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現実的なハーレムの作り方  作者: 中高下零郎
コミュ障少女の落とし方
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オタクな話の合わせ方

「……って感じで面白かったよ。そういえば動画を見ている時、メアリーが出てきた時に『死亡確定』ってコメントがやたらあったんだけどあれは何だったのかな」

「ああそれですかそれは中の人ネタですねメアリーを演じている声優さんは結構な売れっ子なのですが演じているキャラがかなり死んでいるのでこの声優さんを使うイコール死ぬキャラみたいな風潮が出来上がってしまっているんですかなりと言っても実際にはほとんど死んでいるわけじゃあないんですけどまあ人気声優ですし人気作品で人気ヒロインの声をあてることが多いので印象的な死に方とかをして視聴者にそう思われやすいだけなんですけどまあメアリーは死ぬんですけどね」

「あ、死ぬんだ」

「あすみませんついついネタバレをしてしまいましたネタバレといえばあの動画でアニメを見る時は一周目はコメントを消した方がいいかもしれませんねどこにでも悪い人間というのは湧くもので開幕からネタバレコメントをするような酷い人もいますしまずはコメントなんて消してアニメを純粋に楽しんでその話の知識を得た上で二周目はコメントを見ながら楽しむというのがセオリーだと私は思ってます」

「なるほどね、面白いアニメは何度見ても面白いもんね……それにコメントという要素がつくことで楽しみ方の幅が増えるってことか」

「わかっているじゃないですか蛟さん素質ありますよってすみません偉そうな事を言って実際のところ私もまだまだなんですよ」

「いやいや、水草さんは十分に玄人だって」


 クラスメイトの悪評など気にするものかと、この日も朝から水草さんとオタクな会話に興じる。俺自身ギャルゲーやっていたりとオタク寄りだろうなとは思っていたからか、割とすんなりとライトノベルだとかアニメだとかそういうジャンルを受け入れることができていた。


「……」

「……」


 クラスメイトが俺達をウザったそうに見ているのがわかる。そりゃそうだ、興味のない人間からすればこんな会話聞くのも嫌だろうに、水草さんは声が大きいのだ。満員電車の中で身動きがとれないまま、近くにいる不細工なカップルののろけ話を聞かされ続ける……そのくらいの不快感を朝から味わう羽目になるクラスメイトには心底同情するが、俺のハーレム作りのための礎になって欲しい。


「うん、順調だと思うよ。着実に彼女は君に靡いている」

「いやあ、最初はどうなることかと思ったけど、なんとか彼女の話についていけている自分が怖いよ」

「にわかだと思われることは仕方ないさ、実際にわかなんだから。大切なのは、熱意だと思うんだよね。今はまだにわかだけどこれから本格的にのめりこんでいきたいという想いを見せれば、向うもそれに応じてくれるはずだよ。本当のファンというものはにわかを育て上げるのも仕事だからね、最近は排他的な方向に向かっているようだけど」


 そしてお昼休憩にはいつものように空き教室でロコとお弁当を広げながらホウレンソウ。彼氏が他の女と仲良くしているのを見て満足気なロコにどことなくもやもやを感じてしまう。ハーレムを作りたいと言ったのは俺なのに、皆が納得するのが理想だと言っているのに、愛から来る嫉妬もして欲しいななんてわがままにも程がある、でも男ってそういう生き物だよなあなんて恋愛の玄人っぽいことを言ってロコにゲラゲラと笑われた後、教室に戻る。

 昼休憩の時間にも会話をするつもりだったのだが、珍しく彼女は自分の机に座っていなかった。トイレにでも行っているのだろうかと思っていたが、近くの席でカードゲームをやっているケースケとロゼッタが少し深刻そうな顔で手招きをしている。


「どったの?」

「……水草さんがクラスの女子に連れていかれた。まあ、いい内容じゃあないだろうな」

「まだ暴力とか振るわれる段階じゃないだろうけどネー、まだ。ちゃんとフォローしてあげてヨ?」

「……オーケーオーケー、サンキューな」


 この前俺に間接的に忠告してきたのだから、そのうち本人にも忠告が入るだろうとは俺だって考えていたが、思っていたよりもその時は早かったようだ。ロコの方を見やるとやれやれといった表情。そのうち教室に水草さんを連行していったと思われる女子が戻ってくる。

