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4 『錬金』

「ホルダーケースについている機能『錬金』について説明しようか』


 ルチルは人差し指を立て、にこやかに語る。


「ちょ、ちょっと待ってください。ホルダーケースに備わっている機能ってのは収納だけじゃ無んですか?」

「敬語なんて堅苦しいよ。自然にで良いんだよ」


 疑問をぶつけると、ルチルはいやらしく笑った。まるで幼児に世界の常識を教えるように。


「表向きはそうなっているな。でもそんなわけないだろ、世の中嘘だらけだ。魔族に本当の事がバレたらどうする。成人した人しか知らないんだよ。もっとホルダーケースには機能がある、それこそ『錬金』だけじゃない」

「分かったよじゃあ教えてくれ。まずはその錬金について、それと俺のスキルがなぜそんなに強いのかってのも気になる」

「じゃあホルダーケースを開いてくれ」


 俺は言われた通りにホルダーケースを開く。ルチルも同様にホルダーケースを開いていた。彼女のスキルというのはいったいどういうものなんだろうか。今なら見えるかもしれない。上手く誘導して俺にスキルを使わせる事は出来ないだろうか。


「私のスキルをコピーしようとしても無駄だよ。君に対して使う機会がないからね。仲間になったんだから当然だろう? だから、そんなに眼をギラつかせなくていいんだよ」


 驚きの余り眼を見開いてしまった。この人怖いな。俺の心を読んでやがる。今のが直感によるものかスキルによるのもか分からないが、迂闊に物事を考えられないぞ。でも、一つだけ分かったこともある。彼女は回復系統のスキルを持っていないという事だ。俺にスキルを使う機会がないという事はそういう事だろう。仲間が怪我をしたら回復スキルを使うのは当然だ。今の彼女の口ぶりからしてもそれは当てはまる。


「話を戻そうか。最後のページを開いてくれ」


 最後のページを開くと、ポケットが五つ付いていた。二列で構成されていて、四つのポケットが下の段になっている。その上に一つポケットがある。


「ここにカードをはめて、スキルを錬金するんだ。スキルランクが強いもの同士で錬金するほど強いスキルが生まれる」

「つまりそれって最低でも四枚のスキルカードが必要って事だろ? そスキルカードって人一人が一枚しか持ってないし、集めるの難しくないか?」

「だから君の固有スキルは強いんだよ。戦った相手のスキルカードを奪い取れる。しかも、強い相手と戦えばそれだけ強いスキルを取れるって事になるのさ」


 その説明を聞くと、俺のスキルの強さが倍以上に感じられた。だってそれって他人には難しい事を簡単に出来るって事じゃないか。それにスキルカードだって何枚も手に入れる事が出来る。


「一つ勘違いがあるな。別に錬金に四枚ものスキルカードは必要ない。そして、スキルカードは人から奪い盗るって意外にも獲得する方法はある。でもその場合君は一度に二枚のスキルカードを獲得できる事になるがな」


 少しドキッとしたが、それでも俺のスキルの性能は他人より優位だと思う。安心した。


「それってどういう……」

「殺して奪い盗るのさ。魔族からね」


 そう語る彼女の瞳は酷く冷たくて冷徹だった。これまでにいったいどんな経験をすればそんな眼が生まれるのだろうが。


「そんな残酷な事ばかりじゃないけどね。例えばデビルポイントを使って生成したりするとかかな。そっちの方がメジャーだよ」


 デビルポイント。それって絶対魔族を殺して手に入れてるよな、残酷じゃねえか。


「つまり、どの道を選んでもスキルカードを手に入れるってのは難しいって事。それを君は簡単に手に入れる事ができる。この世界で一つだけのスキルを使って生きていくなんてのは無理だ」


 取り敢えず錬金についての仕組みは分かった。強くなる為には、やはり戦って強いスキルを得るしかないのか。いや待てよ、デビルポイントがあるのか。


「そのデビルポイントってどこで見れるんだ? デビルポイントで生成するスキルカードはどんなものなんだよ」

「デビルポイントはホルダーケースの一ページ目に記載されてるよ、デビルポイントで出るスキルカードはFランクスキルかDランクスキルだよ。そこからDとDでCにしてって強くしていくんだ」

