!