 面々を見ると、風紀にうるさい真面目な子だったり、性格がいいで通っている子だったり、とてもじゃないけどいじめをするような人間ではない。そう、彼女達は悪意から水草さんを責めているわけではないのだ。

 いじめ問題が全部悪意によって成り立っているならば、とても簡単に問題は解決するのになぁとため息をついていると、少し遅れて水草さんが半べそをかいた状態で教室に入ってきて、俺の隣の席にちょこんと座りそのまま机に顔を突っ伏す。

 休憩時間も残り短いし、今はまだ慰める時ではないだろうと判断してその日は結局彼女に話しかけることなく一日を終える。学校が終わると、すぐにカバンを手にぼーっとしながら教室を出ていく水草さんが印象的だった。



「悪いけど私はいじめられる方にも問題があると思ってるし、どう考えたって水草さんに問題があると思っているよ。そもそも現状いじめですらないけれど」

「わかってるよ。俺はお前のそういう冷めたところも気に入っているつもりだ」

「照れるね。まあだからと言って一緒になって水草さんを責めて壊した後に回収しようなんて言うほど私はゲスではないよ、そんなことをしなくても今回は大丈夫だと思っているしね。とにかく明日あたり、フォローを入れるべきだね」


 放課後はロコと一緒に帰りながら明日の予定を立てる。翌日、教室に入ると水草さんが朝から机に突っ伏していた。フォローを入れるといってもどうするべきか、一時的に彼女を慰めて立ち直らせて、今までのようにぺちゃくちゃとお喋りをしたとしていたちごっこだ。俺としてもクラスメイトと好きで対立がしたいわけではない、何らかの解決策は考える必要があるだろう。考えた末、俺は昼休憩になると水草さんを空き教室の方まで連れ出す。


「……どどどどうしたんですかこんなところに呼び出してそうですか蛟さんも何か言われたんですねごめんなさい私のせいで」

「何があったのさ、あの女子共に何か言われたの?」


 俺の質問に水草さんは昨日あった出来事を、少し意識しているのかいつもよりもゆっくりと喋りはじめる。内容は俺も予想ができていたように、うるさいだとか、聞いててイライラするだとか、蛟君は彼女がいるんだよ? とか、そんな感じのお節介な内容であった。


「……酷い」

「いえ全然酷くないです、悪いのは私ですし、高校一年の時も、中学の時も似たようなことがありましたし、私もこの癖直そう直そうとは思っているんですけど全然できなくてだから一人でいることが多かったんですけど、蛟さんが話しかけてくれて嬉しくてそれで……」

「気にすることないと思うよ、俺は水草さんの声キレイだと思ってるし、楽しそうに喋ってていいなって思うし。そうだ、この空き教室使おうよ。ここなら大声で喋ったって誰にも文句は言われないよ。お弁当でも食べながらさ」

「……! 確かにここなら迷惑かけませんねわかりましたお弁当取ってきます!」


 普通の女の子だったらここで、俺に彼女がいるという情報を考慮するのかもしれないけれど、今の水草さんは結構精神的に滅入っているのでそれよりも自分の楽しみを優先しているのだろう。嬉々としながら彼女はお弁当を持って空き教室に戻ってきて、そこでオタク談義に興じるのだった。




「……という感じだね」

「ばっちりじゃないか」

「我ながらびっくりするくらいうまくいってるよ。それじゃあまた明日な」


 そして放課後、いつものようにロコと一緒に家の前まで帰って別れようとしたのだが、ロコが珍しくムスっとしながら俺の服を掴む。


「……お望み通り嫉妬してあげるよ。あの空き教室は私と君の聖域だったのに。お弁当を一人で食べるのはなかなか寂しいものだね、そんなわけで今日はその穴埋めをするために君の家に遅くまで残っておばさんに『あらロコちゃん、ついでだし夕飯でも食べていく?』って言われるまで居座ってやる」

「あはは……」


 あちらを立てればこちらが立たず、嫉妬されない範囲内で複数の女の子を愛するのは実に難しい事で。





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