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桜の木の下でまた会おう  作者: 逢坂すずね
第一章 恋の行方
8/10

友樹と朱莉の決断

2012年6月25日。


【朱莉side】

朱莉(あかり)、私が手伝うことある?」

彩花(あやか)はそう言って私の顔を覗き込む。

「ううん、大丈夫だよ」

私はそう笑顔で返す。少しでも私の不安が悟られないように。

「私のこと頼ってよ。私、朱莉の親友なんだよ?」

「ありがとう。じゃあ、『放課後に非常階段で待ってる』って伝えてもらっていい?」

「わかった。…頑張ってね」

「うん」


【友樹side】

友樹(ともき)君。朱莉からの伝言で『放課後に非常階段で待ってる』って。朱莉を傷つけたらただじゃおかないから」

今から帰ろうとしていた俺に彩花さんはそう言い残すと帰ってしまった。

教室を見回すと朱莉の姿はなかった。

俺はとにかく訳は分からないが非常階段に向かった。

「おい、友樹!」

俺は呼ばれて振り返るとここに戻って来て最初に友達になった(しん)がいた。

「秦、何?」

「隣のクラスの凜花(りんか)がお前のこと呼んでたぞ。多分告白だろうな。お前モテるし。凜花と言えば学年で1番美人だってみんな噂してたぞ。まぁ、お前は朱莉さんのことが好きなんだろうけど、早いうちに凜花に乗り換えりゃいいじゃん。俺、小中凜花と同じだったけど、性格もいいぞ」

「ごめん。今朱莉に呼ばれてるんだ。だからそっちには行けない」

俺ははっきり言った。俺は朱莉から乗り換えるつもりはない。だって、昔からずっと好きなのだから。

「お前、ふざけてんのか」

秦の声のトーンが急に変わった。驚くくらいに。

「俺は凜花のことが好きなんだよ。でも、お前のことが好きだってわかったから諦めたんじゃねーか」

「諦めなければいいじゃねーか。勝手に諦めてんのはそっちだろ。俺のせいにするんじゃねー」

廊下のど真ん中で喧嘩が始まってしまった。

「諦めるしかねーだろ。俺が何したって何も変わらねーんだよ!」

「そんなのやって見なきゃわからねーだろ。俺だって今、朱莉にアプローチしてるだろ。朱莉は彼氏のことが好きだったんだ。それでも俺は諦めてねぇ。それは、朱莉のことがほんとに好きだからなんだよ。好きな人に好きな人がいるからって諦めるお前はほんとにその人のこと好きじゃねぇんだよ。そんなんじゃ諦めた方がいいかもな」

「俺はほんとに凜花のこと好きなんだよ!」

「じゃあなんで諦めんだよ」

「それは…」

秦の言葉詰まった。

俺は秦の後ろを見て驚いた。秦の後ろには凜花さんがいた。

「秦、後ろ…」

俺はそう言った。

俺の言葉を聞いて振り返った秦に凜花さんが抱き着いた。

「凜花!?」

「やっと言ってくれた」

「え?」

「やっと私のこと好きって言ってくれた」

「っ……」

「私、秦のことずっと好きだったの。でも、秦が全然言ってくれないからヤキモチ妬いたの」

秦が凜花さんのことを離した。

俺は心の中で「秦、頑張れ!」と言った。

「ごめん。…俺、凜花のこと好きだ。だから、俺と付き合って下さい!」

「はい!」

凜花さんはそう言って秦の手を握った。

こんなもの見せられちゃうと素直に羨ましい。俺はこんなに頑張っても振り向いてもらえないのに。

「ピュー」

「おめでとう」

近くにいた人がそう2人を祝福している。

「秦、おめでとう」

俺は真の肩に手を当ててそう言った。

「お前も頑張れよ」

「あぁ」

俺はそう言ってその場を立ち去った。


『キー』

非常階段のドアを開けると朱莉がいた。

「来てくれないかと思った」

「ごめん。ちょっと色々あって遅くなった」

「ううん。時間指定なんてしてなかったから気にしないで」

少しの間の沈黙。それが何だか緊張する。でも、嫌ではない。

「あのね、今日は言いたいことがあって…」

「うん。何?」

もう、覚悟はできていた。俺のこの恋が終わりを告げるのだ。

いくら諦めないと言ったって限界はある。やり過ぎるとストーカーになってしまうし、俺はあと1回振られたら諦めると決めているから。…それでもいいと自分で決めたから。

「…友樹のことが好きです」

「え?」

よく聞き取れなかった。「俺のことが好き」って聞こえた気がするけど、そんなこと。

「友樹のことが大好きです!今さらじゃ遅いってわかってるけど、それでも私は友樹のことが好きです」

俺は言葉を失った。夢かと思った。朱莉に振り向いてもらえるなんて。

それにやっと彩花さんの『朱莉を傷つけたらただじゃおかない』の意味が分かった。

俺だってしっかり言わなきゃいけない。朱莉がここまで真剣に俺に向き合ってくれてるんだし、秦だってちゃんと言ったんだ。

「朱莉、俺と付き合って下さい」

やっと1歩前に踏み出せた。

「…いいの?」

俺は黙ってうなずいた。

「はい!」

俺は思わず朱莉を抱きしめた。またしてしまった。

「朱莉、キスしていい?」

今度はちゃんと確認。

「聞かなくていいよ」

俺たちはキスをした。前よりも長いキス。

「朱莉、大好きだよ」

「ふふっ。私も」

やっと振り向いてくれたな、朱莉。

これからは俺が朱莉のことを笑顔にするよ。

これで『第一章 恋の行方』は終わりです。

次回からは『第二章 大好きな君へ』となります。第二章はイチャラブが多くなると思います。

これからもよろしくお願いします。

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