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3 『機能』

「君の事が気に入った。私のギルドに入らないか?」


 騎士団長が俺の方へとやって来て、手を差し出した。


「な……」


 驚いた。だが、その時一番驚いていたのはサイケルだろう。彼は力無く座り込んだまま、俺と彼女のやり取りを見ていた。


「ふざけるな!! なんでこいつが騎士ギルドに選ばれてんだよ! 実力的にいったら僕だろうが! それに第一試験で選出するってどういうつもりだ。今のは奇跡だ、もう一度試合をやり直せ!!!」


 サイケルは半狂乱になりながら、絶叫する。おぼつかない足取りで俺たちの方へと近づいて来た。


「黙れ。お前がどれだけ強かろうと私はお前に興味が無い」


 そんなサイケルを騎士団長は片手で制した。その瞳は酷く冷たくて、人一人の心を打ち砕くには充分すぎる。伸ばした手を拒絶され、サイケルは再び地に落ちた。


「それで、君は私のギルドに入団するのか? しないのか?」

「でも、まだ第一試験をやってる途中……」

「そんな事は関係無い。試験なんていくら見ても才能があるか無いかは一目で分かってしまうものさ。それに君は第一試験を突破しただろう」


 彼女は俺に向き直り、手を差し出した。彼女は自分の眼に自信を持っている。きっとスキルが関係しているのだろう。シルフィアを探すために、俺は視線を泳がせた。彼女の意見を聞いておきたい。


「アレン君――――おめでとう!!! 良かったじゃない夢が叶って……私もこうしてられないね。絶対受かるから、アレン君は先に行ってて!!」


 彼女は心底嬉しそうにしてくれていた。彼女に頷いてから、騎士団長の方へと向き直る。


「安心しなよ。彼女は受かるよ。君ほどじゃないが素質がある。かなりね。既に目を付けてる団長もチラホラいるしな」


 俺の心境を汲み取ったのか、団長は教えてくれる。そして、後ろにいる団長達をチラリと見て、悪戯に笑った。きっと団長達には素質を見抜くスキルが備わっているんだ。


「で、君はどうする?」

「入団……します」


 俺がそう呟いた途端――大歓声が起きた。拍手喝采、まるでパーティだ。


「すげえあいつサイケルぶっ倒した上に入団決めちまったよ!」

「少しスカッとしたな」


 そんな声が、チラホラと聞こえてくる。皆んなサイケルに押さえつけられていたのか。


「さあ、行くぞ」

「はい」


 騎士団長に手を引かれ、俺は魔法陣の中から出る。なんだか胸がスッキリしていて、晴れ晴れしている。団長は入団試験を取り仕切る騎士の元まで歩いて行き、俺の入団手続きをしている。


「あの坊主、ルチルのギルドに入ったか俺も狙ってたんだが、ルチルが相手じゃ奪えないな」

「全くだ。三大ギルドに手出しは出来ない」


 んな……。あの団長、そんなに強い奴だったのか。屈強そうな団長達が、ひそひそ声で話している。あんなに強そうな男達がビビるとは、どれほどあの団長は強いんだろうか。そんな人なギルドに入れると思うと、自然と胸が踊る。


「よし。じゃあギルドに戻るぞ。お前の名前をまだ聞いてなかったな。私はルチル。ルチル・ルビーパープルだ。一応これでも騎士団長を勤めてる。よろしくな」


 彼女の緋色の瞳が、美しく光った。笑顔が眩しい。俺は彼女の手を強く握りなおす。


「よろしくお願いします。俺の名前はアレン・グランヒルテです」

「よしじゃあ私のギルドに行こう。色々教えたい事がある。君はもっと強くなるよ。多分英雄に負けず劣らずの、いや、それ以上の逸材になりそうだ」


 ルチルが手を翳すと、俺たちを青い光が包み込む。


「想い人に挨拶しなくて良いのか? しばらく会えないぞ」


 ルチルがシルフィアを指差し、いやらしく笑った。俺の頬が熱くなっていくのを感じる。俺とシルフィアは付き合ってるとかそういう関係じゃないのに、この女は……。


「別に良いですよ。また会えるんで、今度は俺が勝つんです」

「そうか。既に約束は取り付けてあるということだな」


 ルチルは納得した様に二度頷いた。何か勘違いしていそうだが、ここはそういうことにしておこう。


「では、ルチル様。一ヶ月後のランキングでもう一度会いましょう!」


 ランキング――気になるな、ギルドに着いたらルチルに色々と教えて貰おう。俺たちを包み込む青い光の強さが増していき、視界が青一色に染まる。独特な浮遊感に包まれ、視界が晴れた時には別の場所にいた。


 そこは活気溢れる街中だった。石造りの家が建ち並び、竜車が道を闊歩している。半人半獣の兵士が仲間達と酒を飲み、昼間っから祝杯を挙げていた。


「こっちだ」


 ルチルに手を引かれ、俺たちは街中を歩く。街の中心部に続く一本道の先には豪奢な城が建っている。あそこが、俺たちのギルドだろうか。しかし、そんな期待とは裏腹にルチルは人気の無いところへと進んで行く。終いには街の端まで来てしまう。


 目の前は平原で、街の入り口には『ペーティウス城下町』と書かれた大きな看板が建っていた。ここはどうやら街の入り口らしい。そしてルチルの目線の先には赤を基調とした木製の建物が建っていた。騎士ギルドだ。


「何を驚いているんだ。街や人を守るのが騎士の勤めだ。最前線に構えてなくてどうする」


 本部を落とされたらどうするんだと突っ込みたかったが、何か仕掛けがあるのだろう。俺はゆっくりと頷いた。


「仲間を紹介したいところだが、その前に君にはホルダーケースの秘密について説明しておこう」


 前を行くルチルに続いてギルドに入ろうとしたところで、彼女に止められた。秘密? どういう事だ。


 彼女は人差し指を立てて、口を開いた。


「錬金についてだ。知らなかったろう? 君の『固有スキル』はホルダーケースの錬金機能と合わせれば魔神にも匹敵する力を得ることが出来る」


 彼女は瞳を輝かせ、楽しそうに語ったのだった。

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