「面倒くさいな」

「面倒くさい。強い魔族を殺してチャチャっとスキルカードをゲットする方が楽で良い」


 より俺のスキルが凄いことが分かった。


「それじゃあ錬金してみるか?」


 その言葉に胸が踊る。凄い楽しみだ。でも、俺の手持ちのスキルカードは二枚。『収納』と『転送』だけだ。収納は絶対に錬金しちゃダメだから、一枚しかない。そんなんじゃ錬金出来ないぞ。


「そう深刻そうな顔をするなよ。私の手持ちのカードをやろうランクAだ。君が貴族野郎からコピーした『転送』もランクA。もしかしたらSランクスキルになるかもな」

「ランクAのスキルカードをくれるのか?」

「もちろんタダでとは言わない。今後、私たちギルドの為に戦ってもらう。そして、スキル関連の協力もな。仲間なんだ。助け合い、頼り合う。それで良いだろ?」


 なるほどそういう事か。ギルドメンバーのスキル強化。その為に、今の俺に恩を売るという事か。そんなの無償でやるのに。まだまだ信用されて無い証だな。


 でも、ランクAのカードは貰っておこう。今仕事に行っても『収納』だけじゃ戦えない。ちゃんとしたスキルカードも手に入れておかないとな。


「当たり前だ、助け合い、頼り合おう」

「それで良い。じゃあ君に錬金のやり方を教えよう。錬金にもデビルポイントが必要だ。今回は私のデビルポイントを使おう。カードを貸してみな、安心してくれ奪ったりはしない」


 俺はルチルに『転送』を渡す。すると彼女は自分のホルダーケースを開いた。そして錬金ページまで巡っていく。


「じゃあやるぞ」


 彼女は自分のスキルと俺の転移を下のポケットに入れる。ホルダーケースの上に、デビルポイントを表すホログラムが出現した。


「こういう仕組みなのか」

「驚いただろう? さあ、これからが楽しみだ。ランクA以上のスキルカードは絶対に出るから安心してくれ」


 俺まで緊張してきた。何せ俺はこれからこのスキルカードをメインで戦わなくてはいけない。基本的に『収納』は隠しておいた方が良いだろうしな。


 ルチルがデビルポイントの支払いを終えると、彼女のホルダーケースが光り出す。スキルカードが光の粒へと変わり、上のポケットへと移動していく。次第にポケットが光に満ちて行き、最後にしっかりとしたカードの形になった。これが――錬金。


「さあ、君のスキルカードが出来たぞ。初めての創造スキルだな」


 彼女はホルダーケースから取り出したそのカードを、俺に手渡す。


「あとついでに、創造スキルってのは作ったり魔族からドロップしたスキルの事を言うんだよ」


 人差し指を立ててルチルは説明する。それについてはなんとなく予想はついていた。怖い部分もあるが、こういう抜けたところも彼女らしくて可愛らしい。身長が小さいってのもあるしな。


「まあ見てみてくれ、君の初の創造スキルを」


 緊張して震える手で、俺はスキルカードを受け取った。


【創造スキル 『未来視』 ランクS

 数分まで先の未来の映像を見る事が出来る】


 そこにはそう書かれていた。これが俺の創造スキル。


「その表情だと中々良いスキルだったんじゃ無いか?」


 彼女の顔も晴れていて、嬉しそうだ。


「ああ、なんか多分戦闘向きのやつだよ」

「良し。なら良かったじゃあ次は第二ステップと行こうか、スキルレベルを上げに行くぞ」

「スキルレベルを上げるってどうやって?」

「そんなの決まってるじゃないか、魔族を殺してレベルを上げるんだよ。いっぱい殺すぞ、それが私たち騎士の仕事でもある」


 彼女はにこやかに、楽しそうに、至極当然のように、そう言ってのけたのだった。

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