転校生は幼馴染!?
2012年5月10日。
【朱莉side】
優太が死んでから約1週間が経った。
まだ、優太が死んだことが信じらんない。
「あかりん?大丈夫?上の空だよ!」
私が自分の席から窓の外を見てると、私の親友の彩花がそう言ってきた。彩花は優太と同じで優しい子。優太がいなくなった日から私が上の空だからいつも心配してくれる。
「大丈夫だと思う。…ねぇ、なんか面白い話して」
「面白いかは知らないけど、今日うちのクラスに転校生が来るんだって」
「転校生!?」
この辺はド田舎だから出てく人はいるけど来る人なんて全くいない。現に私は転校生というものに会ったことがない。
「男子らしいよ。イケメンかはわかんないけどね」
「男子かぁ。どっから来たの?」
「トーキョー」
そう言えば私の幼馴染が小学校の時、東京に引っ越したな。その時は仲が良かったけど、今は連絡すら取ってない。分からないし。
「あっ恵美ちゃんが来た」
彩花はそう言うと自分の席に戻ってった。
「はい。今日はみんなにお知らせがあります。この、1年2組に転校生が来ました」
みんなから恵美ちゃんと呼ばれている私たちの担任の先生がそう言った。
「えぇ~!転校生だってっ!」
「すごくない、こんなド田舎に」
「どんな子かな?」
みんなすごい騒いでる。初めてかも。クラスのみんながこんなに騒ぐの。
「ほら、入って来て」
恵美ちゃんがそう言うとドアから1人の男子が入ってきた。
恵美ちゃんは黒板にささっと名前を書くと「自己紹介をして」とその男子に言った。
「友樹です。これからよろしくお願いします」
「イケメンじゃない?」
「かっこいい~」
間違いない。大きくなっているから少しわかりにくいけど、友樹君だ。私の幼馴染の友樹君だ。
「友樹の席は朱莉の隣ね。朱莉、手あげて」
「…あっはい!」
ぼーっとしてた私は反応がちょっと遅くなった。
友樹君が私の所に寄って来た。友樹君はにかっと笑うと私の隣の席に座った。
「はーい。じゃあ、HR始めます」
私は混乱し過ぎて何も言えなかった。
「あかりん!ちょっ大丈夫?ちょっと〜」
「大丈夫だから」
彩花があまりにも大声で言うもんだから私はちょっと呆れた。
「それにしても転校生君イケメンだね」
彩花とは中学からの付き合いだから友樹君のことは知らない。言った方がいいのかな?言った方がいいよね。親友なんだし。
「あのね、私友樹君のこと、もともと知ってるの」
「えっ!転校生君ってモデルでもやってんの!?」
「ううん。幼馴染なの。小学生の頃、友樹君が引っ越しちゃってからは連絡もとってなかったけど…」
「へぇ〜。これってさ、運命じゃない?運命の恋!」
彩花は少女漫画の見過ぎだと思う。友樹君はただ単に戻って来ただけだろうに。
「それはない。それに、優太が死んでからまだ1週間しか経ってないんだよ?次の恋に進むことなんて私にはできないよ。私、優太のこと、忘れらんないし、忘れたくないもん」
本音だった。まだ優太が死んだことすら受け入れられない私が次の恋に進めっこない。
「あかりん、そろそろさ前向きになったら?私はあかりんに優太君のことを忘れろなんて言わないよ。あかりんは優太君と出会った時点で、もう忘れられるわけがないんだよ。ましてや彼氏だよ?逆に忘れる方がすごいと思うな。だから、前に進んだら?次の恋をしろってわけでもなくて、ただ、優太君の死を認めて、前向きになったら?」
彩花の言う通りだ。
私は優太の死を認めてないし、下を向いてばっかだ。でも、優太が本当に好きだった。本当に大好きだった。だから、優太の死なんて認められないよ。自分ではわかってる。でも、優太が死んだってわかってるのに、絶対どこかで生きてるって思ってる自分がいる。
「朱莉、どうかした?」
友樹君が私に話しかけてきた。
「あかりん、私トイレに行って来るね」
「ちょっ彩花!?」
彩花はそう言うと教室から出て行ってしまった。
今友樹君と二人なんて嫌なんだけど…。
「朱莉、大丈夫?」
「あっうん。それより、友樹君だよね。久しぶり」
「ホント久しぶりだよね」
「どうしたの?東京に引っ越したんじゃないの?またお父さんの転勤?」
私はそれが一番気になってた。東京に行ったならずっとそこにいそうだし。だって私だったらこんなド田舎なんて二度と戻って来たくないもん。まぁ、友達がいるから悩むけど…
「俺、朱莉のことが忘れなれなくてこっちに1人で戻って来たんだ」
「え?」
「俺、あのころからずっと朱莉のことが好きなんだ」